Architecture

2世帯住宅に事務所を併設緑豊かな中庭を通して
家族の気配を感じる

光を集め風が抜ける中庭

建築家の関本竜太さんの自邸は1階にご自身の建築設計事務所『リオタデザイン』があり、2階がご自宅、そして3階にお母様が住む、2世帯住宅+事務所になっている。それぞれの階で玄関を別にしてプライバシーを尊重しながら、中庭を通してお互いの気配が感じられるように設計した。

どの階からも見て楽しめる緑豊かな中庭は、家族や事務所スタッフのコミュニケーションの場になっている。

「築11年が過ぎ、建物や家具に落ち着きと味わいが出てきた今の雰囲気がとても気に入っています。中庭に植えた樹々も大きく育ちました」
ヤマザクラ、サルスベリ、トネリコ、ミツバツツジが庭の四季を彩る。木柵にはアケビが蔓を伸ばす。


フィンランドへ留学した経験を持つ関本さんのお宅。北欧の暮らしの気持ちよさが伝わってくる。
フィンランドへ留学した経験を持つ関本さんのお宅。北欧の暮らしの気持ちよさが伝わってくる。
2階の関本さんの世帯の玄関。墨入りモルタルの床がシックでカッコいい。
2階の関本さんの世帯の玄関。墨入りモルタルの床がシックでカッコいい。
RCの天井に木目が。コンクリートを流し込む型枠を杉板で作ることで木目が現れる。植物との相性も抜群だ。
RCの天井に木目が。コンクリートを流し込む型枠を杉板で作ることで木目が現れる。植物との相性も抜群だ。


好きな場所に動かすことができる、座面が畳の収納家具。「たくさんの方にこの家にかかわっていただきたくて、静岡の家具デザイナーの野木村敦史さんに製作を依頼しました」
好きな場所に動かすことができる、座面が畳の収納家具。「たくさんの方にこの家にかかわっていただきたくて、静岡の家具デザイナーの野木村敦史さんに製作を依頼しました」
小口の美しい縞模様が特徴のフィンランドバーチ合板を使ったキッチン。
小口の美しい縞模様が特徴のフィンランドバーチ合板を使ったキッチン。
イスはヴィンテージのアルヴァ・アアルトのChair65。テーブルはフリッツ・ハンセン。
イスはヴィンテージのアルヴァ・アアルトのChair65。テーブルはフリッツ・ハンセン。


植物の魅力に夢中

「実はこのところ急に植物の魅力に目覚めまして、グリーンがどんどん増えています。このモンステラは買ってきた時はほんの小さな苗だったのですが、すごい勢いで成長するので、鉢を大きなものに2回替えました。手間をかければそれに応えてくれるのがとても楽しいです」
ハートの形の大きな葉が特徴のフィカス・ウンベラータや、ツピタンサスなど、さながら植物園の様相だ。

関本さんは1年半フィンランドで暮らした経験があるのだそう。長い冬を室内の植物とともに楽しむ北欧の暮らしのように、関本さん宅にも緑がよく似合う。


2階のダイニングテーブルから中庭を見下ろせば、美しいグリーンを楽しめる。
2階のダイニングテーブルから中庭を見下ろせば、美しいグリーンを楽しめる。
1階が事務所、2階がご自宅、3階がお母様のお住まい。ガレージの奥が中庭になっている。
1階が事務所、2階がご自宅、3階がお母様のお住まい。ガレージの奥が中庭になっている。
建物の長辺方向はRC造で、短辺方向は木下地としている。中庭を囲む壁は、北欧の住宅によく見られる伝統的な張り方を採用。壁材のレッドシダーは入居後8年経ってから現在の色に塗装した。
建物の長辺方向はRC造で、短辺方向は木下地としている。中庭を囲む壁は、北欧の住宅によく見られる伝統的な張り方を採用。壁材のレッドシダーは入居後8年経ってから現在の色に塗装した。


自邸から学んだ経験を施主に伝える

この家は関本さんが独立し自分の事務所を構えてから5年ほど経った時に建てたのだそう。

「木造住宅が好きなので自宅も木造を考えていたのですが、間口を広くとってガレージを作りたかったため、RC壁式構造にしました」

壁や天井を焼杉型枠によるコンクリートの壁にし、ファサードは大きなガラスを採用した。

「自分がやってきたことの集大成だという意気込みで、やりたいことを数多く反映させた家を建てました。今考えると、僕自身がある意味実験的な住宅に住むことで、たとえば長く住んでも飽きない部分だったり、不具合だったりを、実感を込めてクライアントさんに伝えることができるので自邸を建てて良かったと思っています」


1階が関本さんの建築設計事務所『リオタデザイン』になっている。模型に映る中庭の樹々の木漏れ日が美しい。
1階が関本さんの建築設計事務所『リオタデザイン』になっている。模型に映る中庭の樹々の木漏れ日が美しい。
シナ合板を使った造作家具が機能的な事務所内の打ち合わせスペース。
シナ合板を使った造作家具が機能的な事務所内の打ち合わせスペース。
事務所のペンダントライトは、ユハ・レイヴィスカ。
事務所のペンダントライトは、ユハ・レイヴィスカ。
使用済の焼杉型枠を無塗装で事務所に使用した。
使用済の焼杉型枠を無塗装で事務所に使用した。


中庭を眺めながらイペ材のデッキを歩いて玄関へ。
中庭を眺めながらイペ材のデッキを歩いて玄関へ。
手前が事務所。奥の塗装を施したエキスパンドメタルの階段がそれぞれのフロアをつなぐ。
手前が事務所。奥の塗装を施したエキスパンドメタルの階段がそれぞれのフロアをつなぐ。


OPENFLAT
関本竜太(リオタデザイン)
所在地 埼玉県志木市
構造 RC造
規模 3階
延床面積 222.7m2