Outdoor

100年経っても色あせない家西海岸の空気感を
感じながら暮らす

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ライフスタイルと両立する家

「100年経っても色あせない家をつくりたいと最初にお伝えしました」。こう話すのはKさん。「シンプルで普遍的なものであり、かつ、家具なども含めた自分たちのライフスタイルと両立する家にしたい」。そんなことも最初の打ち合わせ時に建築家に話をしたという。

奥さんが「それと“ガレージがほしい”“家族の気配が感じられるつくりにしたい”あと“開放的な間取りにして、できたら風の流れも意識してつくってほしい”というのもはじめにお話しをしました」と補足する。


1階のリビング。テラスの右手にダイニング・キッチンがある。西海岸の空気感も感じられる室内の素材は素朴で素材感の感じられるものが選ばれ、また、さまざまな素材を使いながらも全体としての調和が図られた。
1階のリビング。テラスの右手にダイニング・キッチンがある。西海岸の空気感も感じられる室内の素材は素朴で素材感の感じられるものが選ばれ、また、さまざまな素材を使いながらも全体としての調和が図られた。


設計者にとって施主のライフスタイルを考慮するのは家づくりにおいて必須だが、Kさんは自身、経営する会社でファッションを軸に食や住も含めたライススタイルの提案を行っていて人一倍ライススタイルへの思いは強い。そこで建築家の井上さんはこのKさんの「生活の中に入っていって」設計のための事前調査を行ったという。

「井上さんは、僕がどんな本を読んでどんな曲を聴き、またどんな絵を飾っていてどんな食器で食事をしているのかをすべて調べた上で、それを彼の中で進化させたものを提案してくれて」


1階リビング。左手にテラス、奥には階段室がある。ベイマツの梁とスチール梁との組み合わせ・対比がデザイン的にとてもうまくきいている。
1階リビング。左手にテラス、奥には階段室がある。ベイマツの梁とスチール梁との組み合わせ・対比がデザイン的にとてもうまくきいている。
リビングの壁に設置された棚にはKさんがアメリカを中心に世界各地を旅して集めた種々さまざまな小物が置かれている。
リビングの壁に設置された棚にはKさんがアメリカを中心に世界各地を旅して集めた種々さまざまな小物が置かれている。


テラスに開かれたL形プラン

「家もものづくりなので設計者と施主がセッションしていかないとダメだと思う」とも話すKさん。夫妻との“セッション”を重ね、徐々に現在のL字形の平面の周りに4枚のコンクリート壁を置く案が出来上がっていった。テラスに面した部分だけは全面開放に近いつくりとし壁は設けていない。コンクリート以外の部分で木造を多用し、木の梁にさらに鉄骨の梁を組み合わせた特徴的ともいえるつくりも、K夫妻とのセッションを経て井上さんが導き出したものだ。

「西海岸のカジュアルなファッションを扱うところから仕事をスタートされていて、Kさんがそういう世界観がお好きだというのはわかっていました。ただその一方で以前うちの事務所でつくったコンクリート住宅のテイストもお好きということで、それにライススタイルも考えあわせたうえで提案をしました。Kさんから見せていただいた写真の中には西海岸の住宅のものも当然ありましたね」


奥にこの部屋のために製作されたオリジナルスピーカーの置かれたリビング。天井をやや低めに抑え落ち着いた色合いのこのスペースはしっとりとした大人の空間。
奥にこの部屋のために製作されたオリジナルスピーカーの置かれたリビング。天井をやや低めに抑え落ち着いた色合いのこのスペースはしっとりとした大人の空間。


居心地の良い距離感

「部屋の間の仕切りがなくて行き来がスムーズ」(奥さん)というのはオープンなスタイルが好まれる西海岸らしい部分かもしれない。リビングとダイニング・キッチンのある1階ではテレビボードの壁以外にはスペースを仕切る要素がない。この壁はダイニングとリビングをゆるく仕切っていて「なんとなくいることはわかるみたいな感じの居心地の良い距離感」(奥さん)をつくり出している。

コンクリートでつくられた1階のテラスがまた「行き来がスムーズ」という感覚をつくり出すのに大きく寄与している。リビングとテラス、またダイニングとテラスの間で気軽に出入りすることができ、テラスを経由してのリビングとダイニングとの行き来もとてもスムーズなのだ。「とってもいいですね、あそこは」と奥さんが話すこのテラスは、もちろん、配置、スケール感、緑との関係などがしっかりとつくりこまれていて家族5人がのんびりとくつろげるスペースとなっている。


ダイニング・キッチンから緑の美しいテラスを見る。緑はSOLSOのプランニングをもとに実際に畑で実物を見て選んだものが植えられている。
ダイニング・キッチンから緑の美しいテラスを見る。緑はSOLSOのプランニングをもとに実際に畑で実物を見て選んだものが植えられている。
ダイニングからリビングを見る。中からも行き来できるが、テラスを通っても気軽に移動できる。
ダイニングからリビングを見る。中からも行き来できるが、テラスを通っても気軽に移動できる。
井上さん(左)とK夫妻。緑に囲まれたテラスでの集まりは自然と話が弾む。
井上さん(左)とK夫妻。緑に囲まれたテラスでの集まりは自然と話が弾む。


リビングからテラスを見る。ダイニング・キッチン部分の梁がそのまま外へと突き出して庇の下まで続く。手前はイームズのラウンジチェアとオットマン。Kさんはここで音楽を聴くことも多いという。
リビングからテラスを見る。ダイニング・キッチン部分の梁がそのまま外へと突き出して庇の下まで続く。手前はイームズのラウンジチェアとオットマン。Kさんはここで音楽を聴くことも多いという。
左の収納には冷蔵庫が入っていて、テラスにいても気軽にビールを取り出せて便利という。
左の収納には冷蔵庫が入っていて、テラスにいても気軽にビールを取り出せて便利という。
ベンチ回りは数人で話をするのに小さくもなく大きくもなくちょうどいいスケール感。
ベンチ回りは数人で話をするのに小さくも大きくもなくちょうどいいスケール感。
リビングの上は主寝室とウォークインクローゼット。右に置かれているのがアカプルコチェア。
リビングの上は主寝室とウォークインクローゼット。右に置かれているのがアカプルコチェア。


ダイニングからテラスを見る。
ダイニングからテラスを見る。
リビングからテラスを見る。テラスのベンチの後ろには道路に下りる階段が設けられている。
リビングからテラスを見る。テラスのベンチの後ろには道路に下りる階段が設けられている。


帰宅後のクールダウンに

この家に住み始めてから1年ほど。Kさんが「あそこが僕の指定席です」と指差したのはテラスに置かれたアカプルコチェア。「いつも夜の11~12時くらいに帰ってきてあのチェアに座って30分くらい音楽を聴きながらクールダウンするんですが、そのひと時がとてもいいですね」

奥さんも「気に入ってるのはやはりテラスですね。夜は夜で、リビングのソファのところからテラスの緑を見ているとほっとする」と話す。また「緑も心地いいですけれど、光の変化というものもあって都心のわりには四季を感じ取ることができて気に入っています」とも。 


ダイニングからキッチンとテラスを見る。キッチンとテラスの間では食べ物、飲みのものやり取りが容易に行える。
ダイニングからキッチンとテラスを見る。キッチンとテラスの間では食べ物、飲み物のやり取りが容易に行える。
コンクリートの壁は出目地になっていて、光の当たり具合でさまざまに表情を変える。「壁そのものがアートになっているって素晴らしい」とKさん。
コンクリートの壁は出目地になっていて、光の当たり具合でさまざまに表情を変える。「壁そのものがアートになっているって素晴らしい」とKさん。
1階の階段近くの壁にかけられているのはイームズがデザインした「レッグ・スプリント」。裏に照明が仕込まれている。
1階の階段近くの壁にかけられているのはイームズがデザインした「レッグ・スプリント」。裏に照明が仕込まれている。
階段途中からイームズのアームシェルチェアを見下ろす。開口を通して見える緑もSOLSOのプラニングによるもの。
階段途中からイームズのアームシェルチェアを見下ろす。開口を通して見える緑もSOLSOのプランニングによるもの。


トイレもミニギャラリーとの思いで置くものすべてに気を配っている。
トイレもミニギャラリーとの思いで置くものすべてに気を配っている。
2階の階段上はトップライトになっていて1階に下る階段を明るく照らす。
2階の階段上はトップライトになっていて1階に下る階段を明るく照らす。


2階。左手奥に主寝室。右に子ども部屋が3つ並ぶ。
2階。左手奥に主寝室。右に子ども部屋が3つ並ぶ。


このうちは最高だよね

Kさんも「このテラスは都心にいながら鳥のさえずりも聴こえるし、太陽も空も見えるし、スノーインサマーの花が咲いたりと、そういった日々の変化も含めていいですよね」と話す。
 
「3日にいっぺんは“このうちは最高だよね”って言っている」というKさん。建築好きの友人がたずねてきたときに「あーっ、アメリカの解釈ってこういうものもあったんだね」と言われたそうだ。アメリカのデザインやライフスタイルをそのまま移入するのではなく、井上さんとのセッションを経て、さらに家具や小物、さらに照明などで自らの世界観も表現してここにしかないオリジナルな空気感を創り出したKさんにとって、思わず膝を打った言葉だったのではないだろうか。


地下1階の玄関側から奥のギャラリーを見る。
地下1階の玄関側から奥のギャラリーを見る。
正面が玄関、左手にガレージがある。階段の厚みは「もう少しシャープにしたい」というKさんの希望で少し薄くした。
正面が玄関、左にガレージがある。階段の厚みは「もう少しシャープにしたい」というKさんの希望で少し薄くした。


夜にはネオン管を使ったアート作品で「すごく色気のある空間になる」という地下1階奥のギャラリースペース。「ここでお茶を飲みながら話をしてから1階に上がってまた違う空間を楽しんでもらう」というストーリーも考えられたという。
夜にはネオン管を使ったアート作品で「すごく色気のある空間になる」という地下1階奥のギャラリースペース。「ここでお茶を飲みながら話をしてから1階に上がってまた違う空間を楽しんでもらう」というストーリーも考えられたという。
玄関入ってすぐのギャラリースペース。
玄関入ってすぐのギャラリースペース。
ギャラリースペースの外部には大きなサボテンが置かれていて意外性の演出も。
ギャラリースペースの外部には大きなサボテンが置かれていて意外性の演出も。


Kさんが「アメリカの普通の家のガレージみたいにモノをいっぱい突っ込んでおもちゃ箱にしてある」という地下2階のガレージ。
Kさんが「アメリカの普通の家のガレージみたいにモノをいっぱい突っ込んでおもちゃ箱にしてある」という地下1階のガレージ。
地下2階の書斎。ゲストルームとしても使用できる。
地下2階の書斎。ゲストルームとしても使用できる。
道路から見た外観。コンクリート、石、木の素材感の対比が生きている。右に白い花が咲いているのが見えるのがスノーインサマーの木。右の木の部分が地下1階のガレージ。
道路から見た外観。コンクリート、石、木の素材感の対比が生きている。右に白い花が咲いているのが見えるのがスノーインサマーの木。右の木の部分が地下1階のガレージ。
テラスで話し込むKさん(右)と井上さん。
テラスで話し込むKさん(右)と井上さん。


K邸
設計 井上洋介建築研究所
所在地 東京都世田谷区
構造 RC造+S造+木造
規模 地上2階地下2階
延床面積 297.92m2