Architecture
子育てと事業を両立させる住まいとワークスペースが共存
“五感で愉しめる空間”
この家を建てるときの大きなポイントのひとつは、奥さんが子育てをしながら事業を行えるということだったという。
「いまワークライフバランスが話題になっていますが、その中で、子供が幼い時にその近くで働けるということと、働いている姿を子供たちに見せてあげるということは、すごく大事だと僕たちは思っていて」と砂子さん。「妻も私も自営業の子供でそういう両親を見ていたので、同じような姿を子供たちに見せたいなと」
住まいとワークスペースの共存
事業としては、奥さんが選定したアーティストの企画展をギャラリースペースで開くほか、セミナーなどのイベントも行うという。砂子夫妻はそうした“事業を行う家”として、この家を“Casaさかのうえ”と名付けた。
家で事業を行う場合、住まいと事業スペースをはっきりと分けて、たとえば1階を事業スペース、2階を住まいの空間とするのが一般的だが、夫妻がこだわったのは、この2つを混在するようなつくりにすることだった。
30~40人が集まれる家
設計にあたっては、これに加えて、イベントを開催することから、30~40人が集まれる家にしてほしいと依頼した。そして、このリクエストに応えて建築家から出されたアイデアは、夫妻が想定していたものとは大きく異なるものだったという。
「会議室みたいな大きめの空間をイメージしていたら、いくつかの空間に分かれていながら全部つながっているというもので、それはもう驚きましたね」と砂子さん。「中庭にたとえば5人で、下のベンチに5人、この2階のスペースに10人と下のキッチンに10人。ダイニングのところも8人くらいいけますね」
それは家のそこここに設けられている段差で、境界であるとともに家具の役割をも担う。ふと腰かけた段差が椅子となるのだ。逆に言うと、ベンチのようにふと座ってしまう場所が家中にあるようなもので、これが砂子邸に、面積に比して椅子などの家具が少ないことに繋がっている。
五感で愉しめる空間
こうした空間的な特徴に加えて、“Casaさかのうえ”は、さらに“五感で愉しむことができる”という大きな特徴をもっている。このコンセプトを考えたのは奥さんで、五感というのは、アーティストの作品を鑑賞し、上質の音楽を聴きながらカフェの味と香りを楽しみ、本物に触れることができるということに由来する。
「最後の“触れる”には2つの意味があり、ひとつは作品に触れる。さらに、セミナーを通して本物に触れるということですね。講師の方はいろんな業界のトップランナーの人が来てくださるので、本物に触れて最新で最善の方法論を学ぶことができます」と奥さん。
ギャラリーでは、中村眞弥子さんの絵画展が10月に開催予定で、セミナーのほうは、第1回目の「マネーセミナー」が5月中旬に砂子さんを講師として開かれた。
住まいのスペースまで事業用にオープンにして、さらに“五感を愉しめる”という斬新なコンセプトを謳った砂子邸。これまでの家という概念をはみ出る試みの、今後が楽しみである。
設計 acaa建築研究所
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 159.39m2