DIY
築45年の木造家屋を再生当たり前を変えてみる
独創性に満ちたアイデア空間
祖父母の家をリノベーション
情緒あふれる川越の街。祖父母が暮らした築45年の1軒家をほぼDIYでリノベーションして、安田太陽さんと妻・詩織さんは暮らしている。
「もともと手を動かすのが好きで、立体物を作るのが大好きでした。家のリノベーションはこれが初めてでしたけど(笑)」。
プロダクトデザインの部署から始まり、現在はイベントや空間のデザインを行う部署で会社員として働きつつ、休日には廃材や自然素材を使ったアクセサリーを制作するミツメとしても活動。そんな安田さんが、気になって集めてきた古道具を活かして創りあげたのは、驚きや発見がたくさんある独創的な空間だ。
DIYで温もりのある家に
「ここは祖父母の家だったので、子供の頃よく遊びに来た記憶があるし、母にとっては育った家なので思い入れがあるんです。まさか自分が住むとは思いもしなかったけれど、リノベーションして活かすことができたのは良かったと思っています」。
耐震補強や外壁塗装、ガス、電気、水道などは業者に任せたものの、それ以外は知人・友人に手伝ってもらいほとんどDIYで完成した。
「天井を壊して現れた梁に塗装したり、床も自分で張り替えたり、大変でしたけど暮らしながら少しずつ進めていきました」。
キッチンは、ダイニングと分けていた壁を自力で取り壊してひと続きの空間に。
「この家は日当りが悪く、暗いんです。その為、白を基本とし、広い開放的なキッチンを作ってやろうと」。
木脚と白いタイルのキッチン台も自作。シンプルなものを求めて探しに探したリンナイのビルトインコンロとIKEAのシンクを取り付けてタイルを貼った。
「工業系の道具やパーツが好きなのですが、あまり取り入れると冷たくなってしまいます。木を入れると温かさが出せるので、温度感をうまく組み合わせました」。
素材の使い方を考える
漆喰で塗り上げた白い空間は、オリジナルのアイデアがあちこちに。元々は床の間だったリビングの一角のスペースには、壁にガルバリウムを貼った。サンルームには掘りごたつがあり、扉だった板を天板として載せている。
「解体している家があると、建具とか家具を譲ってもらえないか頼んでみたりします」。
2階のベッドルームの小窓も、昔手に入れて長年寝かせていた建具を使用。年代を感じさせるナラ材が風情を感じさせる。
「この建具もそうですが、数十年の時を経た質感はエイジング加工では表現できません。古いものや価値がないとされているものを大事に再利用していきたいんです」。
ルールに縛られず使えそうなものを自由にアレンジして使う。それは、安田さんが手がけるミツメのアクセサリーのコンセプトともクロスする。
モノから家、街へ
「最初はこんなとこ住めるの?って思いました」。
と笑う詩織さんも趣味は完全に一致し、ここでの暮らしを楽しんでいる。
「夏には新しい家族を迎えるので、子供にとって安全な家かどうかも考えていかなきゃいけないですね。ベッドルームの壁もこれから塗るところだし、まだまだ仕上がりは半分くらい。暑さ対策、寒さ対策もしっかりやっていきたいと思っています」。
Googleで検索したり、YouTubeで動画を見たり、ホームセンターで聞いてみたり。ルールに捕われず、あちこちで情報を集めて行われるリノベーションは、これからも進化する。
「アイデアを出して、それが形になっていくのが楽しいんです。実は、今増えている空き家などにも手を掛け始めています。街づくりにも近いうちに携われたらいいと思っています。古いものは使えない、汚いものは捨てる、ではなく再利用できないか考えてみる。当たり前だと思っていることを少し立ち止まって考えてみる。忙しい日々を過ごす人ほど大切だと思います。そして、それを実行できることが毎日の幸せです」。