〈waka studio〉を構える陶芸家のwakaさん(石川若彦さん)は、23年前に東京からここ益子の町に移り住み、作陶家の道を本格的に歩みはじめる。そして町の中心部から、益子郊外のこの地に住居とアトリエを構えたのが13年前のこと。
「敷地が約1000坪あるのですが、まず森の斜面を切り開くことから始めました。整地する前のこんもりとした森を見て、ここにほんとうに家が建てられるのか妻は不安のようでしたが、僕にはいい場所になるって確信がありましたね(笑)」
最初に建てたのが仕事場。相次いで益子に家を建てることになったアーティストのKINTAさんと高山英樹さんと協力して、コンクリートの基礎を3軒分、順番に打ったそうだ。仕事場の完成から3年後に住居を建てた。家の骨組みは大工さんに頼み、壁はwakaさんが作る。
「実は我が家の吹き抜けが高いのにはわけがあるんです。建材はもともと決まった寸法になっているので、2階を作る時は材料をカットして使うと聞き、材料代が変わらないならカットせずに高い2階を作ればいいかって思ったんです(笑)」
玄関のドアを開けると、薪ストーブと炉テーブルが置かれたコンクリート打ち放しの床のある大きな空間になっている。
「仕事場の床は土間なので、ここも最初は土間にしようと思ったのですが、手入れのことも考えてコンクリートにしました。火を使う道具を木の床ではなくコンクリートの上に置けば、安心だし安全です」
薪ストーブが置かれている場所の真上が寝室になっている。
「ストーブの熱で床がほかほかに暖まります。まるで床暖房をしているように冬でも暖かです」
子供達に愛される「まーしこ・むーしか文庫」。
多くの作家やアーティストが集まる文化的な益子の町だけど、意外にも図書館がないそうだ。そんな理由もあってか、綾子さんが運営する「まーしこ・むーしか文庫」には、本が好きな益子の子どもたちがたくさん集まってくる。この文庫は、童話作家のいぬいとみこさんと翻訳者の松永ふみ子さんが作った子どものための文庫をそのまま譲り受けたものなのだそう。
毎週土曜日の午後に開館。住居の玄関とは別に、文庫専用の入口がある。おはなし会や読み聞かせをしたり、年に1度、文庫のお誕生会には、本をたくさん読んだ子どもたちの表彰式などもある。
料理上手なwakaさんの、料理の映える白い器。
ステンレスの業務用のキッチンは、wakaさん宅の特別仕様。なんとシンクが2つ。冷蔵庫も2台。
「1台はお酒専用です(笑)」
ル・クルーゼもオーバル型の鍋が3つ棚に収められているけれど、さらに丸型のものを手に入れたいのだそう。
「自分で料理をするので、器も、料理が映えるものを作るようになりました。以前とは作風がずいぶん変わりましたね」
wakaさんの作るすっきりと美しく、凛とした白い器は、生活の中で使われることでより輝きが増す。wakaさんの器はwakaさんの家にとてもよく似合うし、暮らしと創作がすぐ近くにあって生まれる暖かさがwakaさんの作品にはある。