Family
猫と人が同等に共存する家開放感溢れる家は
“究極の一軍”のお気に入り
「雨の日にテラスに出るとすごく幸せそうなんです」。こんな調子で建築家との打ち合わせではひたすら猫の話をした。それと正義さんがコレクションしているフィギュアなどの話をするだけで打ち合わせがいつも終わってしまうぐらいだったという。
猫たちのプレイグラウンド
この「猫のための家」は、外からは分からないが、寝室やLDKなど外部と完全に遮断できるスペースとその周りの雨風の直に入る土間部分からなる。そしてこの土間部分が、家の中ながら猫にとっては “外”の役割を果たしている。
猫は、長老で16歳のしまじろうと13歳のルナ、それから家が出来てから加わった新入りの福ちゃんの3匹。家ではこの3匹が1階と2階を自由に行き来し、雨が降ってもそれほど強くなければ外(土間)を自在に移動できる。
「動き回れるスペースが広く起伏にも富んでいるので、ジャンプしてお風呂や開口部分の上に飛び移ったりしてますね。若い福ちゃんは、2階のヘリの部分を歩いたりして思いもかけぬところをプレイグランドとしています」と話すのは洋子さん。
閉鎖的な1階部分に対して2階部分に大きく開口を取ったつくりは、防犯と開放感という相反する要求に加えて、エアコンを使用しないという2人のライフスタイルなどに対して出された解答でもあったという。
ちょっと大変だがすごく楽しい
正義さんは「この家では夏に飲むビールがほんとにおいしい」と言うが、エアコンがないため、夏には40度くらいまで上がることも。そして、土間部分には雨風が容赦なく入ってくる。
中央部分と土間部分を隔てている窓も寝ている時は開けているので外で寝ているのとあまり変わらないという。洋子さんは「引っ越してきたときは雨の音がうるさくてなかなか寝られないぐらいだったんですけど、今は慣れました。人間ってすごいですね」と話すが、越してきた当時はいろいろと思うところがあったという。
正義さんは、この家のように四季を直に感じながら過ごすというのはなかなか体験できないのではないかと言う。「ほとんど外のようなものなので外の変化が直に来る。気象条件など外の変化に応じてこの家にはいつも何かが起こっているので、帰宅して“今日何があった?”って聞くんです。そういうのもあって家に飽きていないから、帰ってくるのが今でも楽しいですね」
究極の一軍たち
こうして普通の家では持つことのできないような愛着を寄せる家の1階には、松本夫妻が強い愛着をもったモノたちが多く置かれている。コレクションは正義さんが結婚前から集めていたフィギュアを中心に瓶やマグネットやぬいぐるみなど多種にわたるという。
「この家を建てたことをキッカケに、集めた雑貨の中の一番のお気に入りたち、いわゆる一軍だけを飾ることにしました。他人から見れば、飲み終わった瓶だったり、安価な値段で購入できたりするものばかりで、価値はあまりないのでしょうが…」
「だから、今まで集めた一軍の雑貨を飾ってある我が家は、わたしたちにとって究極の一軍のお気に入りなんです」。開放感溢れる空間を猫たちと共に楽しく満喫し、かつ、お気に入りのものたちに囲まれて暮らす毎日…松本夫妻の笑顔からもその充実ぶりが伝わってきた。
設計 保坂猛建築都市設計事務所
所在地 東京都葛飾区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 91m2