Family
屋上庭園のある都心の2世帯住宅すべてをゼロベースで
考えてつくられた家
「この家で私、妻、そして両親がどういう生活をしたくて、お互いの関係をどうつくりたいのか、子供たちにどう育ってほしいのかとをまず徹底的に話し合って、そこから我々が生活をする上で最適な空間を建築家と一緒に考えていきました。もちろん開放感も重要な要素ではあったんですが、それを柱にしてというようなことではなかったですね」
「食事の後などに、夫婦で話をしている時に子供たちがその近くで遊んでるとか、子供たちが自分たちの部屋に入っても見渡せて彼らの様子がわかるとか、そのようなところを出発点にして、ではこの空間に必要なものは何だろうかと考えていったんですね」
こうして実現した2階の空間は、リビングから見て右手のキッチンから左に見える子供部屋まで、ゆるやかに分節されながらも見通せるつくりになっている。一室空間ではないが、連続感があり、それが中庭への視覚的な“抜け”ともあいまって心地の良い開放感をもたらしている。
家具や植栽もゼロベースで
建築部分だけではなく、家具やインテリア、植栽でも「ゼロベース」にこだわり、洗面台の高さまで話題にしたという建築家との打ち合わせは、5時間以上に及ぶこともしばしばだった。
「このスペースにはどういう形がふさわしいかととてもこだわって決めた」というリビングのソファは、2つのソファが背中合わせでくっついたようなデザイン。背の部分を低くしたのは、座っていても2階すべてを見渡せるようにしたかったから。そしてまた、子供たちと遊べるスペースにしたかったからでもあった。どのような色にするのかも、当然ながら何度も話し合って、グレーとイエローのコンビネーションとなった。
中庭に植えられている木はモミジだが、この家のシンボルツリーをどの樹種にするのかもじっくりと検討された。1階部分まで1日中日が差しこむわけではない中庭では、日陰で育ったモミジじゃないと適さないということから、群馬県の高崎まで条件に合うモミジを探しに行き、まさに今植わっている木そのものを選んできたという。
屋上は緑と水の楽園
SKY GARDEN HOUSEというこの家に付けられた名前の由来となった屋上庭園のデザインももちろんゼロからのスタートだった。
「最初のころの設計では屋上には室外機が置いてあるだけでしたが、コンクリートなので、土を盛って庭をつくるだけの強度は確保できるという話から、じゃあ屋上に庭をつくったらいいんじゃないかということになり、さらにそこからまたどんどん話が大きくなっていきましたね」と語るのは一色さん。
出来上がったのは、都心では考えられない心地の良さを満喫できるスペースだ。特注でつくられた全天候対応のソファやパーティ対応のシンクと冷蔵庫も備えたボックスと、子供たちがその中に入って遊べる水盤。そして、植栽は季節ごとに花が咲くだけでなく、借景的に利用している隣地の緑とのバランスも考えてデザインされた。
まずは一色さん。「夏場でも日差しが強くない時間帯に屋上のソファで横になって本とか読んでいる時とかですかね。気持ちが良くなって、知らない間に眠り込んでいたりします」
奥さんは、キッチンと自身の仕事スペースとともに屋上がお気に入りのベストスリーだという。「初夏ぐらいから時々夕ご飯を屋上で食べたりするんですが、その時の開放感はいいですね」。こういった時には屋上は必ず「スカイビアガーデン」になるのだという。
設計 芦沢啓治建築設計事務所
所在地 東京都
構造 RC造
規模 地上3階・地下1階
延床面積 346.53m2