Family

家と家族の成長を楽しむシンプル空間に色を取り入れて
時間とともに味わいを増す家

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オープンなリビングに家族が集う

都心の憧れの住宅街。築32年の一軒家をリノベーションしたボウスキル邸は、日だまりの中に建つ。家主は、イギリス、ヨークシャー地方出身のジェイムスさんと奥さんの京子さん。遊び盛りの保育園児の男の子、友樹君(6)と、直樹君(3)の4人で暮らす。

「東京に興味があって、10年前に来日しました。そして妻と知り合って結婚。家を探し、知り合いの建築事務所MS4Dにリフォームを依頼したんです」

その住空間は、ウェブやアプリのアートディレクションの仕事をするジェイムスさんと、ネットでイギリス雑貨の輸入販売を行う京子さんのこだわりが活かされた、どこかポップで明るい環境だ。

「オープンな広い部屋をつくりたかったので、リビングとキッチンは間仕切りを取り外して、ワンルームにしました。身長の高い私に合わせて、ドアも天井までの高さに設計してもらったんです」


カウンター脇のフットライトなどの間接照明により、夜にはやさしい明かりが灯る。キッチン下には本棚をオープンにして設置。


色を加えて、気分を明るく!

広々としたシンプルな空間に、鮮やかな黄色の大きなドアが映える。

「黄色はハッピーな気分になれる色なんですよね。日本家屋の木の雰囲気や、シンプルな造りを活かしつつ、派手な色を加えて、ちょっとはずした感じにしたいと思いました。ふたりともミッドセンチュリーの家具が好きなのですが、レトロなものに新しいものをミックスしたいと思ったんです」

アクセントとしてキッチンの収納の引き出しの中も、黄色で塗った。重厚な石造りの家にアンティーク、がイギリスのイメージだが、色を加えて遊ぶことも、特に最近の若い世代には人気なのだとか。ほかにも、2階の仕事用の一部屋をグリーンで塗り潰したほか、キッチンまわりは、壁をブルーグレーに塗り、それに合わせて薄いグレーのタイルを敷きつめた。

「完成前は、タイルの目地にコンクリートがそのまま浮き出ていたのがちょうど良かったんですが、完成後は白できれいに塗られていたんですね。使い古された、生活感のある感じが好きなので、もう少しくすんでいる方がいいなと思って。メジフレを買ってきて、塗り潰そうと思っているところです」


リビングにつながる大きなドア。傘はイギリスの老舗ジェームス・ホックスのハンドメイドの逸品。
故郷ヨークシャーの作家、デイヴィッド・ホックニーのヴィンテージもののポスターなど。ジェイムスさんのお気に入りをインテリアに。
引き出しの中も黄色でペイント。「色があることによって、気持ちが明るくなる」と京子さん。
食器類もレトロな雰囲気の「D&DEPARTMENT」のものを愛用。エッグカップは、イギリス人デザイナー、ハンナ・ターナーの作品。子どもたちにもガラス製品などを使わせ、あえて“壊れる”ことを体感させる。
レトロな雰囲気が好きで、カリモクの家具を愛用。カーテンはIKEAで布を買い、手作りで作成。
京子さんが以前に愛用していた日本の自転車。職人によるハンドメイド。
 
蛇口は、壁にそのまま取り付けるタイプを探し回り、イタリア製のものを見つけた。
ダクトも外に出し、業務用っぽく“見せる”工夫をした。


使いこむほどに、味が出る。

京子さんが扱うイギリス雑貨は、ティータオルと呼ばれるイギリスの手ぬぐいやエプロン、ミトンなどの布もの。イギリス人デザイナーによる、ポップでカラフルな色使いが、この家のインテリアにもよく似合っている。

「もともと100年くらいの歴史があって、イギリスの各地方の景色などが描かれたお土産品なんですが、今は、グラフィックデザイナーがデザインしたものが流行っているんですね。生地は目が締まっていて初めは硬いのですが、使い込んでいるうちに柔らかくなり、だんだんと汚れて味が出てきます。ボロくなってもおしゃれなのがいいんです」

色鮮やかなティータオルで、キッチンをいつもピカピカに磨き上げる。もったいないような気がするのだが、家も雑貨も、使い込むほどに味が出るというのが、京子さんの考えだ。

「子どもがいることもあり、床には安いランクの板を使いました。キッチンのコンロやシンク下も、本来は壁の中に使うランクの木で収納を作りました。だから節があるし、色も変わってくるのですが、それが逆にいいと思っているんです。使っているうちに傷ついたり、汚くなってきたりすることで出てくる味を楽しんでいます」


京子さんがこだわった、ハーマンのコンロ。洗剤をつけず、ティータオルだけでピカピカに。www.mistermagpie.com


手を加えて、生活を楽しく快適に。

ダイニングでは、飛行機に載せて現地から運んできた、イギリスの古い小学校で使われていたイスを使用。子供たちが自由に遊ぶリビングの黄色いテーブルは、ジェイムスさんによるお手製だ。

「床の上ではサイドテーブルとして、キッチンカウンターに載せると、私の仕事用の机に変わります。サイズを測って、カウンターの脇にぴったり収まるように作ったんです。キッチンの収納の引き出しに使った、黄色のペンキを、ここでも使用しました」

このテーブルを使い、パソコンに向かって、立ったまま仕事をするのが、健康の秘訣でもあるとか。もともとこの家にあった木の柱に取り付けたパソコンは、仕事に使うだけでなく、テレビのないボウスキル邸の情報ツールでもある。

「テレビがあるとつけっ放しになってしまうので、あえて置いていません。リビングを広く設けて、家族それぞれがひとつの空間でいろいろなことができるようにしたのが良かったですね。間接照明なので、夜は部分的に明かりを落として、子どもたちを落ち着かせたりもしています」

庭に面した明るい空間は、子どもたちにとっても格好の遊び場となっている。傷つけることを恐れるのではなく、生活の跡を刻んでいくことで、味わいを増していく家の魅力が伝わってくる。


「立って仕事をすることで腰がのびる」と身長195㎝のジェイムスさん。黄色のテーブルがちょうどよい高さに。
手作りとは思えない、頑丈で美しいテーブル。新聞紙の犬は子どもたちの作品。
広く明るいリビング。いつも子どもたちのおもちゃでいっぱいになる。
イギリスの小学校のイスも、アンティークの味わいが。


3人乗りができる自転車は、インターネットで見つけたアメリカの「yuba」。パーツで輸入して組み立てた。自転車での外出が子どもたちも大好きだ。