Renovation
築54年の家をリノベーションミッドセンチュリーの家具が
似合う同世代の日本家屋
落ち着いた古民家の佇まいに、フランスを中心としたミッドセンチュリーのモダンな家具がとてもよく似合う。
「家具と家が同じくらいの歳なのも、家と家具が調和している理由のひとつだと思います。特にフランス製の家具は、アメリカのものに比べるとこじんまりとしています。家のサイズが日本に近いからかもしれません。その点でも、日本の家によく馴染むのだと思います」
宮田邸の壁は、ウォールナットのツキ板、和紙、コンクリートブロック、珪藻土など、さまざまな素材や色がバランスよく調和している。一彦さんの抜群のセンスと、古い家の持つ懐の深さと空気感が、そんな離れ業を可能にしている。
子どもにはモノより思い出を
桂くんが使っているフランスの小学校で使われていた一体型デスクチェアは、子どもが使う場面を思い描いて購入したものだそう。子どものために、新たな掘り出し物を見つける楽しみも生まれたそうだ。オモチャをしまうためのキャビネットは真っ黒なフランス製。
「子どもが大きくなって不要になっても、次に欲しい人が見つかるような家具を選びたいと思っています。安価な子ども用家具を買うよりもずっといいんじゃないでしょうか?」
子どもが成長してこのスペースが空いたら、コンクリートブロックの壁面に薪ストーブを置きたいと考えているそうだ。
ダイニングの天井はスケルトンにすることで、3mの天井高を確保。梁から下げた手作りのブランコは桂くんへのお誕生日プレゼントだそう。
「子どもふたりともとても気に入っています。どこかのCMではないですが、物より思い出をプレゼントできたと思っています。思い切りイタズラ書きができる黒板も、キッチンのカウンターにつけました」
その家の持ち味を生かすリノベーション
リノベーションのウエイトが建築の仕事の中でも大きいという宮田さんは、今まで数多くの日本家屋を手がけてきた。
「不動産はなるべく安く取得し、その分、リノベーションに予算を回すと、自分らしい納得のできる家ができあがります。ちなみにこの家は1700万円で購入し、リノベーションに1500万円かけました。しっかりと耐震補強し、断熱、湿気対策などを行うことが大事です」
実はこの家、再建築不可の不動産を格安で手に入れたものだそうだ。
「今は条例が変わって建築できるようになったので、いいタイミングでした。購入した廃虚同然の家を、ほとんど骨格だけ残してフルリノベーションしました。15センチも家が傾いていましたが、ジャッキアップして直しました。こんなことができるのも木造の家の魅力だと思います」
一彦さんの仕事場「宮田一彦アトリエ」は2階にある。
「仕事の依頼を受けた時は、いつもこの家を見てもらいます。自邸がモデルルームの役割も果たしているんです。百聞は一見に如かず、です。リノベーションの仕事は実際に現場で作業してみないとわからないことが多いのも魅力です。この家も天井を剥がしてみたらキレイだったのでスケルトンにしました。その家ごとに違った持ち味がある。そこがおもしろいんです」
設計 宮田一彦(宮田一彦アトリエ)
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 123m2