築54年の家をリノベーションミッドセンチュリーの家具が似合う同世代の日本家屋

築54年の家をリノベーションミッドセンチュリーの家具が
似合う同世代の日本家屋

緑豊かな北鎌倉の一角に建つ築54年の日本家屋。そこを建築家の宮田一彦さんが自らリノベーションし、自宅兼アトリエとして、一家4人+2匹の愛犬とともに暮らしている。

落ち着いた古民家の佇まいに、フランスを中心としたミッドセンチュリーのモダンな家具がとてもよく似合う。
「家具と家が同じくらいの歳なのも、家と家具が調和している理由のひとつだと思います。特にフランス製の家具は、アメリカのものに比べるとこじんまりとしています。家のサイズが日本に近いからかもしれません。その点でも、日本の家によく馴染むのだと思います」

宮田邸の壁は、ウォールナットのツキ板、和紙、コンクリートブロック、珪藻土など、さまざまな素材や色がバランスよく調和している。一彦さんの抜群のセンスと、古い家の持つ懐の深さと空気感が、そんな離れ業を可能にしている。


日本家屋にコンクリートブロックの壁が新鮮な組み合わせ。ダイニングテーブルには武骨なインダストリアルデザインのライトが2灯、70年代フランスPhilips社製。その下はイルマリ・バピオヴァーラのテーブルとベンチのセット。

日本家屋にコンクリートブロックの壁が新鮮な組み合わせ。ダイニングテーブルには武骨なインダストリアルデザインのライトが2灯、70年代フランスPhilips社製。その下はイルマリ・バピオヴァーラのテーブルとベンチのセット。

奥のスペースには、フランスのエアボーン社やピエール・ガーリッシュのラウンジチェア、ジョージ・ネルソンのデイベッド。

奥のスペースには、フランスのエアボーン社やピエール・ガーリッシュのラウンジチェア、ジョージ・ネルソンのデイベッド。

梁から手づくりのブランコが下がる。2歳の楓ちゃんも、4歳の桂くんも、このブランコ遊びが大のお気に入り。

梁から手づくりのブランコが下がる。2歳の楓ちゃんも、4歳の桂くんも、このブランコ遊びが大のお気に入り。

柿渋を塗った杉板の床。長い縁側の奥にはピエール・ガリッシュのソファ。青い色が和の空間に映える。

柿渋を塗った杉板の床。長い縁側の奥にはピエール・ガリッシュのソファ。青い色が和の空間に映える。


春と秋は障子を開け、夏と冬は閉めて部屋の温度を調節する。11歳の2匹のビーグル犬がドッグベッドでのんびりと昼寝。奥様の里江さんとは犬が縁で知り合ったそう。

春と秋は障子を開け、夏と冬は閉めて部屋の温度を調節する。11歳の2匹のビーグル犬がドッグベッドでのんびりと昼寝。奥様の里江さんとは犬が縁で知り合ったそう。

ユニット式のキャビネットはR.J.カイエットのデザイン。disderot社のデスクランプが和紙を継いだ壁を照らす。

ユニット式のキャビネットはR.J.カイエットのデザイン。disderot社のデスクランプが和紙を継いだ壁を照らす。


子どもにはモノより思い出を

桂くんが使っているフランスの小学校で使われていた一体型デスクチェアは、子どもが使う場面を思い描いて購入したものだそう。子どものために、新たな掘り出し物を見つける楽しみも生まれたそうだ。オモチャをしまうためのキャビネットは真っ黒なフランス製。
「子どもが大きくなって不要になっても、次に欲しい人が見つかるような家具を選びたいと思っています。安価な子ども用家具を買うよりもずっといいんじゃないでしょうか?」

子どもが成長してこのスペースが空いたら、コンクリートブロックの壁面に薪ストーブを置きたいと考えているそうだ。

ダイニングの天井はスケルトンにすることで、3mの天井高を確保。梁から下げた手作りのブランコは桂くんへのお誕生日プレゼントだそう。
「子どもふたりともとても気に入っています。どこかのCMではないですが、物より思い出をプレゼントできたと思っています。思い切りイタズラ書きができる黒板も、キッチンのカウンターにつけました」


キッチンのカウンターの黒板で、子どもたちが夢中でお絵描き。子どもたちが成長して要らなくなったら取り外す事ができる。

キッチンのカウンターの黒板で、子どもたちが夢中でお絵描き。子どもたちが成長して要らなくなったら取り外す事ができる。

モザイクタイルで、TVの下からキッチンまで一体感を持たせている。TVとデッキは壁の後ろの納戸で配線し、表からは見えない。

モザイクタイルで、TVの下からキッチンまで一体感を持たせている。TVとデッキは壁の後ろの納戸で配線し、表からは見えない。

DIYショップで安く買ったメッシュのワイヤーを天井から下げている。照明は放熱の少ないLEDなので木に埋め込む事もできる。

DIYショップで安く買ったメッシュのワイヤーを天井から下げている。照明は放熱の少ないLEDなので木に埋め込む事もできる。

右の机はフランスの小学校で使われていたもの。左の黒い30~40年代のForges de Strasbourg社のキャビネットはオモチャ箱に。

右の机はフランスの小学校で使われていたもの。左の黒い30~40年代のForges de Strasbourg社のキャビネットはオモチャ箱に。



雪見障子のグリッドの美しさが際立つリビング。その向こうには、たっぷりとした広さのある縁側が続く。

雪見障子のグリッドの美しさが際立つリビング。その向こうには、たっぷりとした広さのある縁側が続く。

60年代のフランス製eripson社のボールスピーカー。「子どもたちに壊されそうなので2階に避難させました」

60年代のフランス製eripson社のボールスピーカー。「子どもたちに壊されそうなので2階に避難させました」

右のタペストリーは京都「MIZRA」オリジナルの限定品。アンティーク着物生地が赤耳付のデニムにキルティングされている。

右のタペストリーは京都「MIZRA」オリジナルの限定品。アンティーク着物生地が赤耳付のデニムにキルティングされている。


その家の持ち味を生かすリノベーション

リノベーションのウエイトが建築の仕事の中でも大きいという宮田さんは、今まで数多くの日本家屋を手がけてきた。
「不動産はなるべく安く取得し、その分、リノベーションに予算を回すと、自分らしい納得のできる家ができあがります。ちなみにこの家は1700万円で購入し、リノベーションに1500万円かけました。しっかりと耐震補強し、断熱、湿気対策などを行うことが大事です」

実はこの家、再建築不可の不動産を格安で手に入れたものだそうだ。
「今は条例が変わって建築できるようになったので、いいタイミングでした。購入した廃虚同然の家を、ほとんど骨格だけ残してフルリノベーションしました。15センチも家が傾いていましたが、ジャッキアップして直しました。こんなことができるのも木造の家の魅力だと思います」

一彦さんの仕事場「宮田一彦アトリエ」は2階にある。
「仕事の依頼を受けた時は、いつもこの家を見てもらいます。自邸がモデルルームの役割も果たしているんです。百聞は一見に如かず、です。リノベーションの仕事は実際に現場で作業してみないとわからないことが多いのも魅力です。この家も天井を剥がしてみたらキレイだったのでスケルトンにしました。その家ごとに違った持ち味がある。そこがおもしろいんです」


フランス製のholophane社やGRASのランプが存在感を放つアトリエ。「奥のテーブルは大工さんに安く作ってもらいました」

フランス製のholophane社やGRASのランプが存在感を放つアトリエ。「奥のテーブルは大工さんに安く作ってもらいました」

「建具は菊のシルエットがきれいだったので、祖父の家で使っていたものをもらい受けました」

「建具は菊のシルエットがきれいだったので、祖父の家で使っていたものをもらい受けました」

一彦さんの仕事場のデスク。「古いマッキントッシュが置いてありますが、今はWindowsのマシンで仕事しています」

一彦さんの仕事場のデスク。「古いマッキントッシュが置いてありますが、今はWindowsのマシンで仕事しています」

白の漆喰の壁と、和風な誂えの玄関が印象的な宮田邸。

白の漆喰の壁と、和風な誂えの玄関が印象的な宮田邸。

宮田邸
設計 宮田一彦(宮田一彦アトリエ)
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 123 m2