Green
植物とアンティークを暮らしに多肉植物と共生する
ボタニカルガーデン
多肉植物ありきで考えた家
真っ白な箱のような一軒家は、妻が育った家を2年前に建て替えて完成したもの。多肉植物のアレンジを行い、自宅でショップやワークショップを開く近藤さん夫妻の家は、白い器にふたりの感性が盛り込まれた作品のよう。
「多肉植物を育て販売するスペースをつくることが目的だったんです。家の建築にあたっては、いかに植物に良い環境をつくるかを中心に考えました」と、夫の義展さん。日当たりと風通しが良いことを第一に考えた設計図を起こし、それを実現してくれる建築士さんを探したのだという。
「設計図通りに作ってもらうのはなかなか難しくて。“図面通りにつくることはできるけど機能としては劣る、人間には住み辛いものになりますよ”。と言われましたね。1年くらいかけて探して、いちばん忠実につくってくれる建築士さんにお願いしました」。
光が入るように屋根に天窓をつけ吹き抜けにして、サイドはガラス張りに。「当初は全部ガラス張りにしたかったのですが、構造的に無理だと言われサイドだけにしました。天窓をつけることも木造では難しいのですが、そこは強く希望しましたね。設計上必要な部分は譲ったのですが、後は希望に近いものになりました」。心配された住み心地も、暮らしてみると気にならなかったという。
アンティークをほどよく配置
「アトリエ先行で考えたので、プライベート空間にはあまりこだわっていなかったんです。寝室はベッドだけでいいし、お風呂も小さくていい、リビングも寛ぐというよりは仕事ができる場所であればいい、と思っていました」。
だが、妻・友美さんが長年かけて集めたアンティークが用いられた住空間は、どの部屋を切り取っても絵になる美しさ。友美さんは、「シンプルに箱だけを作ってもらって、後から飾っていけばいいと考えました。アンティークの似合う家にしたいと思っていましたが、そればかりでもしっくりこなくて。きれいな空間にアンティークがあるというのがちょうどいい感じですね」
友美さんも、同居する友美さんのお母さんも大のアンティーク好き。いつか使いたいと思って購入していたランプや家具などが効果的に配置された室内には、ほどよい居心地の良さが漂う。うすいブルーグレーに塗装された壁も、アンティークのドアとなじんでいる。
温かみのあるキッチン
「母も私も料理が好きで、特に母は長い時間をキッチンで過ごすので、住空間の中でキッチンだけはいろいろとこだわりましたね」。キッチン台は部屋の端から端まで1枚の天板を使って作り付けにしてもらった。空間が広く見えるようにするためと、母親とふたり立っても狭くならないことを考えてのことだという。
「コンロ前の壁はステンレスだと雰囲気に合わないので、凹凸のあるタイルを選んで貼ってもらいました。キッチン台の下の棚も、当初床とマッチしなかったので、グラデーションをつけて色を塗ってもらいました」。手を加えた温かさがキッチンを包む。大きな窓の脇には鮮やかなグリーンが潤いを与えている。
「家の中にもグリーンはいつも欠かしませんね。でもここには多肉植物は置いていません。置く場所によって管理は違うので、環境にあった植物を選んで配置することも大事です」
家の中のアウトドアリビング
アトリエから2階のリビングには、天然石の階段を土足のままであがる。「ここは外の庭のイメージなんです。主人が什器などを作る作業場は、瓦屋根を載せて小屋っぽくしました」
3面のガラス窓や天窓から光がたっぷり差し込むこのスペースは、多肉植物いっぱいのサンルーム。リプロダクトのテーブルなど味のある家具やアンティークの雑貨が、雰囲気を出している。「ここはワークショップなどにも使うのですが、普段はリビングとして使っています。夫婦で食事をしたり、友人を招いたり。でも仕事をしている時間がいちばん長いですね」
アウトドア風リビングの奥にあるもうひとつのリビングもまた、仕事で使用することがほとんどなのだという。「リビングといってもテレビもないし、ゆったりできるソファーもないんです。すべて仕事が最優先。でもそれが私たちにとっていちばん幸せなんですね」
家も創作活動の器
多肉植物との出会いは6年前。八ヶ岳で出会った多肉のリースを友美さんが気に入り、義展さんが本を購入してそれを真似て作ったのがきっかけだという。
「妻がすごく喜んでくれたのがうれしくて」はまってしまい、たくさん作った作品を玄関前に飾っていたら近所の人にも評判となる。そしてついにもとの仕事をやめてふたりで多肉植物を専門とすることに。現在は日々、多肉植物をアレンジし完成させていくことに喜びを感じている。
「器の中にひとつの世界を作りあげるのが私たちの仕事なのですが、家もまたひとつの器です。その中で創作活動を楽しんでいる気分ですね」