Green
木への思いとこだわり自然に包まれた
森の中のモダン建築
シンボルツリーのある家
「自然の豊かなところで暮らしたいと思っていたんです。人づきあいが苦手なもので(笑)」。茅ヶ崎の緑豊かな土地。もともと竹林だった林を開発するところから、小形邸の建築は始まった。夫の究さんは大工さん。工務店を営むための広い敷地が必要だったこともある。
「この土地を見つけた時、大きな木が何本かあったので、これを活かして造りたいと考えました」。家の前の立派なクヌギの木はそのまま残し、シンボルツリーとしているコナラの木にはツリーハウスを。広い芝生で子供たちが駆け回る、自然と共生するかのような住まいが誕生した。
「家の脇には雑木林があって、ウサギがいたりフクロウの鳴き声がしたり、たまにキジが庭を歩いていることもあるんですよ」と、妻の美栄子さん。春には花穂、秋には落ち葉やドングリ。“いろんなものが上から落ちてくる”家は、四季折々の変化が感じられる。
別荘のような洋風建築
芝生の向こうに構えるのは、別荘のような瀟洒な建物。その造りは、究さんの理想の形だ。「煙突があって、平屋っぽくて。子供が絵に描くような、本当にシンプルな家がイメージでした」。
その設計には、カナダに留学したこともある究さんの経験が活かされている。「木の屋根は日本では珍しいのですが、屋根と外壁には、ウエスタンレッドシダ―というカナダの建材を使いました。時間が経つとだんだんグレーっぽくなっていって味が出てきます。経年変化が楽しめるのがいいんです」
玄関には、欧米でよく見られるスクリーンポーチを設けることを、初めから決めていた。広々としたその空間には、テーブルと椅子が置かれ、ゆっくりできる日はここで朝食を取ったり、ハンモックで昼寝をしたり。「網戸を張ったことで、蚊などの虫を気にせず過ごせます。日本では網戸は必要ですね」。雨の日は、外に出られない子供の遊び場にもなる。家でも外でもない半屋外のこの空間が、贅沢な時間を与えてくれる。
「元々僕は軸組み工法をやりたかったんです」。究さんがこだわった、1本1本手刻みで造る日本の木組みに、欧米のティンバーフレーム工法を取り入れて、オリジナルティンバーフレームを完成。「強度が高いということだけでなく、木組みの美しさ、構造美に惹かれるんです」。ポーチから室内へと入ると、その言葉通り、柱や梁を活かした木組みの美しい空間が広がる。ガラス張りの大きな開口部の向こうに広がる雑木林の緑と重なって、森の中の1軒家を訪れたかのようだ。
内装はモダン・デコに
「窓からも季節の移ろいが感じられますね。家の脇にビオトープを造ったのですが、毎朝起きてリビングからふと眺めると、水に映り込む景色や反射光がきれいなんです。窓からの景観を楽しんでいます」と美栄子さん。木を活かした温かみのある空間なのに、洗練性も感じさせるインテリアは、美栄子さんのコーディネートによるもの。ガーデニングの仕事に7年程携わり、結婚とともにインテリアの勉強を始めた美栄子さんは、独自のセンスでインテリアを彩る。「コンセプトはモダン・デコです。白い箱みたいな家が今流行っていますが、それだと私には物足りなくて。ある程度装飾を用いて陰影が出るように、かといってデコラティブになりすぎないように、と考えています」
ポーチを入ってすぐのところにあるキッチンは、黒と白のコントラストがモダン。収納には立体感の出るレイズドパネルを採用した。「黒を使うことによって空間が引き締まるんです」。さらに御影石の天板が高級感を添える。「できるだけ本物を使うようにしています。造られたものって経年劣化すると見すぼらしくなるじゃないですか。でも本物の石なら、欠けてもそれがかえって味になります。木も無垢材を使うようにしていますね」
ダイニングのテーブルは、無垢の古材を使って作ったオリジナル。木のナチュラルな風合いに、黒のウィンザーチェアが、ここもマッチしている。「日本はイギリスのウインザーチェアが主流なんですが、うちはもう少しラインの細いものを探していて、イメージ通りのものをアメリカのブランドで見つけました」。アンティークのシャンデリアなども、空間に装飾性を添え、繊細さが醸し出されているようだ。
家族が集える環境
2階にある3人の子供たちのための部屋も、テーマカラーを決めた空間づくりが見事! 長女の部屋はうすい紫、長男はモスグリーン、次女はうすいピンクを壁にペイント。トイレも、ターコイズブルーのタイルが目に鮮やか。自然に囲まれた環境と、モダンなインテリアのミックスが絶妙だ。
「自然の中に暮らすということは、大変な面もありますが、私たちにとっては当たり前なんです。高層では落ち着かないし、地面に近いところで暮らしていたい、というのがありますね」。
子供たちも自然になじみ、のびのびと成長している。冬の夕食後は、暖炉を囲んで家族団欒の時間が繰り広げられる。夫と妻はお酒を飲み、子供たちは思い思いの遊びに興じるのだとか。煙突の下に、家族水入らずの満ち足りた時間が流れていく。
設計 KONARA HOUSE
所在地 神奈川県茅ケ崎市
構造 木造
規模 地上2階建て
延床面積 175.7m2