Kitchen
料理家の住まい兼仕事場オープンかつ広々
人が集まる楽しいキッチン
ご近所さんに設計を依頼
東京郊外の学園都市。春は桜、秋には銀杏が美しい通りのあるこの街に、瀬戸口さん一家の住まいがある。「以前は駅の北側の古い一軒屋に暮らしていました」と話す瀬戸口さん。「息子が小学校に入るタイミングで、改めて夫とこれからを考えました。そして、暮らしやすく気に入っているこの街の中で、改めて引越そうということになったんです」。そうした中でタイミングよくこの土地に出会い、家を建てることに。設計は「家を建てた経験のある友人に、ご近所の建築家に頼んだほうがいいよとアドバイスされたので(笑)」と、同じ街に住むテラバヤシ・セッケイ・ジムショの寺林省二さんに依頼した。
設計を手がけた寺林さんは「ご家族に最初にお話を伺ったときから、土間、引戸、2階リビングなど建てたい家のイメージがはっきりしていたので、あとはそのイメージをどう実現するかだけでした」と振り返る。
光に満ちるLDK
料理家として活躍する瀬戸口さんにとって、住まいは暮らしの場であると同時に、仕事場でもある。「本に掲載する写真などは自宅で撮影することが多いので、キッチンは光の入る2階にと決めていました」。
そのキッチンを含む2階が、瀬戸口さん家族の暮らしの中心となる場。階段をのぼると、南側の大きな開口部からの光に満ちる明るい空間が広がる。造作家具で仕切られたコーナーに小上がりになった畳スペースがあるものの、ほぼワンルームのシンプルな空間だ。
キッチンが設けられているのは、入口から見て最も奥にあたる場所。東と南にとられた小窓から光と風が入るキッチンには、使いこまれたキッチンツールが並ぶ。初めて訪れた人も思わずくつろいでしまう、そんな居心地良さを感じさせる空間だ。
新旧がミックスしたオリジナルな空間
キッチンをはじめ、リビングダイニングや和室には、味のある小物や家具などが置かれ、どこか懐かしい雰囲気を醸し出している。これらのモノたちは、古道具屋さんで手に入れたり、友人から譲り受けたりして、大切に使い続けているもの。「友達の家で『これいいね』って言うと、引越しの時に思いがけず譲られることが多くて。自然と集まってきた感じです」。
設計時には、これらの家具類の配置も考えられているため、新しい空間にしっくりとなじんでいる。「シンプルな間取りなので、生活空間のサイズを把握することが重要でした。手持ちの道具や家具などのサイズも測って、置き場所を考えました」(寺林さん)。
広い土間のある玄関
この家のもうひとつの特徴が、玄関を入ってすぐに広がる土間空間。約1.7メートル×5メートルのたっぷりとした土間は、来客を招き入れる際のエントランスの役割のほか、自転車やアウトドア用品置き場としても活躍している。「ウチはお客様が多くて、時には30人近くが集まることもあるんです」と笑う瀬戸口さん。「そんなときには土間が靴で埋め尽くされるんですよ」。
もともと人を招くことが多かったという瀬戸口さん一家は、家を建ててますますお客様が増えたという。「気兼ねしないでお客様に来ていただけるのは、戸建の魅力のひとつ。あとは、建てて完成ではなく、暮らしながら少しずつつくっていけるところも楽しいところかな」。そう話す瀬戸口さんの住まいとキッチンは、毎日の暮らしの中で、これからも味わいを増していくのだろう。