Kitchen
パティシエールこだわりの家造り広めのキッチンと
“わくわくする”空間
「子どもがまだ小さいので、家で仕事をしたかったんですね。それがお菓子の教室で、教室もできるような広めのキッチンが欲しかったんです」
大理石のカウンターとプティ・バッケン
この“広めのキッチン”でかおりさんは、さらに3つのものにこだわった。
教室の生徒さんたちと作業をする大きなカウンターの天板に大理石を使う。「あと、この業務用オーブンを入れたかったんですね。建築家に相談したら、どのくらいの重さがあるんですかと聞かれて。そのパンフレットを見てもらったら、えーっ、何ですかこれはって(笑)。重量が500kgぐらいあるんですよ。木造の家ですが、それでオーブン部分の床はコンクリートになっているんです」
このオーブンは七洋製作所という会社のプティ・バッケンという製品。バッケンというのはお菓子業界では有名な製品だそうで、“ プティ” と付いているので、お店などで使うものよりひと回り小さいものだ。「色の展開も、白黒赤とかの他にも黄、ピンクなどもあってかわいくて、インテリアとしても、あるいはカフェに置いても見栄えのするオーブンですね」
キッチンには、ショーウィンドウのような窓
さらに、通りに面したキッチンの窓にもかおりさんはこだわった。
「ショーウィンドウ的な感じにしたくて。一般の家庭では、中を見せたくないからこんな大きいものはつくらないそうで、最初はもうちょっと小さかったんです。だけど、中を見せられる時にはバーッと開けられる大きな窓で、ピタッと閉めるとまったく中が見えず、明かりが洩れるぐらい、そういう窓が欲しかったので、もっともっと大きくしてと建築家にはお願いして、結局この大きさになったんです」
プティ・バッケンも、隠すよりもむしろ見てもらいたかったので、外からよく見える向きにして置いた。お菓子教室の生徒さんは、通りよりも高さが一段上がっているので見られてもそんなに嫌じゃないとか。「いつも優越感に浸ってつくっているなんていう話を生徒さんから伺ったりしますね」
ブランコと床の窓とビルトインガレージ
お子さんや夫の泰文さんも、設計時に、一般家庭では珍しいものをリクエストした。
「いつも子どもを打ち合わせに連れて行っていたので、建築家が“君たち、何が欲しい?” って聞いてくれたんですよ。そしたら、上の子が、あの時は5歳ぐらいだったと思いますが、“床の窓とブランコが欲しい”って」。それで、子ども部屋には赤いブランコが、リビングの床には、“ 窓” がつくられた。この窓は子どもたちが思っていたいたものより大きく、「出来たらこんなに大きかったってすごい喜んで」。
泰文さんはビルトインガレージ。と言っても、ダイニングとは大きなガラス面を介して接し、上のリビングの“床の窓”からも車を眺められるという特別仕様だ。家の中から車を眺めるというのは長年の夢だったという。「後で聞いた話ですけれども、大学の時から、僕は将来、自分の部屋から車が見える家に住むんだって思っていたらしいです」
ガレージの隣には泰文さんの書斎もつくられた。ここにはワインセラーや模型が置かれている。模型は鉄道模型で、すべて自身でつくられたもの。自分の好きなものに囲まれて、隣にある車もじっくりと眺められるこのスペースにこもるのが好きで、ここにはあまり人を入れたがらないのだという。まさに、泰文さんだけの“聖域”なのだ。
わくわくして、楽しい空間
「子どもが小さかったので、つねに子どもが見えるところで過ごしたかったんですね。あと、これから大きくなって、思春期とか迎えた時に、話さなくなったりするのが嫌だったので、どうしても顔を合わさなければならないようにしてほしかったんです」。そこで、子どもたちが帰宅したらDKの前を通らないと自分の部屋に行けないつくりになっている。DKと玄関に挟まれた階段のことだ。
「それと、子どもが階段が欲しいって言ったこともあって家の中に階段がいっぱいあるんですよ」。確かに、規模の割に階段が少し多いかもしれない。しかも、この階段が単に部屋と部屋をつなげるだけでなく、ちょっとずつ迂回して移動するつくりになっている。自然と移動することが多くなる家なのだ。
この“わくわくする”空間で、かおりさんのお気に入りは何と言っても自身がこだわってつくったキッチンだ。
「ご飯つくったり、あと教室もあってやることがいろいろあって、そうしたことをすべて終えたり、その合間の準備している時ですかね。1人でこうやっているのが“ああ、楽しい!”って思える瞬間があるんですよね」
設計 山縣洋建築設計事務所
所在地 神奈川県川崎市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 123.93m2