Kitchen
古いものを活かして家も食も生活も。
素材の良さを味わう
自然に包まれる心地よさ
鎌倉の築50年を過ぎた1軒家。料理研究家の赤城美知子さんが、2人のシェアメイトとともに暮らす家は、南北の窓から風が通り抜け、緑が目に映る居心地のいい空間だ。
「住宅街なのに緑に囲まれているのが気に入っています。以前も鎌倉の平屋の家で暮らしていたのですが、街も家も雑貨も、古いものが持っている味が好きなんです」
入居にあたっては、床と壁に手を加えた。床には無垢材、壁には珪藻土。
「自然素材にはこだわりがありました。人工的ではないものの気持ち良さがあるんです。無垢材の床は、歩いてみると気持ちがよくて、夏はいつも素足で過ごしています。だんだんと色が変わっていく変化も好きですね」
壁の珪藻土は友人に手伝ってもらい、自分でペイント。網戸やキッチンの棚なども、知人の大工さんに作ってもらった。
「知り合いを頼りに、出来ることは自分でやって仕上げました。ここに来て、手を加えて生活することの楽しさを知りましたね」
豊かな緑に和む
ダイニングの南側には、リスやモグラも姿を見せる庭があり、その向こうには裏山が。モミジ、サルスベリ、柿、山桜、金木犀…。あらゆる木々が四季折々の表情を見せる。
「年に2~3回、友人の植木屋さんに頼んで手入れをしてもらいながら、いろいろ教えてもらっています。木や植物のことはあまり詳しくなかったのですが、知識も増えてきました」
ミョウガ、シソ、バジル、枝豆、大豆など、家庭菜園で収穫したものは料理に活用。気候のいい時は、庭に置かれたベンチとテーブルで、庭を眺めながらお茶を飲むのも楽しみなのだそうだ。
食もインテリアもシンプルに
ダイニングの中央には、古道具屋で見つけた大きなテーブル。その上には、前のこの家の住人であるアメリカ人のガラス作家が残していった、ガラスシェードの素朴なランプが吊られている。北側の窓の下には、友人が作ってくれた、アイアンと無塗装の板で組まれた素朴な棚があり、その上に、お気に入りの作家ものの食器をディスプレイ。
「ほとんどがもらいものと拾いもので成り立っている家なんです」
その飾らない素朴さと温かみが、この家に人を招き入れるのかもしれない。自宅で開催する料理教室も大人気だ。
「キッチンは収納があまりなかったので、棚を取り付けたりしました。なるべくものを増やさないようにして、必要なものだけをよく考えてから買うようにしてますね」
タッパーなどは同じ種類のものを揃えて、スタッキングすることですっきりと。キッチンの台は奥行きが浅く、ガスコンロが置けなかったので、友人から借りた年代もののコンロを2台。そのキッチンから生み出される料理は、素材の良さをそのまま活かした、自然志向のものだ。
「そのものの味がしっかりしていれば、特別な味つけはいらない、というのが辿り着いたところですね。お塩やオリーブオイルだけでも充分おいしいです。手を加えずに素材の味を楽しむこと、自然にあるものをおいしく食べる、というのが教室のテーマです」
人と人がつながる街
自然志向の食は、毎日の生活にも活かされている。朝は手作りのグラノーラに豆乳かヨーグルトをかけたものか、新鮮な野菜や生フルーツのサラダが基本だとか。その食材は、鎌倉の市場や自然食品の店で購入。シンプルな食と生活を愛する赤城さんが、この街での暮らしを楽しんでいる様子が伺える。
「食に関しても満足していますが、人と人との距離が近いことが鎌倉の魅力なんです。いつもべったりするわけではないんですが、自転車でいける距離に住んでいる友人が多くて、たまに誰かの家に集まったり、そこで出会った人とまた友達になったり。そんなほどよい距離感、街の大きさが好きですね」
この日も鎌倉で知り合った友人と、夕方からバーベキューへ。人を招き合える環境が、豊かな生活をもたらしてくれる。