Column
新しいコンビニ-1-社会貢献につながる
TRUNK(STORE)
私たちの暮らしに欠かせない存在となったコンビニエンスストア。時代が進むにつれ、商品やサービスも多様化している。今回は独自のコンセプトで注目を集める新しいコンビニを紹介。前編は渋谷の「TRUNK(STORE)」へ。
今年5月、渋谷のキャットストリート近くに誕生した「TRUNK(HOTEL)」は日本初の「ソーシャライジングホテル」として国内外で高い注目を集めている施設だ。ソーシャライジングとは等身大の社会貢献を指す言葉で、客室のアメニティや施設内の什器などにリサイクルやアップサイクル商品を採用するほか、障がい者支援団体やLGBT団体と共同で作られているアイテム、地域企業の商品を扱うことで、利用客がおのずと社会貢献ができるという仕組みをとっている。施設内には全15室の客室やイベントスペース、メインダイニングやラウンジ、串焼き屋を有しており、宿泊だけでなく一般客にも利用しやすい環境を整えている。中でも、多くの人がより日常的に通える店として人気を集めるのが「TRUNK(STORE)」だ。ここでは食べ物や飲み物、ホテルのアメニティなどラインナップしているアイテムのすべてがソーシャライジングにつながっている。その基準は、健康、環境、ダイバーシティ、ローカルファースト、文化という5つのキーワードだ。
「健康」は安心で安全な食材で作られた食べ物を扱うことを重視して選ばれたアイテムを指す。コールドプレスジュースで作られたアイスキャンディーや、オーガニック素材など原料にこだわり、見た目にもこだわったアイテムが並ぶ。「環境」はリサイクルやアップサイクルによって生まれた商品のこと。たとえば、廃棄された蛍光灯を使って生まれたグラスや、使われなくなった食器類を粉砕して再生したマグカップ、サンダル工場で出た端材ゴムから作られたビーチサンダルなどだ。これらは実際に客室内でも採用されており、ストアで購入して帰るゲストも多いのだとか。また、小ロット・少量生産のプロダクトも積極的に採用し、コンビニエンスに代表される現在の大量廃棄社会への疑問も投げかける。「ダイバーシティ」は、障がい者自立支援団体やLGBTの支援団体と共同で作られている食べ物やアイテムを積極的に取り扱うことを指している。加えて、TRUNK(STORE)含めホテルの売り上げの一部は、それらの団体へ寄付し、次の活動へとつなげる取り組みも行う。
「ローカルファースト」とは地元の地域活性化につながることを指す。代々木上原の人気店「ポタスタ」のサンドイッチや、無添加にこだわる恵比寿の人気レストラン「わたりがらす」の弁当やおにぎり、新鮮な野菜をたっぷり使った「サラド」のサラダなど、渋谷界隈の人気店の味が揃う。また、渋谷で採取されたはちみつを販売するなど、地域に密着し、渋谷を中心とした街全体を盛り上げる目的がある。老舗の「フルーツパーラー西村」のドライフルーツはTRUNK(STORE)のオリジナル。ここの店舗でのみ購入できるスペシャルパッケージだ。店内で購入した商品は、ホテルのテラスやラウンジで食べることができるので、ランチやカフェの時間帯は近隣で働く人を中心に多くの人で賑わう。「文化」はメイドインジャパンのアイテムに注目した、ユニークなスーベニアアイテム。かまわぬで作ったオリジナルの手ぬぐいや、藍染めユニット「buaisou」が製作したけん玉など、珍しい土産物が並ぶ。自分らしく、無理せず社会を少し元気にすることをコンセプトに、独自の商品構成、サービスを提供しているTRUNK(STORE)。今後も多様な貢献のスタイルを提示していく。