Interior

アトリエショップ-2-ギャラリーのような
羽根木の森の「08book」

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上質な素材で織りなす、シンプルでミニマムなウェアブランド「08sircus」と「kiminori morishita」デザイナーの森下公則さん。彼が店主を務める、ギャラリーのようなアトリエショップ「08book」が世田谷区羽根木に誕生した。ここでは服だけでなく、国内外の作家の陶磁器、ヴィンテージ家具や照明、本などさまざまなアイテムを取り扱う。そのどれもが一つずつ丁寧に作られた実直なプロダクトばかり。森下さんとともにこの空間を作り上げたクリエイターたちにも注目して紹介する。

ライフスタイルショップと
ギャラリーの中間

京王井の頭線東松原駅から歩いて約5分。大きな木々に囲まれた白壁の建物「IGH(インターナショナルガーデンハウス)」に誕生したのが、ファッションデザイナーの森下公則さんが店主を務めるアトリエショップ「08book」だ。「08sircus」のウェアほか、今秋から復活する「kiminori morishita」のウェアも展開。服だけでなく、森下さんが信頼するクリエイターたちが集結し、それぞれの視点でセレクトしたアイテムも並ぶ。フラワーベースやオブジェなど小物のセレクトを担当したのは、長年「08sircus」のスタイルブックでスタイリングを担当してきたスタイリストの二村毅さん。家具のセレクト及びオリジナル家具の制作には中目黒「HIKE」のオーナー須摩光央さん、アートブックのセレクトは「limart」の中島祐介さん、庭の監修は広尾の「Plant’s Planet Garage」のオーナー、西川かをりさんが行った。
彼らとともに店を作り上げるにあたり「08book」では「ライフスタイルショップ以上ギャラリー未満」というコンセプトを掲げた。日常使いのアイテムというよりも、訪れる人の感覚に訴えかけるような佇まいが美しいものを選ぶことを重視したという。訪れる人にとっては服を選びに行く気軽さで、貴重な陶磁器やアートブック、ヴィンテージ家具と出会える場となっている。また、「SIMONE」のムラカミカイエさんがデザインを手がけたウェブサイトではECショップを開設。ここでも「08book」のアイテムを購入することができる。


IGHは木を囲むように建てられていて、外から見ると森の中に建物が建っているように見える。大きな木には鳥や虫が羽を休めに訪れるという。
IGHは木を囲むように建てられていて、外から見ると森の中に建物が建っているように見える。大きな木には鳥や虫が羽を休めに訪れるという。
以前はフローリングだった床をモルタルに変更した。それ以外はほとんど手をつけず本来の内装を生かした。
以前はフローリングだった床をモルタルに変更した。それ以外はほとんど手をつけず本来の内装を生かした。
大きなガラス戸からは西川さんがスタイリングした美しい庭が眺められる。ひときわ大きい木は江戸時代から生えている紅葉と杉。それと共生するようにバショウや台杉の木などが新たに植えられた
大きなガラス戸からは西川さんがスタイリングした美しい庭が眺められる。ひときわ大きい木は江戸時代から生えている紅葉と杉。それと共生するようにバショウや台杉の木などが新たに植えられた。

さまざまなアイテムを
共存させる普遍的な空間

「08book」ではアイテムをセレクトするにあたり「ブラック&ホワイト」と2つの色にも焦点をあてた。2色は相反する強い色だが、そのどちらをおいても成立するような普遍的な空間にする目的があったという。色だけに限らず、ここでは古いものと新しいもの、東洋と西洋、プリミティブとモダンなど、さまざまな相反するものを置き、共存させている。黒の陶胎漆器や白磁の作品で知られる日本の若手陶芸家、安齋賢太さんの作品がある一方で、スウェーデンで活躍したカール=ハリー・スタルハネのような往年の作家の作品も並ぶ。

また、日常使いしやすい器よりも花器やオブジェをセレクトしているところにも、ギャラリーのような空間を目指す「08book」らしさが表れている。また、陶磁器だけに限らず、真鍮、石、木などさまざまな素材のアイテムも取り入れて、幅広く暮らしの彩り方を提案する。


スウェーデン王室御用達の真鍮ブランド「SKULTUNA」のジュエリーボックスやオーストリア・ウィーンで設立された「Carl Aubock」のキーリングなど海外の老舗ブランドにも注目したい。
スウェーデン王室御用達の真鍮ブランド「SKULTUNA」のジュエリーボックスやオーストリア・ウィーンで設立された「Carl Aubock」のキーリングなど海外の老舗ブランドにも注目したい。
白の花器は東洋の影響を色濃く感じられる、カール=ハリー・スタルハネのもの。横に並べた巨大な石はインドのシバリンガム。
白の花器は東洋の影響を色濃く感じられる、カール=ハリー・スタルハネのもの。横に並べた巨大な石はインドのシバリンガム。
大理石の時計と小物入れはデンマークのブランド「MENU」と「Nordstjerne」。大自然に着想を得て、大理石のみで作られたキャニスターなどを展開。
大理石の時計と小物入れはデンマークのブランド「MENU」と「Nordstjerne」。大自然に着想を得て、大理石のみで作られたキャニスターなどを展開。
フランス人作家ジャック&ダニ・リュエラン夫妻の作品。色や形に独特のニュアンスがあり、日本にも多くのファンがいる。
フランス人作家ジャック&ダニ・リュエラン夫妻の作品。色や形に独特のニュアンスがあり、日本にも多くのファンがいる。


安齋賢太さんの陶胎漆器の作品。石のような質感だが、持つととても軽い。
安齋賢太さんの陶胎漆器の作品。石のような質感だが、持つととても軽い。
こちらも安齋さんの作品。マットなテクスチャーが印象的な白磁。
こちらも安齋さんの作品。マットなテクスチャーが印象的な白磁。


飾る文化が息づく場所

「08book」では、ハンス・J・ウェグナーやニール・ヤンセンのヴィンテージ家具ほか、パオラ・ナヴォーネ率いるイタリアのインテリアブランド「ジェルバゾーニ」の家具も並ぶ。「ジェルバゾーニ」はクラシックさとモダンさを持ち合わせたスタイルに定評があり、日本に2013年に上陸して以降、国内でも高い人気を誇るブランドだ。また、「08book」オリジナルの家具も制作している。ウェグナーのソファと合わせたテーブルは、ナチュラルな木目が引き立つ樟の木の天板と真鍮の脚を組み合わせたもので、モダンなスツールとも相性がいい。店内にところどころに配された照明は「FLOS」。気鋭のデザイナーとタッグを組みながら、スタイリッシュな照明を数多く生み出しているイタリアの老舗メーカーだ。130m2に及ぶ広い店内は大小さまざまなアイテムがバランス良くゆったりと並んでいるのが印象的。そこにはクリエイターそれぞれの美意識が随所にちりばめられている。何気なく置かれた石や草花も空間を彩る重要なアイテム。飾る文化、ディスプレイの妙にも注目しながら「08book」の世界観を堪能してほしい。


中央に置かれたテーブルが「08book」オリジナル。ハンス・J・ウェグナーのヴィンテージソファともすんなりとなじむ。
中央に置かれたテーブルが「08book」オリジナル。ハンス・J・ウェグナーのヴィンテージソファともすんなりとなじむ。
ジェルバゾーニのスツールを照らす「FLOS」のString light-Cone head。黒いコードは空間に合わせて自由にレイアウトが可能。
ジェルバゾーニのスツールを照らす「FLOS」のString light-Cone head。黒いコードは空間に合わせて自由にレイアウトが可能。
「08book」という店名は価値あるものを“記録し伝える”という意味を込めて名付けた。
「08book」という店名は価値あるものを“記録し伝える”という意味を込めて名付けた。


08book
東京都世田谷区羽根木1-21-12 Hanegi IGH Forest House #Q
03-5329-0801
11:00〜19:00
定休日:月・火・水(臨時休業日あり。HPにて確認)