Interior

紙の専門店-1-「PAPIER LABO.」で
見つける心地よい紙文具

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紙と紙にまつわるプロダクトを扱う店「PAPIER LABO.」が昨年11月、千駄ヶ谷から神宮前へ移転した。装い新たになった店の魅力を紹介する。

オープンは2007年。「PAPIER LABO.」は当時、ランドスケーププロダクツに在籍していた江藤公昭さんが開いた店だ。きっかけは「活版再生展」という企画展だったという。当時、姿を消しつつあった活版印刷に焦点をあてた展示で、その技術を知らなかった人たちからも多くの関心を寄せられた。そこで手応えを感じた江藤さんは、その魅力をこれからもきちんと伝えたいと、活版印刷と紙、紙にまつわるプロダクトを扱う店を開く。場所は、ランドスケーププロダクツが倉庫として使っていた小さな空間。当初は「数ヶ月続けばいい」と思っていたという店は、徐々に人々の間で知れ渡っていく。活版印刷を初めて見る人も、その独特の味わいに惹かれ、名刺などたくさんのオーダーが途切れることなく入ったという。その後もオリジナルアイテムやアーティストとのコラボ商品などさまざまな取り組みを重ねてきた。昨年11月11日には、開業の地、千駄ヶ谷から神宮前に移転。以前の店より2倍近く広くなった空間では、オープン当初から変わらず、印刷と紙、その周辺にあるものの魅力を伝えている。


原宿駅から徒歩8分ほど。北参道駅からも徒歩圏内の明治通り沿いに建つ。
原宿駅から徒歩8分ほど。北参道駅からも徒歩圏内の明治通り沿いに建つ。

天井を抜いたら4mほどの高さになったという店内。面積以上にゆったりとした空間に。
天井を抜いたら4mほどの高さになったという店内。面積以上にゆったりとした空間に。

新しく店を作るにあたって、内装には古いものや既製品は使わないようにしたという江藤さん。昔から好きだったというピーター・ズントーやル・コルビジュエなどのスイス建築からヒントを得て、ストイックでありながら心地の良い空間が生まれた。ここに並ぶ商品の約4割はオリジナル商品。国内外のアーティストと一緒に作るプロダクトも多い。独特の筆致でほどよく力の抜けた作風が人気の平山昌尚さんや、シンプルなモノトーンで描く温かみのある表情のイラストにファンが多いNoritakeさんなどと自由にものづくりを楽しんでいる。また、印刷と加工の6つのプロ集団からなる印刷加工連のアイテムもラインナップ。「ななめリングシリーズ」は書くときに邪魔にならないようリングがななめに入ったノートで、発売以来支持を集めるアイデア商品。これまで無地のみだった中身の本文紙に罫線とドット方眼が、表紙にはグレーとグリーンが加わってバリエーション豊かになった。


カウンターはアアルトのStool60から着想を得て、リノリウムで作ったオリジナル。店の正面はオリジナルのカード什器を作り、全ラインナップが一目でわかるように。
カウンターはアアルトのStool60から着想を得て、リノリウムで作ったオリジナル。店の正面はオリジナルのカード什器を作り、全ラインナップが一目でわかるように。
印刷加工連のRING NOTEはA5サイズのメモとノートサイズの2種類。表紙は劣化しづらい合成紙だ。新たに加わったドット方眼や罫線は建築関係の人を中心に人気があるという。
印刷加工連のななめリングシリーズはA5サイズのメモの2種類。表紙は劣化しづらい合成紙だ。新たに加わったドット方眼や罫線は建築関係の人を中心に人気があるという。
平山昌尚さんと作ったオリジナルダンボールは店舗移転をきっかけに作られたもの。全面に平山さんのアートワークが施されている。そのまま置いておくだけでも独特の存在感を放つ。
平山昌尚さんと作ったオリジナルダンボールは店舗移転をきっかけに作られたもの。全面に平山さんのアートワークが施されている。そのまま置いておくだけでも独特の存在感。
「現代に適した“包み方”を考えるギフトのための新しいブランド」をテーマにした、山本考志さんのブランド「HOW TO WRAP」のボックス。モダンデザインから影響を受けた規則的なパターンの図案が特徴だ。
「現代に適した“包み方”を考えるギフトのための新しいブランド」をテーマに山本考志さんが手がける「HOW TO WRAP_」のボックス。モダンデザインから影響を受けた規則的なパターンの図案が特徴だ。
張り子作家、前田ビバリーさんが手がける鳥のオブジェは酉年にちなんで作られたもの。並べておくだけで空間に柔らかさをもたらしてくれる。
張り子作家、前田ビバリーさんが手がける鳥のオブジェ。子どもが食べ物を喉に詰まらせないように古くから親しまれている、おまじない玩具。

江藤さんのコレクションが飾られたスペース。「家モチーフが好きなので自然と集まります」。
江藤さんのコレクションが飾られたスペース。「家モチーフが好きなので自然と集まります」。

店内には海外で見つけたアイテムも多い。その出会いは「偶然」ということも少なくない。ドイツ・ベルリンでは以前から取引のあるステーショナリーショップ「LUIBAN」で、気鋭のアーティストやスタジオを紹介してもらった。独自の審美眼をもつこの店は、ユニークなアーティストが集まる磁場で、さまざまなアイテムとの出会いがあるという。また、昨年夏に向かったスイスでは、デザインスタジオ「Biernvenue Publishing」を知ることとなった。彼らは毎回設けたテーマを深く掘り下げ、そこから膨らませたイメージをリソグラフという印刷技術でポストカードなどを作っている。粒子の粗い印刷技術で作られたカードには独特の佇まいが宿り、シーズンを重ねるたびにファンを増やしつつある。
このように国内外問わずさまざまなものを扱う店には、日本人はもとより欧米、アジア問わず海外からの訪問客も多い。「外国人の方々が一様にして言うのは日本の紙の質の高さ。店に入るとじっくりと物と対峙している姿が印象的で、アーティストが有名か無名は関係なく、自分がいいと思ったものを買っていかれます」と江藤さん。今後もユニークなラインナップで、世界中の人々に、心地のいい紙のある生活を伝えていく。


LUIBANのCopper Tapeはアルミホイルのような薄さの銅のテープ。手の脂や酸化により経年変化が楽しめるアイテムで、手でちぎった時に出るシワの表情もユニーク。
LUIBANのCopper Tapeはアルミホイルのような薄さの銅のテープ。酸化により経年変化が楽しめるアイテムで、手でちぎった時に出るシワの表情もユニーク。

Bienvenue Publishingのポストーカード。今回のテーマは「ルーツ」で、メンバーの一人の祖先である中国から着想を得て、金魚がモチーフになったものもラインナップ。
Bienvenue Publishingのポストーカード。「ルーツ」がテーマのシリーズには、メンバーの一人の祖先である中国から着想を得て「石」や「金魚」がモチーフになったものがラインナップ。

PAPIER LABO.
東京都渋谷区神宮前1-1-1 原宿タウンホーム1F
03-5411-1696
11:00〜20:00
月曜休