Interior
春の花を見つけに行く-1-花と人をつなぐ
千駄ヶ谷「VEIN」
今月は、昨年オープンした人気のフラワーショップ2軒を紹介する。前編は、感度の高い店が多く立ち並ぶ千駄ヶ谷の「VEIN」。
人気のセレクトショップやアパレル会社が立ち並ぶ、千駄ヶ谷。特に、原宿駅と北参道駅の両方からアクセスしやすい千駄ヶ谷3丁目は駅周辺の喧騒から少し距離を置き、落ち着いた空気が流れるエリアで、〈PLAYMOUNTAIN〉や〈TEMBEA〉など感度の高い店が多く集まっている。ここに昨年10月にオープンしたのがフラワーショップの〈VEIN〉だ。10坪の店の中に、NY発アパレルブランドを中心に紹介するショップ兼ショールーム〈THE MOTT HOUSE TOKYO〉と共同でスタートした。〈VEIN〉を展開するのはフローリストの山口香織さん。理想的な広さだったという10坪の店は、手前が〈VEIN〉、その奥に〈THE MOTT HOUSE TOKYO〉とゆるやかに続く。壁は自分たちで塗り、棚やカウンターなど必要なものだけ職人に依頼した。棚は無塗装、床はもともとあったタイルをはがし、モルタルをそのまま生かした。最初から全てを作り込まず、必要なものを足したり引いたりしながら、心地のいい空間を作っている。
「珍しい花が多いですね」とよく言われるという〈VEIN〉のラインナップ。そこには山口さんの好みが色濃く反映されている。決して広くはない店だからこそ、自分が本当におすすめしたいその時々の花を揃えるようにしているという。この時期はデルフィニウム、スイートピー、ポピー、ラナンキュラスなどが店を鮮やかに彩る。チューリップやラナンキュラスなど私たちになじみ深いものも花弁の形や色が単調なものではなく、個性的な形をしていたり、数種類の色が混在しているものを取り扱い、ゼンマイやバルビネラなど形がユニークなものも揃えている。それは山口さんが手がけるアレンジにも通じていて、花が単調になりすぎないように、実や茎など面白い形を混ぜて、アンバランスだがまとまりがある感じに仕上げるという。その絶妙なバランス感覚にファンが多く、オーダーは基本的に贈る人のイメージと色を伝えるだけであとはお任せ、という客が多いという。また、花だけでなく、花瓶やキャンドル、チョコレートなど花と一緒に合わせて届けたいアイテムも揃え、プレゼントを提案している。
山口さんは独立する前、原宿のフラワーショップ〈THE LITTLE SHOP OF FLOWERS〉に約6年間勤務していた。実はそれまで花屋での職務経験がなかった彼女は現場に立ちながら、一から花の名前や特徴を覚えていったという。〈THE LITTLE SHOP OF FLOWERS〉にはマニュアルやルールは一切なく、自分で考えながら制作する必要があり、それが感性を磨く近道になったと過去を振り返りながら話す。そうして昨年の夏に独立。活動を始めるにあたって、考えたのが名前だ。植物の構造の中でも特に好きだという葉脈を意味する〈VEIN〉を店の名前にしようとすぐに決めた。茎と連結し水や養分をつなぐ大切な役割を果たす葉脈のように、花を介して生まれるつながりを大事にしたかったからと山口さん。それは、現在、ともに店を営む〈THE MOTT HOUSE TOKYO〉も同様だ。「ニューヨークと東京、ふたつの街をつなぐ」をコンセプトにしたこのショールームでは、日本ではまだ知られていない、気鋭のブランドを幅広く取り扱っている。主にNYブランドが多いが、縁を大切にしているというディレクターの柴田麻莉さん。そのほとんどが、デザイナー自らが物作りをしているものという。そうして生まれたアイテムひとつひとつのこだわりをここで丁寧に伝えたいと話す。お互いにそれぞれのファンを持つ花とアパレルのショップ。今後はジャンルの垣根を飛び越えて、新たなつながりを広げていきそうだ。
VEIN
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-27-8
03-6325-2593
12:00〜19:00
不定休
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-27-8
03-6325-2593
12:00〜19:00
不定休