Interior
春の花を探しに行く-2-注目エリア、松陰神社前の
フラワーショップ「duft」
昨年5月、松陰神社エリアにオープンした「duft(ドゥフト)」は、フローリストの若井ちえみさんが主宰するフラワーショップ。モダンな空間に色とりどりの花が並ぶ。
松陰神社前駅から徒歩数十秒の場所に建つ「松陰PLAT」は、築50年以上の2階建木造アパートをリノベーションした商業施設。ここの1階に店を構えるのがフラワーショップの「duft」だ。フローリストの若井ちえみさんが主宰する店で、昨年10月にオープンした。松陰神社駅エリアは都心にほど近いにもかかわらず、昔ながらの商店街や個人店が多く、ゆったりと落ち着いた空気が流れる場所。近年は個性的な店も続々とオープンし、注目を集めている。長年この街に暮らす若井さんは、自身の店を持つならこの街で、と決めて物件選びを始めたという。「この街に暮らす人、働く人はもちろん、わざわざduftに来たくなるような店にしたかった」。若井さんの感性で選ばれた花々は、色や形など珍しい品種のものが多く、控えめでありながら独特の存在感を放っている。「花は1本あるだけでも空間を豊かにしてくれるもの。ふだん花を買ったり、飾ったりする習慣がない人もここに来て“これなんだろう、珍しいな”と手に取るきっかけになればと思います」と話す。できるだけ一人一人のお客様との会話を大事にしたいと言い、どういう花瓶に飾り、どこに置くのか、どういう人へ贈るのかという背景をしっかりヒアリングして提案している。
「duft」はドイツ語で香りの意味。慌ただしい生活を送る人にも、ゆっくりと深呼吸をして花の香りを楽しむ時間があれば、と名付けたという。店内には色とりどり、個性的な花々が中央のテーブルにずらりと並ぶ。花を引き立てているのは、ギャラリーをイメージして作ったという空間だ。「極力無駄な装飾を削ぎ落とし、無機質な空間にすることで、女性っぽくなりすぎないようにしたいと思い、空間設計はデザイナーの笹谷崇人さんに依頼しました」という。笹谷さんからドイツの近代建築をイメージとした空間にしようと提案があった。スチール製のサッシュや家具などは全てこのためにデザインしてもらったもの。また、SOUND CoUTUREのyasuharu OKOCHIさんに選曲してもらったという音楽が演出にも欠かせない。「同じ花でも、飾る場所、飾り方によって全く違う表情になる。そういう意味では、空間も音楽も大事で、ここにある花が一番「duft」らしい表情になるように心がけています」。
中央のテーブルに並べる花々は360度全方向を向いているので、どこから見ても美しいよう、毎日花の状態を確認しながら、丁寧に生け替える。「同じような種類や色の花をまとめておくのではなく、花それぞれの特徴をきちんと把握して、隣合わせにした時にお互いが引き立てあうような並べ方を意識しています」と若井さん。同系色でまとめてしまいがちな花の選び方も、ここに来ると新鮮な組み合わせにハッとすることが多い。若井さんはアレンジを作る時も同じように、一色や同色でまとめすぎず、さまざまな色、形の花を組み合わせることで、花それぞれの魅力を引き出したいという。また、茎や葉、花弁のやわらかな動きをじゃましないことも大事といい、ざっくりと束ねることで自然な花のたたずまいを愛でる楽しさを提案している。
「夏、秋、冬それぞれに良さがありますが、春の花が特に好きです」と若井さん。はじけるようなみずみずしさがあり、繊細なディテールや、絶妙な色のグラデーションを持つものが多いという。この日は、珍しいパープルのチューリップやピンクのアネモネ、真っ赤なアンダルシアなど鮮やかな色合いの花がラインナップしていた。また、オランダやベルギーのフラワーベースやアンティークマーケットで見つけたという1点もののフラワーベースなどもラインナップ。花と合わせて選ぶ楽しみもある。