Renovation
建築家夫妻が自邸を増改築既存の建物を分割し、ガラスで
つないで風と光をとりこむ
建築家の篠原勲さん、今村水紀さんご夫妻の自邸は、築約30年の木造住宅を増改築したお宅。5歳のお子さんと、お母さんの、家族4人の住まいだ。
「当初、お母さんが1階に部屋を望んだため、増築は不可欠でした。周囲を家で囲まれている旗竿敷地ですが、風や光を取り込んで快適に暮らしたい。けれども周囲に圧迫感を与えるような大きな建物にはしたくない。それらの条件をクリアすべくスタディを重ねる中で、ふとひらめいたのが既存の建物を分割するアイディアでした」と勲さん。
「当初、お母さんが1階に部屋を望んだため、増築は不可欠でした。周囲を家で囲まれている旗竿敷地ですが、風や光を取り込んで快適に暮らしたい。けれども周囲に圧迫感を与えるような大きな建物にはしたくない。それらの条件をクリアすべくスタディを重ねる中で、ふとひらめいたのが既存の建物を分割するアイディアでした」と勲さん。
まず既存の住宅を2つに切り分け、隣に小さな棟を増築。できあがった3つのワンルームの棟をガラスのスリットでつなぐことで、建物のボリューム感を抑えながら、たっぷりとした日差しと解放感、そして家族4人で暮らせる床面積を確保することができた。その過程は模型の動画を見れば一目瞭然。
「木造は、切ったり足したりができる構造。今回の設計ではその自由さを実感することができました」と水紀さん。
家の中に“庭”を取り込む
まん中の棟は2層吹き抜けの“室内庭”とした。
2棟の壁は自分たちで白く塗装したが、真ん中の室内庭の棟はシナベニアのまま。屋根の木目がそのまま見える天井や、ツル植物のテイカズラがワイルドに下がる様子は、建物と建物の間にぽっかりとあいた広場のようだ。
「この棟だけ外のようにしたかったので、床面を下げ、切断した部分はあえて溝のように残しています。洗濯物をここで干したり、大らかに庭っぽく使っています」と水紀さん。
「夏はトップライトの光を遮るために日よけをかけるのですが、冬は暖まった空気が逃げないように室内庭とリビングの間にカーテンをかけます。季節ごとに少しずつ変わる家の表情も楽しんでいます」と勲さん。
この家に越してから約2年。想定内ではあったが、隣の空き地に家が建ち、四方を家で囲まれた。それでも室内庭のあるこの家の気持ちよさは変わらない。
二人で主宰する設計事務所を他に借りたので、書斎スペースを子ども部屋にする予定。お母さんと夫婦の寝室の場所を交換。ダイニングテーブルを置く位置も変わった。
「必要なものがあれば加えたりはずしたり、変更は住みながらずっとやっています。アプローチに小屋を建てたいと思っていたのですが、オリーブの木を移植したので場所がなくなってしまいました(笑)」
変わらないもの、変わりゆくもの。もともと切って増やして生まれたこの家には、変化を受け入れる柔軟さがある。