Renovation
海を愛する建築家の自邸海まで3分。カリフォルニア
スタイルのヴィンテージハウス
築40年の平家をリノベーション
建築家の『カリフォルニア工務店』の岩切剣一郎さんの自邸が2015年の12月に完成。数々のカリフォルニアスタイルの家を手がけてきた岩切さんの、満を持しての自邸であり、また自分の家だからこそできる設計の実験場でもある。
茅ヶ崎の築約40年の平屋をリノベーション。かつて画家が住んでいたアトリエ兼住居は、建築家が設計した三角屋根の吹き抜けが気持ちのいい建物だ。
しかもサーフポイントまで徒歩3分。サーファーでもある岩切さんにとって、絶好の立地。
「家の前の道路は近所のサーファーたちの通り道です。波がいい日はベッドの中にいても、早朝からザワザワと海に向かうサーファー達の気配でそれとわかります(笑)」
中と外をゆるやかにつなぐカバードポーチ
『カリフォルニア工務店』が手がけた数多くの家で採用されているカバードポーチももちろん作った。デッキと屋根で作るアウトドアリビングのようなスペースだ。ブランコに揺られてくつろいだり、仲間とバーベキューを楽しんだり。
「ご近所の方とも自然とここで会話してます」
昔の日本の家で言う縁側のような社交スペースにもなっている。
カバードポーチの一角にはシャワーも完備。海から帰ってきたらここでシャワーを浴びて潮と砂を落とし、そのまま勝手口から風呂場に直行できる動線を確保。シャワーはお湯も出る。
「冬にあたたかいお湯を浴びながら、ウエットスーツを脱げるシアワセ。外のシャワーにもお湯、おすすめです!」
道路から見えないように板張りの目隠しを設置し、内側にはウエットスーツなどを掛けておくことができるハンガーラックを取り付けてある。勝手口のドアはテンキーでロックを解除できる。海に家の鍵を持っていかずに済む。
美しい緑の芝はなんと人工芝を採用。日照が足りない場所でも海の近くでも冬でも、人工の芝ならいつも青々。しかも草取りや芝刈りなどの手間いらず。今はとても自然な人工芝が作られている。
「実際にカリフォルニアでも多く採用されています」
ディティールにこだわった家づくり
岩切さんの家のテーマはカリフォルニアスタイルのヴィンテージハウス。インテリアにはミッドセンチュリーな雰囲気が色濃く漂う。
部屋を広く見せる鏡の壁や、キッチンの把手などに、ミッドセンチュリーの家具に使われる色を再現。ソファーのブルーやキッチンの扉の色などにも当時の家具らしい色をチョイス。なんとキッチンのダイニングの照明の傘は、もともとここにあったものを黄色にペイントしたのだそうだ。床はクラシックな雰囲気のヘリンボーンに貼ってある。
リビングの奥のワークスペースは、ここでスタッフとミーティングをしたり、クライアントとの打ち合わせを行うこともあるそうだ。
岩切家は剣一郎さん、由美子さん、想南(そな)ちゃんの3人家族。想南ちゃんのお部屋のドアを開けると、ベビーピンクのプリンセスな空間が広がる。子ども部屋は思いっきりかわいらしく! そのメリハリにもカリフォルニアの家らしさを感じる。
壁にプリンセスのヴェールのアートペイントをしてくれたのは、アーティストの須磨阿弥さん。
快適な暮らしのための数々のアイディア
岩切さんが設計をする際に大切にしている、快適な暮らし。ウォーキングクローゼットや玄関収納、パントリーなど、収納スペースをしっかり確保すれば、モノにわずらわされるストレスも減る。
もともとの家にあった出窓を利用した洗面台の引き出しの中には、ドライヤーのコンセントを設置しておくことで、コンセントを抜き差しする手間がかからず、使い終わったらそのまましまえるので、洗面台周りがいつもスッキリ。細かな工夫をしておくことで、日常生活が快適になる。
古い一軒家は寒いという印象があるが、断熱対策も万全だ。壁、床、天井、すべてに吹付けの断熱材をすきまなく入れ込み、すべてペアガラスに替えた。
「発泡ウレタンの断熱材は、既存の建物にすき間なく断熱材を入れることができるので、リノベーションには最適な工法です。これに温水の床暖房とパネルヒーターを組み合わせて、家全体がまるで魔法瓶の中にいるように温かくなりました」
洗面所にも床暖房が入っており、天井のファンを回せば、ここが洗濯物の乾燥室に早変わり。
岩切邸はカリフォルニアのデザインユニット『Design,Bitches』とのコラボレーションでデザインを進めていった。
「カリフォルニアでいいなと思った建物の多くが『Design,Bitches』が手がけていたので、ぜひ一緒に家を作りたいと思いました。特に家の外壁のカラーリングの提案は素晴らしかったです。カリフォルニアらしい家を彼女たちの力を借りて作ることができました」