Style of Life
好みはニューヨークとパリ2人のこだわりとセンスが
シンプルな空間を見事に演出
「気持ちのいい空間にしたいということと、2人とも映画が好きで、好んで見るのが外国の映画だったりとか、あと、海外のインテリアに強い憧れがあるというのも建築家にお伝えしました」と妻の奈美さん。
海外インテリアに関しては、奈美さんが海外の雑誌から切り抜いた写真を建築家に見てもらったという。「それがいちばん手っ取り早いかなと思って、切り抜いたものをスクラップブック的に1冊のノートにまとめたのをお見せしました」
ニューヨークとパリのテイストも入れたい
この家の特徴的な縦長の窓は建築家とのそのあたりのやり取りから生まれたものだという。「海外だと格子になっている窓がけっこうあって、それがおしゃれですよねという話をしたら、このような窓を提案してくれて」と剛史さん。
切り抜き写真などで希望のイメージを伝えると同時に、夫妻の好きなニューヨークとパリのテイストも取り入れたいとリクエストした。
2つの都市の空気感はかなり異なるだけに難しいリクエストだが、どちらかのテイストをメインにするのではなく微妙なバランスを目指したという。奈美さんは「いいとこ取りじゃないですけど、どちらかに偏ってしまうのも違うかな」と思ったという。
奈美さんはパリに代表されるようなヨーロッパっぽいテイストが好みで、それは縦長窓以外にも、幅木とかにも生かされているのではないかという。
さらに、天井の梁の形を見せる仕上げや、パリの屋根裏部屋を思わせる斜めの吹き抜け空間も、建築家が奈美さんのリクエストから汲み取って実現したもののようだ。
リビングに置かれるものがメイン
空間づくりに夫妻で積極的に関わって実現した城野邸だが、「空間ではなく、そこに実際に置かれるものたちがメインとなってこの家をつくっていく」、そんな共通認識が建築家との間にあったという。「箱はシンプルなものにして後はインテリアでがんばっていけばそういう風に近づけますよっていう提案は建築家からいただきましたね」と剛史さん。
シンプルにしすぎると無機質で素っ気ない感じにもなってしまうため、階段の踏み板のエッジを斜めにカットするなど、シンプルな中にも微妙な操作が加えられている。そうしたベースの上にどう味付けするのかは2人のセンスとがんばり次第ということだろう。
その壁の右手にあるメタルラックはフランス製。古いものの表面を磨いたものという。雑多なものを外に出しておくと生活感が出てしまうことから、リビングで必要なCDや文房具などが収められている。
そのラックの上には何十冊もの洋書の背を並べて撮った写真がボードに貼られて立てかけられている。「ペンギンブックスのラッピングペーパーとして1枚いくらで売ってたのを購入したものです。イギリスの雑貨を扱っているお店で買ったんですが、色合いもかわいいくて気に入ってます」と奈美さん。
建築家に紹介してもらったイギリス製のソファはそのやわらやかなテイストがこの空間にとてもしっくりとくるデザイン。そしてそのかたわらには「家全体としては少しハードなテイストも入れた方が合うんじゃないか」とスチール製のアンティークのライトを置いた。こうしたバランスの取り方にも2人のセンスが光る。
第3者から見ても2人の希望が完璧に近いほどの完成度で出来上がっているように感じられるのだが、ご本人たちは、意外にも、理想の空間には「まだ途中」と口を揃えて言う。
よりしっくりと来る空間を焦らず時間をかけてつくり込んでいく、そのようなお2人の気持ちが感じられた。数年後にこのリビングがどのような空間になっているか、ぜひ見てみたいと思った。
設計 こぢこぢ一級建築士事務所
所在地 東京都大田区
構造 木造
規模 3階
延床面積 90.75m2