Style of Life
シンプル&クール無駄を排した空間に、
お気に入りの彩りを添える
色々な場所を体験したい
イラストレーターとして活躍する松尾たいこさんが、ここに住み始めたのは8年ほど前。半地下、1階、2階、2.5階、3階という5層の構造とコンクリート打ちっ放しのモダンな造りが面白い。
「もともと打ちっ放しは好きではなかったので最初は迷ったのですが、夫の方が乗り気で。場所も以前は神楽坂とか護国寺などの古い町に住んでいたのですが、ここはまた全然違う環境です。でも、住んでみるといいところが見つかる感じですね」
桜が咲く緑道を愛犬と散歩するなど、今は、住宅街であるまわりの環境を楽しんでいる。色々な街を旅することが好きな松尾さん。家も旅するように住み替えてきた。
「ここは長く住んでいる方なのですが、好奇心が旺盛なので色々なところに住んでみたくなるんです。全然違う雰囲気のところに行きたくなりますね」
好きなものを最小限に
その住空間は、シンプルに徹している。
「ものが色々とたまっていくのが好きではないんです。持ちものにとらわれて身動きできなくなるのは嫌。高価なもの、一生ものも持ちたくありません。いざとなったらさっと捨てて次に移れるように、いつも身軽でいたいと思います」
従ってインテリアもあまり凝らない、と言うが、オーダーして作ったソファーやアメリカのアンティークランプなど、存在感のある家具が、天井の高い開放的なリビングに映える。
「ものにこだわりはないけれど、嫌いなものは置きたくないんです。好きなものに囲まれて過ごしていたいと思いますね」
意識して集めた訳ではないけれど、気づいたら増えていたというのが、和のアンティーク。大正時代の籐で作られた犬の籠など、何気ない小物が、モダンなインテリアの中に温かな雰囲気を添えている。
半地下のキッチン、庭に面した1階のリビングから、3階の松尾さんの仕事部屋まで。廊下と階段で迷路のようにつながった構造は、ラビリンスの雰囲気。控え目な照明を補うため、夜はキャンドルを焚き、幻想的なムードになるという。コンクリートの壁面は、松尾さんの作品や、好きで集めた作家の絵が彩る。
「インテリアにはこだわらないのですが、仕事柄もあってたくさん持っているのが絵。空間をシンプルにしている分、絵やファブリックで彩りを添えればいいかなと思っています」
メタルと和が調和する
1日のほとんどは、日当たりのよい3階の仕事部屋で過ごす。
「仕事場なので使いやすさを考えてアーロンチェアやボビーワゴン、メタルワゴンなどを選びました。でも、それ以外は温かみがあるものが多いですね。メタリックなものよりも木の素材、洋よりも和が好きです」
機能的な仕事スペースだが、アンティークの船箪笥を書類入れにしたり、世田谷のボロ市で買った火鉢をペン立てにしたり。旅先の海辺で拾ったガラスを、アンティークの入れ物に飾ったり…。
「わざわざアンティークを探しに出かけるということはないです。集めようと思って集めるものもありません。でも置いてあるのは、気に入ったものばかりですね」
ドレッサーとしているスペースの、椅子のクッションには「たいこ」の文字が。
「これは私が幼稚園の時、母が作ってくれたものなんです。たまたま見つけて使っています」
こだわるわけではないが好きなもの、大切なものを散りばめたインテリアが、居心地のいい空間を生んでいるようだ。
身体にいい生活の楽しみ
住空間やインテリアへの考え方と同じく、食生活もシンプルだ。
「無理して食べたくないものを食べなくてもいいかな、と思って。朝は食欲がないので1日2食です。おいしくないもので太りたくはないですし」
毎日の食事を作るのは、ジャーナリストである夫の佐々木俊尚氏。土鍋を使ったり、ル・クルーゼの鍋を使ったり、アイデアを活かしたオリジナルの料理から、生活の楽しみが伝わってくる。
「体をつくるのは食べ物、睡眠、運動だと思っています。体調管理のため、体操も習っています」
広々としたリビングで、マットを敷いて毎日1時間程、骨盤体操をするのが日課。大きな窓から明かりが差し込み、庭の緑が目にやさしい。犬たちも駆け回る、広々とした贅沢な空間での生活が、仕事の原動力になっているようだ。