Style of Life
クールでスタイリッシュ合理性を考え尽くした
内に向けて開く家
中庭から光を取り込む
ガルバリウム鋼板のクールな外観が目を引くA邸。「もともと自分が建築家になりたいくらい、自由に家をつくってみたいというのがあって。色々と希望を設計士さんにお伝えして建てました」。
なじみのあった地域で土地を見つけたAさん。道路に面した立地を考えて、まずこだわったのは中に向けて開く家にすることだった。「バルコニーをつけて外側に開くようにすると、プライバシーが確保できません。かといって四方を囲んでしまうと息苦しい。その点中庭があれば外の光を取り込めて、その上カーテンも要らないと考えました」。ヤマボウシの木が植えられたその一角は、1階の玄関から2階のリビング、3階の寝室まで吹き抜けになり、明るい光を家中に通してくれる。
「角がビシッとしたのがいいというデザイン面と、寝室・洗面・トイレを同じフロアにしてほしいなどの動線面についても希望を出しました。建てた後のランニングコストも考えましたね」。
塗装のメンテナンスの要らない外壁もAさんのリクエスト。色々なところから情報を集め知識を詰め込み、理想の家を完成させた。「10年前に建てたときはモダン志向で、無機質な感じが好きだったんです。今はまた少し変わってきているのですが」。
シンプルに徹する
この家にご主人とふたりで暮らすAさんは5年程前に整理収納アドバイザーの資格を取得。仕事と家事、趣味の時間…、家で過ごす時間は長い。「ダイニングテーブルの座る位置からいつも見えるので、階段が気になって。設計士さんに階段のデザインにすべてをかけて下さいとお願いしました(笑)」。
踏み板と桁だけのシンプルな階段が、吹き抜けの開放感のある空間にアクセントとなっている。キッチン、ダイニング、リビングがワンフロアでつながった2階は、どこを見ても閉塞感がなくすっきり。「住んでみないとどこに何が必要かわからないので、造り付けを最小限にしたんです。収納もたくさん提案されたのですが、全部却下。そうした方が後で自由が利くと思って」。
レンジフードも取り付けなかったというオープンキッチンは余白があり、見た目に重さがない。板だけのスケルトンの棚に、毎日使う必要最小限のものだけが、必要な位置に配置されている。「夫とふたりで料理をするので、ぶつからないようにキッチンはなるべく広く、余裕を持たせました」。
流し台は気に入ったものが見つからなかったので、オーダーして完成。シンクが中央にあること、洗剤ポケット、水切りカゴなど余計なものがないことが希望だった。「色んなものがあってでこぼこしていると掃除がしにくいので。当時は毎日通勤していたので、いかに楽に家事ができるかが大事でしたね」。
暮らしの快適性を考える
リビングダイニングの床材は、こちらも掃除を考えてドイツの工場から取り寄せた。「ヨーロッパの体育館で使われている素材で頑丈なんです。フローリングだと艶が落ちるとワックスをかけ直さないといけませんが、これは必要がないんです。多少の傷や汚れも気になりませんし」。
いかに手をかけずに美しさを保つか、考え尽くしたつくりが、居心地のよさを生んでいる。「決して家事が好きなわけではないのですが、きれいにはしておきたいんです。だから楽をしながらも快適に暮らすにはどうしたらいいか、いつも考えていますね」。
3階の寝室や水まわりも動線を重視し、不必要なものは排除した。「お化粧はベッドルームでするので、洗面には鏡も取り付けませんでした。クローゼットの扉もなくていいかなと。カーテンをかけて仕切っています」。小物などは昔から持っているポーチなどで仕分け。ごみ箱は買い物用紙袋で代用し、そのまま捨てるなど、見事なまでに無駄がない。日常のストレスを軽減する、そんなアイデアを思いつくこと自体を楽しんでいるかのようだ。
住まいへの思い
Aさんが色々なことを発想したり、寛いだりするのは、中庭の開口部から日が差し込むリビング。フロアレベルがダイニングから1段下がったこのスペースは、ソファーに座ると空間に包まれているように落ち着ける。
「季節によって入る光が違うのを感じたり、1日の流れを把握したり。そんなことを感じる時間も楽しんでいます」。最近はパソコンが一緒に並べられるテレビ台を自分で考えてオーダー。完成してくるのを楽しみにしている。「古材を使って作ってもらっているんです。今はどこか古びたものに興味が移ってきていますね」。
骨董市をまわり、古いものを見つけてはインテリアに取り入れることも楽しんでいるそう。「また家を建てるなら今度はどうしたいか、インテリア雑誌などを見ながら考えています。そんな妄想も楽しいですよ(笑)」。住まいへの興味は尽きないようだ。