Style of Life
物語のある家ディティールを作り込み、
映画の世界を表現
古城に迷い込んだようなおもしろさ
まるでヨーロッパの古い城のような異空間……、そんな家が都内屈指の高級住宅街に建つ。
「実写版の映画『美女と野獣』が大好きでよく観ています。あの映画の中のような、驚きに満ちた空間を作りたいと思いました。生活感をできるだけ排除した家を作りたかったんです」
ヨーロッパ各地を訪ねる機会が多いこともあり、古城や、イギリスのパブのような世界観に惹かれるのだという。
エイジングされた壁とアンティークで構成された室内は仄暗い。玄関脇のドアを開けると広い空間が現れ、鎖で縛られたアンティークの鏡がポツンと置かれている。ひとつひとつ形の違うドアからは、今にもドラキュラ伯爵が現れそうな雰囲気だ。なるべく大きく窓をとり部屋は明るく……といった一般的な家作りとは正反対のアプローチだ。
「誰も想像ができないことをやってみたかったんです」
一部屋ずつ違ったストーリーを作る
素材感、光、質感、感触……、ひとつひとつのディティールにこだわることで、ストーリーを感じる空間ができあがる。
アンティークや古材、そして経年変化を楽しめる鉄といった素材が多く使われている。壁はゴツゴツとしたホタテ漆喰にエイジング加工を施してある。
「まだ竣工して半年ですが、年数が経つほどに、味が深まっていくような家が好きです」
部屋は一部屋ずつ物語を作り、まるで映画の中で場面が変わるようなコントラストをつけている。たとえば、仄暗い中で暖かいお湯が張られた水面がゆっくりと揺れる究極のリラックス空間である浴室と、同じ1階にあるトイレは、敢えて目が痛くなるほどの真っ白な蛍光灯の光の空間だ。
鍛冶職人がパーツを手づくり
ディティールにこだわるなら、家で使う部材やパーツも、既製品ではなくオリジナルで作ることになる。特に鉄の経年変化も楽しみたいと考えたこの家は、多くの場所で鍛冶職人が腕を振るっている。なんと、窓も既製品のサッシではなく、すべて鍛冶職人のハンドメイドだ。
カーテンも窓によってすべて違う素材を使い、一枚ずつ表情の違う古木を活用している。1階の部屋のカウンターの下は、アンティークの額縁を並べて壁面を作るというこだわり!
光の演出には最大限のこだわりを
暖かな電球の光を愛するがゆえ、ひとつひとつの光の美しさが引き立つよう、家全体が仄暗い。
「フィラメントが見える電球が好きです。暗がりの中で電球の光が広がる様子が好きなので、それぞれの場所での照明器具のワット数にもこだわっています」
リビングのアンティークのシャンデリアはスペイン製。
「よく見ると、左右非対称なところが気に入っています」
アンティークが揃い、シャンデリアをオーダーでも製作する中目黒の『ラ・シエネガ』には足繁く通ったそう。
2階のトイレの床には、小さなスタンドがいくつも。「最初は大きいシャンデリアを床に転がそうと思ったのですが、小さいスタンドを並べることにしました。発光するキノコ畑のようになったのでとても気に入っているのですが、妻からはいまひとつ不評です(笑)」
「朝と夜、休日にはさらにもう1回くらい入りますね」
24時間風呂なので、好きな時間に入ろうと思ったらすぐに入れるのがいい。
檜を使った浴槽からザバーっと湯を流して入る。照明は最大限に絞る。アロマの香りを楽しんだり、外からの光だけで揺れる水面を楽しんだりも。
「風呂に入りながら、苔を眺められるようにしたいんです。『天空の城ラピュタ』のような、苔生した壁がイメージです」
実は家の外回りの緑化はまだこれから。
「緑化地域内なので早くやらなくちゃいけないんですが。家の中はゆっくりと経年変化を楽しむだけで、これからもほとんど変わることはないと思いますが、外回りはこれからなので、どう緑化できるかが楽しみのひとつです」