Style of Life
衣食住の大切さを考える自然素材にこだわり抜いた
本質的な暮らしの贅沢
クリーンな住まいを目指して
木立に囲まれた大学を中心に、全体が区画整理されたように美しく佇む郊外の街。その一画に「冷えとり」をテーマとする数々の著書を持つ青木美詠子さんと夫のくにぞうさんは1年前、家を建てた。
「夫婦で年を重ねていくうち、持ち家が必要だなと思うようになったんです」。いちばんの課題は化学物質に過敏なくにぞうさんにも安心な家を見つけること。
「新築だとひどく反応してしまうので、最初はマンションも含めて中古を探したのですが、見つからなくて。排気ガスにも弱いので立地も限定されてしまうんです」。
そして、自然素材を使って一軒家を建てることを考える。喧噪の少ないのどかな住宅街に土地を見つけて家づくりがスタート。何事も徹底的にリサーチするという美詠子さんが、ネットや本であらゆる情報を取り集め、自らショールームを回って完成した。
コスト減にも挑戦
「シンプルな箱を形にしてもらえばよかったので、有名な建築家さんにこだわるということはなかったですね。自然素材を扱っている工務店を見つけて間取りを相談しました」。
譲れなかったのは珪藻土の壁と無垢材の床。「床材は能登ヒバの無垢、天井は卵の殻を使ったエッグウォールで、でんぷんが主原料の糊で接着しています。自然素材にこだわると予算がどんどん上がってしまうので、いかにコストを抑えるかも工務店さんに提案してもらいました」。
夫婦ふたり暮らしということもあり建物面積は少し妥協した。「建築面積を少なくするのが、一番費用が安くなると言われ、南北に数十センチ縮めました」。
その思わぬ副産物が庭。「家を少し小さくしたので、南側のお庭がより広くなってさらに日当りが良くなりました。南向きの土地限定で探していたのですが、その必要はなかったですね」。
オーダーで適材適所なものを
くにぞうさんは、集成材の多い大型インテリアショップに入ったりすると、目がチカチカし頭も痛くなるほどの過敏症。細かい部分までこだわって、接着剤のなるべく少ない棚板や樹脂板のドアなど刺激を感じにくいものを選んだ。
「素材にこだわった分、家では何の反応も出ないですね。昼休みにもわざわざ帰ってくるほど、居心地がいいんです」。くにぞうさんのインテリアの好みは、直線的であることと左右対称。2階のベッドルームは、シンメトリーな配置がすっきりとして心地よい。
「僕の仕事スペースは、座った位置から窓に向かって直線的に家具を配置できるようにしたかったんです。スペースの都合で理想通りにはいかなかったのですが」。予備校で国語を教えているくにぞうさんは、仕事スペースで長時間本を読む。そこで椅子は座った時に足が組める高さに設定。無垢材のテーブルは美詠子さんが探して見つけた静岡のヒノキを扱う店で。他にもシェルフとキッチンの棚をオーダーメイドした。
システムキッチンも、業務用の厨房機器を作る遠山製作所にオーダーした。シンクの大きさは、元のシンクに剥がせる荷造り用テープを貼って暮らしてみるといい、と製作所の方に言われて決めたもの。「油煙で汚れるのが嫌なので、吊り戸棚は設けませんでした。ベタベタしやすい場所に日頃使わないものを入れなくても、とずっと思っていたんです。普段使う少数のものは取り出しやすいところに置いています」。
ずっと心地よい家に
庭ではこれから色々な植物を育てていくことを計画中。枕木はメンテナンスを考えてコンクリートの偽木を選択した。「フェンスも塗装をし直す必要のないものにしています。後で手間がかからないように、すべて最初に色々としつこく調べました」。
美詠子さんが奔走して情報を集め完成した家は、シンプルだが心地よさが詰まっている。くにぞうさんいわく「朝、東から太陽が昇ってきたときはシマトネリコの葉っぱに光が当たってキラキラと光り、リビングから庭を眺めるゴールデンタイムが始まります。時間帯や季節によっても楽しめるスペースが違っていますが、家の中で感じるそんな時間が幸せですね」。
以前、身体をこわしたことから冷えとりに辿り着いたという美詠子さん。手作りしたという清潔なガーゼのカーテンからこぼれる光が、衣食住を大切に考えることの大切さを改めて感じさせてくれる。