Style of Life
祖父母の家に暮らす骨董品とポップなアート
豊かな創造性が溢れ出す
和洋ミックスの家
「夫の母方の祖父母の家なんです」。ウォールペインターとして活躍するすまあみさんが、ご主人と5歳の娘さんとともに暮らすのは、都心に近い人気の住宅地。賑やかな駅前から一歩奥に入ると、驚くほど静かで穏やかな環境に包まれる。
「家の裏手は竹薮で。庭にはタヌキも出るんですよ。友人が遊びに来て泊まっていくと、田舎に帰ったみたいだった、と言われます」。
自然豊かな高台の地に、50年以上前に建てられた一軒家。アメリカ滞在中に出会い、一緒に帰国したすまさんご家族は、4年前からここに暮らしている。
「リビングだけ90年代にリフォームされているんです。お茶室だった奥の和室はそのままで、和風と洋風がミックスされたような雰囲気ですね」。
テラコッタのような素朴な色合いの、ベージュのタイルが敷かれたリビングは、たっぷり取られた開口部から明るい光が入り、コロニアルな雰囲気。ジャングルのように生い茂る、窓の向こうの庭の緑が、室内のインテリアに同化する。
年代物を継承して
「入居にあたって、リビングの壁は白く塗り替えました。トイレも、私がベンジャミンムーアの塗料でブルーにペイント。あとはほとんど手を加えずに住んでいます」。
奥の和室はベッドルームと長女・日子(にこ)ちゃんの部屋に。ベッドルームからは獅子脅しのある純和風の庭が望める。「祖父母がお茶を嗜んでいたのでしょうね。炉もありました」。
5歳のお誕生日に日子ちゃんの部屋として独立させた和室は、ベッドヘッド上の空間がポップ。
「押し入れをDENとして活用しようと思ったんです。子供に、壁に絵を描いてもらったらとても楽しい空間になって。家に遊びにくるお友達もみんなここが大好きですね」。
お義母さんが使っていたベッドや、もともとこの家にあった昔ながらの棚や調度品。それらをそのまま大事に活用。時にはあみさんがペイントをするなど手を加えて、生き生きと蘇らせている。
骨董品をアクセントに
「この家には古いものがたくさん残されているので、気分に合わせて取り替えてはコーディネートしています」。大きな甕や鉢、器など、数々の埋蔵品や、骨董市などで買ってきたものを色々と組み合わせて飾り付けを楽しむ。
「古い日本のものがたくさんありますが、全部を和にすることはないですね。でも、そうかといって洋で統一するつもりもないんです。海外生活が長かったので、和風に惹かれるところがあって、ジャンルをミックスするのが好きですね」。
コンセプトは日本に住む欧米人の暮らし。ヴィンテージの日本の収納箱の上に、大きなミラーボールを飾る。そんなコーディネートも「娘が、光が反射するのを喜ぶので」というあみさん。楽しい仕掛けが、明るく居心地のいい空間を生んでいる。
いたずら心を住空間にも
「小さい頃から絵を描くことと、部屋の模様替えが趣味だったんです。ベッドメイクをしてみたり、家具の配置やディスプレイを替えてみたりして楽しんでいました」。NYではライターとして家取材も。それらの経験がまとまって、「ある時、部屋の壁にウォールペイントを施すことを思いついた」というあみさん。NY時代から、現地の人の子供部屋のペインティングを依頼されるようになった。
「ちょっとした、“いたずらしたい気持ち”がスタートなんです。やってみたら楽しくて」。
現在はリビングが仕事の場。大きな紙を壁に貼ると、カラフルな色彩でみるみる楽しい図案が描かれていく。
「娘も絵を描くのが好きみたいで、よく描いています。でも“ママの絵を見て真似した”と言われるのがいちばん嫌で。自分の好きなものを描いていってほしいと思っています」。
ひっそりと時を刻む昭和の日本家屋は、いたずら心と溢れる創造性で満たされている。