Style of Life

豊かな自然を満喫北鎌倉の自然環境を
活かしきった家づくり

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敷地は北鎌倉の山側

敷地は北鎌倉の駅から海とは反対方向に山側へと向かって2kmほどの場所。敷地の裏手の斜面は途中から林にかわる。Yさんがこの土地を探した時のポイントはまず、山に近く、家があまり建て込んでいないという2点だった。

通勤に問題なければエリアは特に限定しなかったという土地探しで、山に近いということで勧められたのが鎌倉のこの場所だった。

「都内のように、窓を開けたらすぐ隣の家があるみたいなのはいやだったんですが、ここなら窓をあけても見えない。そこが大きかったですね」とYさん。


1階の吹抜けになっているリビングからダイニングキッチンを見る。右奥にお風呂と洗面所がある。洗濯機も置かれていて、キッチンの近くで家事動線が最小となるよう計画された。
1階の吹抜けになっているリビングからダイニングキッチンを見る。右奥にお風呂と洗面所がある。洗濯機も置かれていて、キッチンの近くで家事動線が最小となるよう計画された。

土間に下りて右手に進むと玄関。キッチンの位置は、玄関から入ってきていきなり見られる場所は避けてほしいという奥さんの希望で決められた。また同時に、家族の気配がちゃんと感じ取れて見渡せる場所がいいという希望も勘案されたという。
土間に下りて右手に進むと玄関。キッチンの位置は、玄関から入ってきていきなり見られる場所は避けてほしいという奥さんの希望で決められた。また同時に、家族の気配がちゃんと感じ取れて見渡せる場所がいいという希望も勘案されたという。


土間がほしい

「自然のある伸び伸びとした環境の中で子育てをしたかった」(奥さん)ということもあっての敷地選びだったため、家づくりは周囲の自然環境を活かしながらそこにY夫妻のリクエストを盛り込むかたちで進んだ。

「土間がほしいとお伝えしました。用途が限られるような場所をつくりたくなかったのと、狭い玄関はいやだったので」とYさん。


奥の和室は、LDKと土間を間に挟んで離れのような位置にある。
奥の和室は、LDKと土間を間に挟んで離れのような位置にある。
和室からLDKのほうを見る
和室からLDKのほうを見る


この土間は、玄関から裏の庭へとそのまま抜けられるつくりになっている。「通り土間」と呼ばれるこの土間のかたちは建築家の桑原さんからの提案だった。
「バイクも置くことができたりと用途をあまり限定せずにざっくりとした使い方ができるようなスペースがほしいという要望がまずありました。ただそれが玄関スペースというだけで済ましてしまうと道路と建物と庭がつながらないので、建物の真ん中にもってきて貫いたらどうですかという提案をしました」(桑原さん)


玄関から土間を通ってそのまま裏の庭まで出ることができる。
玄関から土間を通ってそのまま裏の庭まで出ることができる。
土間は階段の前までという案もあったが、LDKの端まで延ばした。
土間は階段の前までという案もあったが、LDKの端まで延ばした。


庭側外観。森のように豊かな緑が近くまで迫る。1階部分には庇が回っていて強い日差しを遮ってくれる。
庭側外観。森のように豊かな緑が近くまで迫る。1階部分には庇が回っていて強い日差しを遮ってくれる。

環境との親和度を高める

玄関から入って土間をそのまま進むと豊かな緑のスペースへと出ることができるのだが、このように土地の魅力を活かすための提案は他にもあった。1階部分を庇がぐるりと回っているのだ。

豊かな緑に面した庭側の開口を、日差しが強い日にカーテンで閉めてしまうのではもったいない。庇があれば日差しが強くてもカーテンを引かずにいられるし、雨の日なら窓を開けて雨音を楽しむこともできる。
 
庇をぐるりと回すことで周囲の環境との親和度を高めようとしたのだという。そしてさらにもうひとつ、吹き抜けスペースに大きめの開口がつくられたのも庭側の緑を満喫するためであった。設計は日照のことも合わせて考えながら進められたという。

「この土地は南側に斜面があって日照の面では実は不利で、特に真冬になると2時を過ぎると日が入らない。それでも有効に家全体に光を届けられるように吹き抜けと窓の位置をいろいろシミュレーションしましたね」(桑原さん)


吹抜けを介して外の緑を眺めると、一層、自然に囲まれた気持ちの良さと開放感が増幅される感じがする。
吹抜けを介して外の緑を眺めると、一層、自然に囲まれた気持ちの良さと開放感が増幅される感じがする。
2階においても裏の緑との関係で開口の位置が検討された。
2階においても裏の緑との関係で開口の位置が検討された。
 
さまざまな角度から裏の緑を堪能できる。
さまざまな角度から裏の緑を堪能できる。


8mの長さをもつ机。リビングとは別に、家族が集まってさまざまなアクティヴィティが生まれることが期待されている。
8mの長さをもつ机。リビングとは別に、家族が集まってさまざまなアクティヴィティが生まれることが期待されている。

図書館のような場所

2階ではこの吹き抜けに面して机が造り付けられていて、そこに座ると庭の緑をまた違った角度から楽しむことができる。この机は、そのまま奥まで続いているが、夫妻のリクエストをもとにつくられたものという。
リクエストは「図書館のような場所」。家族みんなで一緒に勉強したり調べものをしたりして一緒にいられるような部屋がリビング以外にもほしい、そんな思いを建築家に伝えたという。

机の長さは8m。このスペースを家族が集って楽しめるものにするために、隣接する子ども部屋は寝るだけの場所にして比較的小さめに抑えた。


2階から見下ろす。
2階から見下ろす。

環境の良さを十分に活かしきってつくり上げたこの家で、奥さんのお気に入りは2階の吹き抜けに面した場所。長い机の、ダイニングの上のあたりで、外の緑を見ながら洗濯物を畳んだりするのがとても気持ちがいいという。

また、四季折々の変化がわかるのも気に入っていると。「日の入り方とか1日の中での変化もそうですけど、自然の変化がとてもよく感じ取ることができていいですね」(奥さん)


道路側から見る。
道路側から見る。

Yさんのお気に入りは自ら希望してつくった土間空間だ。「いろいろなことに使えて遊べる」ところがいいという。
Yさんの現在の夢はリビングに薪ストーブを置くこと。それを前提に煙突を通す穴も天井にすでに開けてある。「ストーブを置いて早く煙突を見たい」と語るYさん。岐阜の奥さんの実家では薪がもうすでに用意されていて、Y家で使われるのを待っているという。 


Y邸
設計 桑原茂建築設計事務所
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 113m2