Style of Life
森の中のような心地よさ開放感と落ち着きの
ちょうど良いバランス
3人兄弟が育つ家
1歳から小学生まで、3人の男の子がいるAさん夫妻。以前はマンション住まいをしていたが、元気いっぱいの兄弟が伸び伸び過ごせるようにと考え、横浜市内の眺めの良い高台に家を建てた。
設計をお願いしたのは、IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)の井上亮と吉村明さん。土地を購入した不動産屋さんの紹介で知り、スタイリッシュでありながら温かみもあるデザインに惹かれたという。
「お二人は気さくで話しやすくて、打ち合わせがとにかく丁寧なんです。最初に間取りを決めるときは、私たちの希望を聞きながら、30パターン以上も提案をしてくださいました」と振り返る奥さま。
取材に同席してくださった井上さんは、「じっくりお話してたくさんの選択肢をご提示することは、『あっ私たちはこんな家に住みたいんだ。こういうものが好きだったんだ』と気づいていただくために、大切な工程なのです」と話す。
ほどほどに繋がる
「前に住んでいたマンションは、広いリビングダイニングがドーンと広がっていて、開放感はあるけれど、いまいち落ち着けなかったんです。そこで、こっちで大人がお茶をしてあっちで子どもたちが遊ぶという風に、空間を分けつつ、ほどよい繋がりもある家にしたいと思いました」と振り返る奥さま。その希望を受けた井上さんは、リビングスペースとダイニングスペースを斜めに配置。いわばひょうたん型のくびれの部分でリビングとダイニングがつながるプランを考案し、リビングの上は吹き抜けとした。
「視線が斜めに抜けつつ空間は分かれているところをとても気に入っていて、楽しいリズムがある家だなあと感じています」(奥さま)。
また井上さんは、窓の大きさや形、並べ方にもあえてランダムさを持たせた。特に印象的なのは、吹き抜けと2階主寝室をつなぐ大きな室内窓。空間は分けつつも、どちらにいてもスッと視線が抜けるのが心地よい。
「まるで森の中にいるように、いろいろな眺めがあって、明るいところも暗いところもある。家族団らんの時間も自分の時間も満喫できる。そんな“場所のグラデーション”を追求しました」(井上さん)。
毎日の家事を快適に
今は育休中だが、ほどなく仕事に復帰する予定だという奥さま。3人兄弟の食事づくりや洗濯は、ますます忙しくなるだろう。「快適に家事ができる家に」というのは、切実な願いだった。
そこで打ち合わせでは、家事の効率もじっくりと追求。玄関→パントリー→キッチンと抜けられる動線を確保し、食材をしまったりゴミ出しをする作業をスムーズに行えるようにした。
また、「洗濯物を毎日2階のそれぞれの部屋にしまうのは大変」という奥さまの声を受け、1階に家族全員の衣類をしまえるウォークスルー・クローゼットを確保。そして、洗濯乾燥機を置いた脱衣室、洗面室、ウォークスルー・クローゼットを一列に配した。
奥さまも、「洗濯物を乾燥機から出して片付けるまでの流れと、朝の身支度が驚くほど楽になりました」と頷く。
木の積層を見せた天井
デザイン面では、「シンプルな北欧風テイストに」という奥さまの希望を受け、グレーと白をメインカラーに。そこに無垢の木の床を合わせ、温かみもプラスした。
また、木のラインがきれいな天井は、「LVL材」を張って仕上げたもの。LVL材とは薄い板を何枚も貼り合わせた構造材で、「積層面のストライプの表情が面白い」と考えた井上さんが内装材として使うようになったという。
「内装に取り入れるのはまだめずらしいようです。Aさん邸の施工では大工さんが『本当にこれ貼るの? やり直しになったら嫌だよ』と言っていたのですが、完成したら『何これ。すごいきれいじゃん!』って驚いていました(笑)」。
Aさん一家がこの家に住み始めて数ヶ月。奥さまは「かっこよさも使い勝手も兼ね備えていて、大満足です」と微笑む。この家はこれからの3兄弟の成長を見守り、にぎやかで楽しい日々を支えていくのだろう。
設計 IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)
施工 坂牧工務店
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造
規模 地上2階建
延床面積 137.45m2(1階74.52m2/2階62.93m2)