Style of Life
物語のあるものに囲まれて 多様な素材使いが生み出す
愛着がわく独自の空間
適度な距離感が心地いい
実家の建て替えを機に、生まれ育った東京・練馬区に戻ってきた小山啓太さん。新築したその家は、1階に啓太さんの両親、2階に啓太さんと妻の未来(みく)さん、娘の詩梛(しいな)ちゃん(2歳)が暮らす完全分離型の二世帯住宅。日差しがたっぷり降り注ぐ南側に開口を取り、庭を囲むように1階、2階ともにコの字型に住空間をレイアウト。庭に面したベランダがコミュニケーションの場となっている。
「以前ここに建っていた家も、祖父母世帯と親世帯との二世帯住宅で、玄関も水回りもすべて別々のほうが住まいやすいと思っていたので完全分離型に。内部からは一切行き来できない造りになっていますが、娘の声がすると下のテラスから両親が声をかけてくれたり、ベランダ越しに会話が弾んだり。自然とコミュニケーションが生まれていますね」(啓太さん)。
未来さんも、「雨の日など1日中家の中にいると娘は飽きてしまうので、1階の祖父母のところで遊んでもらったり。急な残業のときなども助けてもらっています」と、両親の存在が心強いと話す。お互いの生活スタイルを尊重しつつもサポートしあえる程よい距離感が心地よいようだ。
多様な素材で変化に富んだ空間
外階段を上り、2階のエントランスを入ると、切妻屋根の形状や梁を現しにした天井高約5.3mの大空間が広がる。「出来るだけ高く広いワンルーム空間を」と提案したのが、設計を依頼したアオイデザインの青山茂生さんと隅谷維子(ゆきこ)さん。
「アオイデザインさんとは、知人の紹介で出会い、多様な素材使いとこちらの要望をキャッチしてくれる感性に惹かれました。自分は身長180cm近くあるので、天井は高いほうがいいですからね(笑)」(啓太さん)。
建材の商社に勤務する啓太さん。知り合いの工務店を紹介し、資材などの持ち込みも多かったというが、アオイデザインさんは柔軟に受け入れてくれたという。建材へのこだわりやニュアンスの異なる素材の組み合わせなどから変化に富んだ空間が生まれた。
「特にこだわったのはリビングの床です」とは啓太さん。同じ長さのフローリング材を巾方向の接合面を揃えて張る“すだれ張り”の材料を採用した。シンプルながら新鮮なテイストで独自の空間を印象付けている。
キッチンは、ファッションブランドでマーケティングの仕事をする未来さんのセンスが光る。
「食事をするテーブルと作業台を兼ねたアイランド型カウンターは、濃いめのウッドにしたかったんです」と、家具メーカーにオーダー。天板に白の大理石、面材には古材フローリングを使用したイメージ通りのカウンターが実現した。壁付けのカウンターは機能性を重視し、キッチンメーカーの『エクレア』に依頼。キッチン壁のタイルはベージュをベースとし、コンロ前は汚れが目立たない濃い色を採用するなど、素材や色使いでメリハリのきいた唯一無二のキッチンとなった。
物語が詰まった家具や小物
インテリアが好きで、雑誌を参考にしてよくショップ巡りをするというご夫妻。日本やヨーロッパのヴィンテージ家具やレトロなオブジェなど、お気に入りのものやアートに包まれた空間になっている。
リビングに入り、目に飛び込んでくるのが、壁に飾られた2枚の大きな絵。多彩な素材を使用した作品が人気のカワニシタカヒ氏にオーダーしたものである。
「リビングに飾ることを前提に描いていただきました。リクエストしたのは、ブルー系の色合い、自然素材を使用してほしいということくらいです」(啓太さん)。
また、「母の影響で益子焼が好きで、よく栃木まで買いに行きます」とは未来さん。
栃木の『ペジテ』で購入した木製キャビネットの中には、母から譲り受けた益子焼の器や啓太さんからのプレゼントというアンティークの食器などが美しく陳列され、実際に使用しているという。
「毎年1つずつでも、置物や器など思い出に残るものを買い足していけたらいいねと夫と話しています」(未来さん)。
古いものに惹かれ、人とのつながりを大切にしている小山さん夫妻。この家に置かれたものやアートには物語があり、オリジナルな空間を作り上げている。年月を重ねた、これからの変化も楽しみである。