Style of Life
デンマークにアジアをミックスシンプルかつスピリチュアル
集う人が和む家
デニッシュスタイルを基本に
インターナショナルな雰囲気の漂う、都内の高級住宅街。暖色系の明るい外壁に包まれたその家は、家主Mさんのライフスタイルが反映された、国際感覚豊かな空間だ。その理由のひとつは、家の設計、コーディネートを、友人であるデンマーク人のキアさんに依頼したことにある。
「Mさんの嗜好、ライフスタイルを考えて、建築家の松島さんと相談してコーディネートしました。デニッシュスタイルは日本のモダン建築と似ていますが、白を基調にしたシンプルなストレートラインが基本です。その中にアジアを少し混ぜることで、コンフォータブルで暖かい雰囲気が出ると思います」
韓国出身でデンマーク育ちのキアさんは、夫の転勤により北京、トロント、東京で暮らし、現在は再び北京に在住。高校生の娘さんが日本の学校に通うためMさん宅にステイしており、しばしば来日している。Mさんのウエディングドレスも縫ったという器用さとセンスの良さ、そして信頼感から、この家のプランニングを任された。
外人客が楽しめる空間づくり
キアさんのリクエストを受け設計を担当した松島弘幸さんは、
「外国人の友人を招いてよくパーティーを開かれること、外国人に貸すかもしれないこと、などを考慮して設計しました。マスターベッドルームにバスルームを接続させたり、シャワー主体のバスルームを設けたり、メイドルームも完備するなど、欧米のライフスタイルに合うようにしています。デザインはシンプリシティに徹して、ディテールはそれほど見せないようにしました」
広々とした2階のリビング・ダイニングは、たくさんの友人を招いてパーティーを開くのにふさわしい。3階のテラスは明るいサンルームになっており、桜の木の向こうに東京タワーも見渡せる。パーティーの時はここも解放し、招待客がそれぞれ自由な時間を過ごすのだという。
家族とつながるキッチンを大切に
リビングは広さを出すため出窓にすることをキアさんが提案。大きな窓ではなく、日光が左右から入る設計にすることで、あえて光を調節した。照明もハロゲンライトをメインに色味にこだわり、壁面を照らす調光のスポットライトに。中でも、キアさんのこだわりが活かされているのがキッチンだ。
「テーブルはちょうど作業のしやすい高さに、キャビネットも中の物が取り出しやすく、整理しやすい形にするために、オーダーで作りました。アメリカのキッチンはプラクティカルで大きすぎて合わない気がします。キッチンもシンプルで機能的なデンマークスタイルにこだわりました」(キアさん)
シンクやキャビネットと壁面との間に汚れがたまらないように、境界線をななめに設計したり、取っ手のない引き出しは指をかけやすいようにデザインしたり、細部にまで使い勝手が考えられている。
「デンマークの女性はほとんどが仕事を持っていますから、家に帰ってきてキッチンやダイニングで過ごす時が大切なんです。ファミリーで集う時間を、充実させたいと思いました」(キアさん)
オープンなキッチンは、調理をしながら家族で語らう時間を確保。これもキアさんがおすすめしたというデンマークの照明の名品レ・クリントの下に、笑顔が集う。
アジア文化に癒される
中国のアンティークや、加賀の和箪笥、バリのダイニングテーブルなど、多国籍なインテリアは、Mさんが以前から持っていたものや、キアさんがこの家のために探し当てたものでコーディネート。デンマークテイストの、明るいメープル材の床が、濃いめのカラーの家具を引き立てる。アジアのインテリアは、仕事で忙しいMさんにとって、寛ぎを与えてくれるのだという。
「仕事の合間にアジアのリゾートによく行くのですが、東西取りまぜた感じに癒されるんです。家を建てるときには、心に余裕ができる、バケーションハウスのような雰囲気にしたいと思っていました。だから家具もバリニッシュのチーク材をメインにしています。この辺りは西洋人が多いのに、お寺やお墓も多いミスマッチな環境ですが、ふたつの文化がマッチングしている感じや、スピリチュアルな感じも私は気に入っています」(Mさん)
バリスタイルのアウトテリアのあるテラスで、そんな街の雰囲気を堪能するのも心地よい時間。仕事の疲れを癒し、交友関係を充実させる理想の住まいが誕生した。
設計施工 ダブルエム・アーキテクツ+くら建築設計
+渡辺健建設事務所
所在地 東京都港区
構造 木造
規模 地上3階
延床面積 177m2+屋根裏収納