Style of Life
屋根形状とレベル差を活用 家族がゆるやかにつながる
屋根裏のような居住空間
シンプルなデザインと温かみのある住まい
川崎市の閑静な住宅街に建つT邸。かわいらしい三角屋根の外観が目を引くこの家に暮らすのはTさん夫妻と小学5年生の長女、小学2年生の長男の4人家族。
「もともと同じ地域の3LDKのマンションに家族4人で住んでいたのですが、子どもの成長とともに手狭になりはじめたことをきっかけに、家づくりを決意しました」(ご主人)。
夫妻が設計を依頼したのは、IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)の井上亮さん。きっかけとなったのは、100%LIFEだったという。
「家づくりを検討する前から、100%LIFEをよく見ていました。記事で紹介される家のなかでも、特にこの家好き!と感じる家の多くがIYSさんの家でした。シンプルで洗練されたデザインと温かみのある家づくりに惹かれて、依頼することにしました」(奥さん)。
屋根裏のような楽しい空間
「適度な距離感を保ちつつ、家族の気配が感じられる家」をコンセプトに設計されたT邸。LDK・和室を配置したメインの居住空間である2階と、家族それぞれの個室と水まわりを設置した1階が、まるで木をくり抜いたような吹き抜けのホールによってつながっている。IYSの井上さんは「当初Tさん夫妻は家族のコミュニケーションの観点から1階をリビングとするプランを要望されていました。しかし、立地の点から採光や眺望を考慮し、2階にLDKを配置するプランとなりました」と語る。
2階LDKはワンルームでありながら、中心の吹き抜けのホールによって個々の居場所がゆるやかに分かれる。家族のつながりを損なうことなく、快適な居場所感も両立した空間が特徴だ。
さらに2階LDKで井上さんがこだわったのは、勾配屋根を生かした室内空間だ。
「制限があるため、軒の高さを低く抑えなければなりませんでした。それをクリアするとともに居住空間である2階の広さを確保するために、勾配を高さ制限目一杯にとり、あたかも屋根裏のような楽しい空間になるように目指しました」(井上さん)。
さらにダイニングからリビング、和室へと床レベルが変化することによって、立体的かつ多様性のある空間となっているのも設計のポイントの一つだ。
「室内にさまざまなレベル差が生まれることで、目線の高さにもバリエーションが生まれます。ダイニングやリビング、和室などそれぞれ高さの違う場所があることで、同じひとつの空間でも雰囲気が変わります。また、高低差のある空間は、子どもにとってもワクワクする遊び場のような楽しさを感じさせます」(井上さん)。
家族4人の心地よい暮らし
IYSの細部まで追求した設計により、家族の理想を実現したT邸。
Tさん一家がこの家に暮らし始めてから約1年。ご家族は、コロナ禍の生活においても心地よく過ごすことができていると声を揃える。取材中も子どもたちは元気いっぱいに家中を歩きまわり、普段の楽しげな暮らしぶりが伝わってくる。
最後にこれからの楽しみについて伺うと「まだ家族にしかこの家を披露できていないので、コロナ禍があけたら、私や子どもたちの友人を招きたいと思っています」と微笑む奥さま。この家は、これからも家族の成長を見守り、Tさん一家の楽しい日々を支えていくだろう。
T邸
施工 株式会社 坂牧工務店
意匠設計 Inoue Yoshimura studio Inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)
構造設計:川田知典構造設計
所在地 神奈川県川崎市
構造 木造
規模 地上2階建て
延床面積 約100㎡