DIY

ショップ併設の3階建てリフォームがきっかけで
ハンドクラフトの道へ

ショップ併設の3階建て リフォームがきっかけで ハンドクラフトの道へ

偶然手に入れた木材からリフォームがスタート

美紀さんの住まいは、神奈川県の住宅街に建つ3階建。「15年前、息子が1歳のときにこの家を買いました。いろいろ探した中で、リビングの梁が気に入って、この家にしようと決めたんです。当時築20年でしたが、買ったときはリフォームする気はありませんでしたね」。

1階がRC造、2階と3階が木造という3階建。もともとは完全分離型の2世帯住宅だったため、1階部分を賃貸とし、2・3階を鈴木さん一家の住まいとした。

暮らし始めて数年が経ったある日のこと。近くで解体中の住宅の前を通りかかると、腰壁の材料が積んであった。「無垢のパイン材だったので、捨ててしまうのはもったいないなと思ったんです。聞いてみたところ心よく譲っていただけたので、この材を使ってわが家をリフォームしてみようかなと思ったのが始まりでした」。

「息子も幼稚園に通うようになっていたので、お見送りしてから帰ってくるまでがDIYタイム(笑)。ノコギリを使ったこともなかったので苦労しましたが、楽しみながらダイニングに腰壁をつけました」。


2・3階が住居.リビングの窓のまわりにパーゴラを設け、モッコウバラをはわせている。
2・3階が住居.リビングの窓のまわりにパーゴラを設け、モッコウバラをはわせている。
レンガ敷きの階段は、購入当初から。階段に鉢植えを置き、グリーンを楽しめるように。
レンガ敷きの階段は、購入当初からのまま。階段に鉢植えを置き、グリーンを楽しめるように。


玄関ホールの戸棚も、美紀さんの作。棚の上のネコの時計は、息子さんが幼いときにつくったもの。
玄関ホールの戸棚も、美紀さんの作。棚の上の時計は、息子さんが幼いときにつくったもの。
手前の白い扉は洗面所へ、奥の2枚の扉はダイニングとリビングへ続く。ドアにはデッドストックのガラスをはめこんでいる。
手前の白い扉は洗面所へ、奥の2枚の扉はダイニングとリビングへ続く。ドアにはデッドストックのガラスをはめこんでいる。

家具づくりの世界に魅せられて

腰壁ができると、次は壁に珪藻土を塗ってみたくなったという。「無垢のパイン材を貼ったらナチュラルな雰囲気になったので、より自然なインテリアにしたくなったんです」。そこで壁もDIYで塗ろうと、夫と珪藻土メーカーが開催する講習会に参加。「夫婦ふたりで家中の壁を塗りましたが、結構時間がかかって大変でした」。

ちょうどその頃、あざみ野にRag Basketという木工教室があることを知った美紀さん。「思い切って訪ねてみたら、とっても素敵で。こんな家具がつくれたらいいなと思って、教室に通うようになったんです」。

キッチンカウンターを手始めに、ダイニングの食器棚やシェルフ、リビングのテレビボードなど、次々に家具をつくった。「やり始めたら、のめりこんでしまって(笑)。作業スペースが玄関しかなかったので、苦労しながらつくったのが懐かしいです。当初の作品は今見ると大雑把なところも目につきますが、当時は夢中でしたね(笑)」


ダイニングでお茶を飲む美紀さん。「パイン材の質感が好きなので、使うのはパイン材で統一しています」。
ダイニングでお茶を飲む美紀さん。「パイン材の質感が好きなので、使うのはパイン材で統一しています」。
ダイニングの照明。アンティークテイストだが、現行品を美紀さんが気に入って買ったもの。
ダイニングの照明。アンティークテイストだが、現行品を美紀さんが気に入って買ったもの。
DIYのきっかけとなった、ダイニングの腰壁。うすいピンク色の珪藻土壁がとあいまって、ナチュラルな雰囲気に。
DIYのきっかけとなった、ダイニングの腰壁。うすいピンク色の珪藻土壁がとあいまって、ナチュラルな雰囲気に。


ダイニングとキッチンを見る。キッチン本体には手を入れていないが、冷蔵庫の上の収納は美起さんが作った。
ダイニングとキッチンを見る。キッチン本体には手を入れていないが、冷蔵庫の上の収納は美起さんが作った。
調味料ケースは、木工の先生が作ったもの。キャビネットは美紀さんの作。
調味料ケースは、木工の先生が作ったもの。キャビネットは美紀さんの作。
開口部には、アルミサッシが見えないように、木製も窓枠をつくってはめている。
開口部には、アルミサッシが見えないように、木製も窓枠をつくってはめている。

理想の空間を自らつくる

家具づくりはやがて、ドアや階段、洗面台などの設備へと発展。スペースの有効活用のために階段下に灯油を収納しておけるようにするなど、住まい手だからこそできる工夫が盛りだくさん。「好きなように手を入れられるのは、自分の家だからこそ。思いっきり楽しんでやりました」。

洗面所は、床のクッションフロアをはがして、テラコッタタイル敷きに。さらに輸入品の洗面ボウルを購入し、それに合わせて洗面台をつくった。「設置は、見よう見まねで自分でやってみたんですが・・。元の洗面台を外したところ、背面に管が通っていたのですが、その管がスポンと外れてしまって。すごい勢いで水があふれてきて、大騒ぎになったんです。それ以降、水まわりの設置だけはプロに取り付けを依頼しています(笑)」。

当時の鈴木さんの家では、毎日玄関に木材と工具が積んであったという。「夫がDIYを一緒にやってくれたのは、壁の珪藻土塗りまで。でもその後も理解があるので助かっています。息子は小さい頃からこれが日常なので、馴れちゃった感じですね」。


天井の梁の存在感が気にいっているというリビング。テレビボードとデスクは美起さんの作品。
天井の梁の存在感が気にいっているというリビング。テレビボードとデスクは美起さんの作品。
階段やまわりの壁面もリフォームした。左手の扉は、階段下のスペースをいかしたトイレ。
階段やまわりの壁面もリフォームした。左手の扉は、階段下のスペースをいかしたトイレ。
床をテラコッタ貼りにした洗面室。
床をテラコッタ貼りにした洗面室。
リビングの大きなキャビネットは、アンティークを購入したもの。つまみを替えるなど、カスタマイズしている。
リビングの大きなキャビネットは、アンティークを購入したもの。つまみを替えるなど、カスタマイズしている。
階段のステップの部分に引き出しを設けるなど、ちょっとしたスペースも収納に生かしている。
階段のステップの部分に引き出しを設けるなど、ちょっとしたスペースも収納に生かしている。
階段の下には、灯油のポリタンクを収納できるように工夫されている。
階段の下には、灯油のポリタンクを収納できるように工夫されている。
洗面ボウルや水栓などにもこだわっている。
洗面ボウルや水栓などにもこだわっている。


アトリエ兼ショップをオープン

数年にわたる住まいのリフォームも一段落した頃、貸していた1階が空くことになった。「少しずつ、受注で木工雑貨や家具などをつくるようになっていたのですが、とにかく作業スペースが狭いのが悩みのタネ。木工はおがくずなども出るので、できれば居住スペース以外に工房を設けたいなと思っていたんです。夫も賛成してくれたので、1階をハンドクラフトのためのアトリエ兼ショップにすることにしました」。

ハンドクラフトショップ「WOODSIDE39」は、美紀さんの作った家具が並ぶサロンのような雰囲気。ここで週に2回木工教室を開催するほか、アトリエで受注品の制作を行っている。「お教室に来てくださっているのは、ご近所の方がほとんど。マンツーマンで小物や家具を一緒につくります。組み立てや塗装だけという方もいますし、フレキシブルに対応しています。木工の楽しさを、多くの方に知っていただける場になればと思っています」。


1階はショップ兼アトリエの「WOODSIDE39」。改装する際に、外壁を板張りにした。
1階はショップ兼アトリエ。改装する際に、外壁を板張りにした。
サロンのようなショップ。アンティークの椅子以外の家具はすべて美紀さんの作品。
サロンのようなショップ。アンティークの椅子以外の家具はすべて美紀さんの作品。
本格的な工具を備えたアトリエ。木工教室や受注品の制作を行う。
本格的な工具を備えたアトリエ。木工教室や受注品の制作を行う。

ショップではアンティークの雑貨なども扱っている。
ショップではアンティークの雑貨なども扱っている。
アトリエで作業をする美紀さん。
アトリエで作業をする美紀さん。