Architecture

床壁天井、すべてが白の家“家っぽくない”家で
家族生活を楽しむ

床壁天井、すべてが白の家  “家っぽくない”家で 家族生活を楽しむ
横浜市戸塚区にある幼稚園の園長をされている佐藤さん。家を建てるときにまず建築家に伝えたのは、白い家に住みたい、ということだった。

「白だったら、人がいてもモノが置いてあっても、周りがごちゃごちゃしていなければカッコよく収まるかなと思っていて」

佐藤邸では、壁と天井だけでなく床も白い。設計を手がけた建築家の秋山さんは、室内を白くしたいという希望があっても床はフローリングにする人が圧倒的に多いなか、床も白くするのだと佐藤さんにまず最初に言われたのがとても印象的だったという。


2階入口近くからリビングダイニングを見る。天井や壁だけでなく床まで白い空間。
2階入口近くからリビングダイニングを見る。天井や壁だけでなく床まで白い空間。
南(左)からの光をやわらげるすりガラスとパンチングメタル。そのままインテリアデザインともなっている。
南(左)からの光をやわらげるすりガラスとパンチングメタル。そのままインテリアデザインともなっている。
モノトーンで統一されたリビングダイニングの空間。
モノトーンで統一されたリビングダイニングの空間。
 
リビングより見る。右端の空間は床がガラスになっている。
リビングより見る。右端の空間は床がガラスになっている。


室内にパンチングメタルを使う

ただ、室内のほとんどを白色にすると反射の問題がある。建築家は白い家がいい、床も白くすると言われた時に、天気のいい日には床の反射でかなりまぶしくなるので、南側からの光をダイレクトにいれるのは危険だと思ったという。

それで、パンチングメタルとすりガラスを使って室内に入る光を調整していく方法を取ることにした。佐藤さんにはパンチングメタルのサンプルを見せながら、昼と夜とでの見え方の違いなどを説明していったという。 

「まずパンチングメタルが家の中にあるという状況がまったく理解できなくて、秋山さんが持ってきてくれたサンプルの角度を変えたり光に当てたりすると、仰っている通り見え方がガラッと変わって。単にそこにあるものがそのまま見えるというのではなくて、光の加減や時間によって見え方が変わるし、その奥に見えるものの見え方も変わってきたりするのは、面白いなと思いましたね」


1階の絵本コーナーと階段室を見る。ぐるりと回り込んで空間を堪能しながら移動するデザイン。
1階の絵本コーナーと階段室を見る。ぐるりと回り込んで空間を堪能しながら移動するデザイン。
子ども部屋での次男の真海(マウナ)くん。佐藤家のお子さんの名前は3人ともハワイ語を元にして付けられている。
子ども部屋での次男の真海(マウナ)くん。佐藤家のお子さんの名前は3人ともハワイ語を元にして付けられている。
階段の踊り場から長男の真叶(マカナ)君を見る。
階段の踊り場から長男の真叶(マカナ)君を見る。
1階奥にあるバスルーム。細長い台形平面と床を掘ってつくったバスタブが印象的。
1階奥にあるバスルーム。細長い台形平面と床を掘ってつくったバスタブが印象的。
絵本コーナーは1階床よりも一段低くなった場所につくられている。
絵本コーナーは1階床よりも一段低くなった場所につくられている。
2階から吹抜けを見下ろす。右には子ども部屋が3つ並ぶ。
2階から吹抜けを見下ろす。右には子ども部屋が3つ並ぶ。


省けるものは省いて

つくりたい家の方向性ははっきりしていたけれども、建築家との打ち合わせで目を開かせられることがたくさんあったという佐藤さん。「天井は何もないほうがきれいなんですよと言われたのですが、今まで天井に何もない家は見たことがなかったし、灯りはどうするんだろうとか単純にわからなくて」

打ち合わせを重ねるなかで、天井に限らず省けるものはどんどん省いていったという。通常は壁の最下部に設けられる幅木も付けず、段差も極力つくらずにフラットにしていった。 

「余計なでっぱりがなくフラットな面がたくさんあるのは気持ちがいいですね。取っ手を限りなく小さくするとか、そこまでするんだ!というようなお話が実際に形になっていくのがすごい面白くて」と佐藤さん。


リビングダイニングから見る。昼間はパンチングメタルを通して外部がよく見えるが、外部から室内は見ることができない。
リビングダイニングから見る。昼間はパンチングメタルを通して外部がよく見えるが、外部から室内は見ることができない。
1階には手前から子供室が3つ並ぶ。
1階には手前から子供室が3つ並ぶ。
2階から下ろす。右がパンチングメタル。縄跳びをしているのは長女の真雛(マヒナ)さん。
2階から下ろす。右がパンチングメタル。縄跳びをしているのは長女の真雛(マヒナ)さん。


外観の2階部分はパンチングメタルが覆っている。夕方以降は内部の光で室内が舞台のように浮かび上がる。
外観の2階部分はパンチングメタルが覆っている。夕方以降は内部の光で室内が舞台のように浮かび上がる。

家っぽくない家で暮らす

こうしてできた家は、佐藤さんの元々の希望でもあった「家っぽくない感じ」になったという。「家っぽい」というのは佐藤さん曰く、「モノがあふれていて生活感がにじみ出ているような感じ」で、これはどうしても好きになれないのだという。

「家っぽくない」というのは、白への志向性とも重なるがそれに加えて、モダンですっきりとしていること。
こうしたデザインは人の存在をどちらかというと異物として排除してしまうようにも思えるが、まったく逆のようだ。この家では、家族との生活、暮らしが舞台のようにして浮かび上がるような感じがするのだという。


リビングダイニングでの佐藤家の1家5人。白い空間の中で人の存在が際立つ。
リビングダイニングでの佐藤家の1家5人。白い空間の中で人の存在が際立つ。

「子どもが遊んでいる様子だったり、妻が料理している様子だったりが様になるんですね、ステージがかっこいいから。大した役者ではないんですが…」

いろんなものを消去していって空間から生活感を排除していったからこそ、生活している人の存在が以前よりも前面に出てくるようになった佐藤邸。「この空間だと家族の温かさがより際立つんです」という佐藤さんの言葉がとても印象に残った。 


佐藤邸(Sa-4 House)
設計 秋山建築設計/秋山隆男
所在地 横浜市戸塚区
構造 木造
規模 2階建て
延床面積 201.37m2