Style of Life
気に入った道具に囲まれて暮らす 少しの手間が暮らしを
豊かなものにしてくれる
「朝5分早く起きれば、豆を挽いてお湯を沸かし、ゆっくりと美味しいコーヒーを楽しめます。レコードは裏面を聴くためにひっくり返す手間もかかりますが、その代わりクルクル回るプレイヤーを眺める楽しみも増えます。 道具や家具が壊れたら直しながら使うのも好きです。そういったちょっとした手間が、生活を豊かにしてくれるんじゃないでしょうか」
世界を旅しながら少しずつ吟味して集められたモノたちが、浅本さんの部屋のとびきりセンスのいい世界観を作っている。
僕にとって、モノは道具です。
「雑貨を集めるのが好きですし、旅先で気に入ったモノを買い集めるのも好きです。けれどコレクターではなく、買ったものはしまいこまずに道具としてガンガン使います。すぐに手にとれる使いやすい場所に置いています」
ひとつひとつのアイテムのチョイスのセンスも素敵だけれど、それらを組み合わせて雰囲気のある空間を作るコツを聞いてみた。
「その場所に置きたいものをまずひとつ決めます。1個に絞るのが大切です。それを中心にコーディネイトしていくとうまくいくと思います」
浅本さんのお宅には、料理研究家、建築家、イラストレーター……、たくさんの友人が集まってくるそう。
「家で料理を作ったり、コーヒーを淹れたり、音楽をかけて友人たちと過ごすのが好きなんです。家での楽しみの延長が、カフェでの僕の仕事になっています」
手間をかけて美味しいコーヒーを。
「コーヒーは〈ケメックス〉で淹れるのが好きです。サイフォンをはじめ、いろいろな道具を使ってきましたが、今は〈ケメックス〉か、もしくはフレンチプレスですね。エスプレッソをミルクで飲むのも好きです」
ガラスの一体成形の〈ケメックス〉はファンの多いドリッパー。ちなみに「ベイクショップ」ではケメックスを使ったワークショップも開催している。
年月を経たものが持つ味わい。
「できるだけコンパクトな空間に、楽しく暮らすのが好きです。仕事もこの家でしていて、会計士さんにもここに来ていただいてます」
浅本さんの部屋に味わいがあるのは、使い込まれて愛されて年月を経たものたちがたくさんあるからかもしれない。
「キッチリ作られた新しいものはあまり好きじゃないんです。たとえば本棚の古材の棚板は、ひとつずつ違っています。しかも本の重さでたわんでいますが、あえて直さずにそのまま使っています(笑)。少々のことには目をつぶったほうがおもしろい空間になると思います。しかも実はタダのものが好きだったりします。フリーで配られているポストカードや古いカレンダー、どこかの学校の教材で使った青写真……そんなのもこの部屋にはたくさんあります」
この家に越してきて2年という浅本さん。
「壁を塗り、扉を変え、少しずつ楽しみながら手を入れてきました。今はリビングとダイニングを分けている壁を取り払いたいなと思っています。そんなふうに手をかけて楽しみながら住める家が、僕にとって一番の家です」