Style of Life

家族愛にあふれた家自由な発想で生活を楽しむ
花と色のある暮らし

家族愛にあふれた家  自由な発想で生活を楽しむ 花と色のある暮らし

家族でペイントした色鮮やかな空間

料理家、フードスタイリストとして活躍するtotto(黄川田としえ)さんが家族と暮らしているのは、人気の街・吉祥寺へも自転車で10数分という閑静な住宅地。昨年、近所のマンションから築30年ほどの一軒家に引っ越した。「仕事で使用する物などが増えて溢れてしまい、収納が多いところを条件に子供の学区内で探していたんです。ここは倉庫やグルニエもあり、造り付けの収納も充実。木製の建具もレトロな雰囲気で、一目見て気に入りました」。

結婚してから、引っ越しは7回目。元プロサッカー選手のご主人が現役の頃は、チームが変わるたびに札幌や横浜など転々としてきたそう。引退後、利便性の良さから、たまたま住み始めたのがこの地だった。「ずっとマンション住まいだったので、いつも子供たちに“静かにしなさい!”って言っていました。今は自由にのびのびと暮らしています」。

玄関を入り、まず目に飛び込んでくるのが、鮮やかなピンクの壁。「夫がメキシコの建築家ルイス・バラガンが好きで、彼がよく使う独自のカラーをイメージして壁のペイントに挑戦しました。家族みんなで塗ったら楽しいし、思い出になるかなと思って」。

友人のウォールペインターの方にレクチャーしてもらいペインティング。リビングの奥まった壁の一角にも玄関と同じピンク色が。また、ダイニングの飾り棚の奥はイエロー、2階の寝室は一面のみブルーに塗られている。家族全員の共同作業で完成した“作品”は、鮮烈な色使いが光と相まって美しくもあたたかな空間を作り上げている。


玄関のアンティークデスクは親しい友人から譲り受けたもの。ダイニングにももう1台同じものが。「私が大事にしていきたい」と。
玄関のアンティークデスクは親しい友人から譲り受けたもの。ダイニングにももう1台同じものが。「私が大事にしていきたい」と。
「ペンキの色を選ぶのに最も苦労した」というバラガン特有のイエロー。造り付けの木製戸棚や季節の花が引き立つ。
「ペンキの色を選ぶのに最も苦労した」というバラガン特有のイエロー。造り付けの木製戸棚や季節の花が引き立つ。
壁の一面のみブルーに塗られた寝室。計算されたディスプレイが美しく、1枚の絵のよう。
壁の一面のみブルーに塗られた寝室。計算されたディスプレイが美しく、1枚の絵のよう。

ミックス感が心地よさを生む

tottoさんの1番のお気に入りの場所は、陽光がたっぷりと降り注ぐ南向きのリビングダイニング。ダイニングテーブルはデンマーク製、コンソールデスクはフランスのアンティーク、ソファは日本のブランド“マイスター”、一脚ずつ異なる椅子はイギリス製やアメリカ製……。さまざまな国のエッセンスが散りばめられているが、経年変化を感じさせる味のある佇まいのせいか見事に調和している。

「型にとらわれず、自分たちの好きなテイストを大事にしてミックスすることで、自然と統一感も生まれ、居心地の良い空間になっています。衝動買いも多いんですよ。ショップなどをのぞいて気に入ると、そのまま担いで帰ってくることもあります(笑)」。

アクセントになっているのが、出窓や壁際、テーブルの上などに置かれた花やグリーン。カラフルな壁の色は、何気なく飾られた植物を引き立たせる。「花を長く楽しみたいので、生花だけで終わらず、ドライになっても可愛いものを視野に入れてチョイスします。フレッシュなときだけでなく、枯れていく途中やドライになる過程も、壁に色があることで、自然の色をより活かしてくれるような気がしますね」

壁のカラーにぴったりマッチしたお子さんたちが描いた絵、古いものをアレンジしたディスプレイが目を楽しませてくれる。長く大切に使いたい、生活を楽しもう、というtottoさんの想いが、家全体をやさしく包んでいる。


ミッドセンチュリーを織り交ぜたリビング。「ここで本や雑誌を読むのが好きな時間」と。
ミッドセンチュリーを織り交ぜたリビング。「ここで本や雑誌を読むのが好きな時間」と。
一脚ずつ異なるイスはどれも思い入れがある。右側の子供用のイスはIKEAで購入。9歳になる娘さんが今も愛用。
一脚ずつ異なるイスはどれも思い入れがある。右側の子供用のイスはIKEAで購入。9歳になる娘さんが今も愛用。

コードの部分がロープになった照明。「これだけではさびしいから」と、刀豆やスズメ瓜をからませた。
コードの部分がロープになった照明。「これだけではさびしいから」と、刀豆やスズメ瓜をからませた。
あるワークショップに参加して作成した、息子さんと娘さんの合作。カラフルな色使いにセンスが光る。
あるワークショップに参加して作成した、息子さんと娘さんの合作。カラフルな色使いにセンスが光る。
野性的な趣が面白い原種のユリ。実は、エアコンの“リモコン隠し”というアイディア作。
野性的な趣が面白い原種のユリ。実は、エアコンの“リモコン隠し”というアイディア作。



チェストはデンマーク製のヴィンテージ。娘さんにはまだ大きい古着のドレスは、アンティークのリボンをつけてディスプレイ。
チェストはデンマーク製のヴィンテージ。娘さんにはまだ大きい古着のドレスは、アンティークのリボンをつけてディスプレイ。

現在14歳の息子さんが小6のときに描いた油絵。“女神”をモチーフにした作品は、大胆な色彩に目を奪われる。
現在14歳の息子さんが小6のときに描いた油絵。“女神”をモチーフにした作品は、大胆な色彩に目を奪われる。
娘さんの“赤ちゃん”(おさるさん)。もともと娘さんが着ていたドレスとはいていたベビーシューズ。左側は娘さんのスリッパ。
娘さんの“赤ちゃん”(おさるさん)。もともと娘さんが着ていたドレスとはいていたベビーシューズ。左側は娘さんのスリッパ。


人とのつながりに感謝の日々

tottoさんが料理に興味を持ったのは、スポーツ選手の妻になってから。「ずっと実家暮らしで大学卒業後すぐに結婚したため、何もしたことがなかったんです。“何とかなるさ”で始め、三食仕事みたいに作っているうちに、栄養面ではもちろんメンタル面においても食の大切さを感じるようになりました」。

独学で食について学んでいく一方で、自身の夢であったメイクアップアーティストの勉強も始める。その後、夫が出演した番組のアナウンサーの専属のヘアメイクになり、その方との出会いをきっかけに料理番組のADを経てディレクターに。準備や仕込み、ディスプレイなど番組づくりでの経験が、現在の仕事にも役立っている。

「“料理の仕事をしたい”と漠然と言ったら、“料理番組のADやってみる?”とアナウンサーの方に言われて。やりたいことを口に出すことで道が開けていった気がします。周りの方に恵まれ、人とのつながりが出来て広がり、今に至ります。最初に出会いを作ってくれた夫、好きなことをやらせてくれた子供たちも含めてみんなに感謝ですね」。


リビングを華やかに彩るピンクの壁。アースカラーの花とも好相性。家族の思い出の写真が絶妙なバランスで飾られている。
リビングを華やかに彩るピンクの壁。アースカラーの花とも好相性。家族の思い出の写真が絶妙なバランスで飾られている。
春休みに家族で訪れた沖縄の「やむちんの里」で購入した陶器。モダンなデザインにひかれたそう。仕事で使用することも。
春休みに家族で訪れた沖縄の「やむちんの里」で購入した陶器。モダンなデザインにひかれたそう。仕事で使用することも。
「ただ煮込むだけでも美味しくなる」とル・クルーゼの鍋がお気に入り。手前のオーバル型の鍋はオーダーメイド。
「ただ煮込むだけでも美味しくなる」とル・クルーゼの鍋がお気に入り。手前のオーバル型の鍋はオーダーメイド。
キッチンの片隅にはあったかいメッセージが綴られた子供さんたちからの手紙が。中央の“ママの顔”は娘さんが描いたもの。
キッチンの片隅にはあったかいメッセージが綴られた子供さんたちからの手紙が。中央の“ママの顔”は娘さんが描いたもの。
「自然素材のものにひかれます」とカゴもそのひとつ。使用頻度の高いクロス類はカゴに入れて収納。すぐに取り出せて便利。
「自然素材のものにひかれます」とカゴもそのひとつ。使用頻度の高いクロス類はカゴに入れて収納。すぐに取り出せて便利。
シンク前の出窓は、野菜やハーブ、調味料などを飾るディスプレイスペース。手作りの梅ジュースが美味しそう。
シンク前の出窓は、野菜やハーブ、調味料などを飾るディスプレイスペース。手作りの梅ジュースが美味しそう。
ワインの木箱を再利用したラックには、身体にやさしい調味料がズラリ。よく使う調理器具は見せる収納に。
ワインの木箱を再利用したラックには、身体にやさしい調味料がズラリ。よく使う調理器具は見せる収納に。


家族をテーマに活動

“家族の幸せが1番”と言われ、忙しい中でも家族と過ごす時間を大切に考えているtottoさん。特に誕生日などのイベントは手を抜かないという。
「子供の誕生日は、毎年テーマを作って家族だけで盛大に行います。フルーツ好きの娘の昨年の誕生日には、大きなガラスの器にフルーツをふんだんに使ったパフェを盛って演出。息子の誕生日には、チョコレートケーキを積み重ねて岩山をイメージ。“ゴツゴツとした難関を乗り越えて、頑張って生きなさい”といったメッセージを込め、一人でウルウルしていました(笑)。自分のためだけに企画してくれたという特別感が記憶に残ってくれたらいいなと思います」

また、家族をテーマとしたさまざまなワークショップの企画、開催もしている。なかでも大好評なのが7年ほど前から続けている「こどもレストラン」。子供たちが親のために料理を作り、もてなすという1日限定のレストランだ。「料理教室ではなく、子供たちにワクワクドキドキする体験や全体を通して達成感や感謝の気持ちを感じられるような企画を練ります」

常に、「子供がおいしく食べるには」「家族で楽しむには」と自分流のアレンジを考えているという。そのおしゃれでオリジナリティ溢れる料理からは、ほっこりとした家庭のぬくもりが感じられる。アイディアを積み重ね、自分らしい彩りを添えているtottoさんの料理や暮らし。肩の凝らない安らぎに満ちた“tottoワールド”に人が集まってくる。


マイスターのソファは、3人掛けと1人掛け×2脚の組み合わせ。お客の人数に合わせてレイアウトを変更するそう。「多いときは8家族くらいが料理を持ち寄って集まります」。
マイスターのソファは、3人掛けと1人掛け×2脚の組み合わせ。お客の人数に合わせてレイアウトを変更するそう。「多いときは8家族くらいが料理を持ち寄って集まります」。
この家に決めた理由の1つが庭があること。「庭造りはこれから。庭関係に詳しい友人に相談しながら頑張ります」。
この家に決めた理由の1つが庭があること。「庭造りはこれから。庭関係に詳しい友人に相談しながら頑張ります」。
屋号の「tottorante」は“totto”と“リストランテ”を合体させたもの。知人が刺しゅうしたというロゴは繊細でユニーク。ロゴのまわりをきのこやいちじく、れんこんなど全て食べ物が囲むという凝りよう。
屋号の「tottorante」は“totto”と“リストランテ”を合体させたもの。知人が刺しゅうしたというロゴは繊細でユニーク。ロゴのまわりをきのこやいちじく、れんこんなど全て食べ物が囲むという凝りよう。
庭に咲いていたムスカリ、スカビオサ、ラナンキュラスをさりげなく飾る。壁に映える植物を意識。
庭に咲いていたムスカリ、スカビオサ、ラナンキュラスをさりげなく飾る。壁に映える植物を意識。
tottoさんの日々の暮らしを綴った新刊「毎日のごはんと心地よい暮らし」(宝島社刊)が発売中。家族をテーマとした活動は http://love-family.jpでご紹介。
Instagrm@tottokikawada
tottoさんの日々の暮らしを綴った新刊「毎日のごはんと心地よい暮らし」(宝島社刊)が発売中。家族をテーマとした活動は http://love-family.jpでご紹介。
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