Kitchen
趣味を暮らしに活かす旅の思い出に包まれて
アジアの文化に酔う
大きな窓から日差しが降り注ぐ、吹き抜けの明るいダイニング。中国、台湾、韓国、タイ、ベトナム、マレーシア…。アジア各国の味を伝える外処佳絵さんの料理教室が、ここで日々繰り広げられている。
「昼間は主婦の方、夜はOLさんが多く通ってこられます。私の旅の話をしたり、逆にみなさんから情報を頂いたり、アジアの俳優さんの話で盛り上がったり、交流の場にもなっていますね」
家を購入する際には、生活の場としてよりも、料理教室としてふさわしいかどうかを考えた。
「シンプルな真四角の家を考えて設計してもらっていたのですが、ちょうどイメージにぴったり合った中古の家が見つかり購入しました。天井が高くて人が集まっても窮屈感がないこと、採光が充分にとれること、ライトの間接的なつけ方などにスタジオっぽい雰囲気があるところが気に入りました」
1日の流れを感じる部屋
半地下のベッドルームから、2.5階のキッチン&ダイニングまでつながる階段は、途中からグレーチングになり、モダンで明るい雰囲気。階段を上りきると現れるダイニングは、南東側に全面を使った窓、北西側にキンモクセイが植えられたテラスがあり、閉塞感を感じさせない。壁に埋め込まれた大きな鏡も、四角い部屋に広がりを与えている。
「初めは、南東側には小さい窓がふたつだけだったので、一面ガラス張りに変えました。でも、家の中が丸見えになるのは嫌だったので、NASAが開発したという薄く透けるシートを使いました。外から見えないのに光も入ってくるし、夜は夜で家の温かい感じが外に浮き出て、意外と、ガラス張りにするより良かったと思っています」
夕方になると北西からの夕日が、キンモクセイのシルエットを室内に浮かびあがらせる。
「マンションにいたときより、時間の流れを感じるようになりましたね」
ベースはシンプルに統一
コンクリート打ちっ放しの無機的な建物に、白を基調としたインテリア。シンプルですっきりとした室内は、外処さん夫妻の趣味とセンスで彩られている。
「リビングの鏡は、家の雰囲気に合わせて白かシルバーでオーダーしたものです。枠のまわりが寂しいので、ネットで北欧の飾りを見つけてデコレーションしました。壁には、デザイナーのもので、カーテンとして使うパーティションを、夫がオブジェとしてアレンジしました」
BALSのテーブルに、レッスン中に重ねておけるのが便利なスタッキングチェア。機能的でモダンなインテリアだが、その中にアジアの小物が温かみを添えている。
「アジアの雑貨はカラフルなので、ベースはあえて白でシンプルにしているところもありますね。旅行で訪れる度に、雑貨や調理器具など、たくさん買ってしまうんです」
旅の思い出とともに暮らす
もともと香港映画にはまっていて、香港の文化に興味を持ち、現地で料理の勉強を始めた外処さん。アジアの食をもっと学びたいと、各地に足を運ぶようになり、今も台湾を中心に、年に4~5回アジアを旅する。現地の友人から家庭料理を学んだり、買い物をしたり。それが仕事の原動力となっているようだ。
「日本にはないものを探すのが好きで、アンティーク市や食材市巡りをしています。料理に欠かせないキッチンクロスやエプロン、生徒さんが使うクッションのカバーなどクロス類もすべて、現地で布を買い縫製してもらっています。食器類も旅先で買ってきたものがほとんどですね。青磁が好きなのですが、国によって色が違うので、いろいろ揃えて楽しんでいます。旅の思い出になる緑を探すのが好きですね」
旅先で買い集めた食器を使い、本場の味を楽しむ時間は、日本に居ながらにしてエスニックムードを満喫できる時。洗練された空間の中、ディープなアジアの空気がゆるやかに流れる。