DIY
元鉄工所を気持ちのいい空間に柔らかな発想で生まれた家に
子どもたちも大喜び!
「建物内に残っていた鉄屑を処分するのに半年、さらに半年かけて壁を削ったり和室やキッチンなどの内装工事をして、家族が住めるようになるまで約1年かかりました」
内装工事をするにあたり、必要なものがあってもまずは買わずに、元々ここにあったものを流用することにしているそうだ。たとえば、キッチンのレンジフードは元々ここで使われていた台所のシンク。棚として使われていた木製品も解体して再利用している。建具や畳などは解体された家から譲り受けたものだ。
「解体した材料は手元にストックしておきます。その材料で作れば、わざわざ材料を買いにDIYショップに行く必要もないので時間がかからないのがいいんです。ここに棚が欲しいって思ったら、パパッと作れてしまいますから。不要になったら撤去するのも気が楽です(笑)」
もちろんそこには曽田さん流のこだわりもある。
「どこどこのなになに、とわかるものは好きではないんです。メーカー名は見せたくないですし、書いてあったら消してしまいます(笑)。違和感を感じるセンサーは常に持っていたいと思っています」
3階が家族のためのスペース。
「3階はもともとは事務所として使われていたようです。壁に棚が作り付けられていて細長い空間になっていたので、棚は取り外し、部屋の中央に和室と子ども部屋を作りました。ここをグルッと一周できるようにしておけば、子どもたちは勝手にグルグル走ってくれるるだろうと目論んだら、計画通り、元気よく走ってくれました(笑)」
和室と子ども部屋は床を上げて、その下を収納スペースとして活用している。
奥様の京子さんは耕さんと同じ靴の作家。その前は布を扱う仕事をしていたので、カーテンなどの布ものを縫うのは得意なことのひとつ。斜めのガラス窓のレースのカーテンは、丈を別布で加えて素敵にアレンジ。和室にかけられた布のセレクトのセンスも抜群だ。
氷削り器がキッチンの顔に。
「キッチンの大きさやカタチはどうしたらいいのか、段ボールでシュミレーションしながら試行錯誤して、今のカタチになりました」
シナ合板の大きな天板は珍しく購入した材料だそうだ。ガスコンロも自分で取り付けた。
「あまりの手作り感溢れるキッチンに、ガス会社の方は内心驚いていたようですが、無事に検査も通りました」
ピカピカ光る水道の蛇口などはメッキをはがして使っている。ジューサーもメッキをはがしていい雰囲気に。
「氷削り器は、子どもたちのおやつマシーンです。自分たちでかき氷を作って、無添加のフルーツのシロップをかけて食べています。以前は冬の間はしまっていたのですが、最近は1年中出しっぱなしです。このカタチも素材感も好きなので、ずっと置いてあっても気にならないんです」
鬼ごっこもかくれんぼも思う存分!
曽田宅には子どもが楽しめるしかけがたくさんある。秘密基地のような小さな窓がついた子ども部屋。部屋の回りはグルリと一周できるので、鬼ごっこも最高に楽しい。
「箱形の子ども用のキッチンセットを前の家で使っていたのですが、ここに引っ越して置く場所がなかったので、バラバラにして壁に取り付けました」
壁についた謎のハンドルも子どものためのもの。
「子どもと遊ぶなら自分も楽しみたいので、よく分解遊びをします。古い足踏みミシンを分解したら、ハンドルやレバーがカッコよかったので壁につけてみました。子どもたちはよくこの前でハンドルやレバーを回してよく遊んでいますよ」
曽田さんのお子さんは、10歳の長女・杏ちゃん、6歳の長男・柑くん、3歳の次男・林くんの3人兄弟。
「そろそろ長女の杏の部屋を作らないとと思っています。仕事場の上の吹き抜けに床材だけ張ってやって、壁などは自分で作らせようかとも思っています。自分で作れば愛着も出るし壊れたら自分で直せるし、なにより自分の好きなように部屋を作ることができますから。木材で作ることが難しかったら、段ボールでもいいと思っています」
1階の仕事場にはショールームも併設。
1階が曽田さんの仕事場だ。ここに越してきて約7年の間に、仕事がしやすいように水回りを移動させたり、薪ストーブをつけたりと、少しづつレイアウトが変わっているそうだ。
「この頃は個人のお客様がいらっしゃることも増えたので、靴を見てもらえるようなスペースを新しく作りました」
障子の建具を使った棚を開けると、ズラリと曽田さんの靴が並ぶ。
「この棚は2時間位で作ってしまいました。手元にあるもので作ると、自分でも思いつかないような発想が生まれるのが楽しいです。同様に、靴づくりでも、自分で選んだものではない素材……靴やカバンのメーカーからいただいた端材を使うこともあります。靴の色の組み合わせも、あれこれ悩まずに直感で決めます。それはKINTAさんに教わった物作りの心得のひとつなんです」
曽田さんの住まいと作品から、物づくりに対する共通の哲学が伝わってくる。”考えすぎない” “手元にあるものから作る”ことから生まれるものづくりの柔軟さ。自由な発想は、楽しさと豊かさを住まいに運んできてくれるようだ。