ボルダリング壁のある空間“アウトドア仕様”で家でもキャンプ気分

ボルダリング壁のある空間“アウトドア仕様”で
家でもキャンプ気分

「沢登りがアウトドアデビューだったんですよ」。こう語るのは小森邸のご主人。「沢登りというのは、川沿いをずっと登って山頂まで行く。川沿いなので、途中で川を泳いで渡ったり、突然滝が現れればそこをザイルを使って直登するんです」。

沢登りの次に小森さんが始めたのがバイクツーリングだ。未舗装の道を走るのが好きで、関東近郊から東北・北海道と広範囲にわたり出かけたという。さらに、友だちに誘われて、海のカヌーにもトライし、海では釣りも始めた。山ではスキーも。ゲレンデを滑るだけでなく冬山での山スキーもしたという。

なんでそこまでアウトドアに惹かれるのか。「そんなこと考えたことないですが」と前置きしてからご主人は次のように話してくれた。「とにかく体を動かすことが好きなんですね。実はジムも行くんですが、義務的なもので、自ら好んで行くものではないです。アウトドアは開放的な戸外でいろいろと体を使うことが楽しいですよね。それと、肉体的には疲れますが、逆に、精神的な疲れがサラッと取れてしまうんです」。


2階のLDKでくつろぐ小森夫妻。設計の途中では、左の壁は、トップライトのある壁だった。それをやめてできたた高い壁をボルダリングの壁にした。この壁は、厚さ9mmの合板にOSBという厚さ8mmの木質ボードを貼りつけてできている。

2 階上部のハイサイドライトからも光がふんだんに入る。キッチンでは、海で釣った魚をご主人がさばくこともあるという。

壁いっぱいの幅のあるトップライトが2 カ所に設けられ、光が1 階まで注ぎ込む。


クライミングウォールを付けたい

そんなご主人が、家を建てることになって、建築家の進藤さんを紹介してもらったのはアウトドア仲間からだった。まずは建築家からの提案を受けることになり、どんな生活をしているのか、なにが趣味なのか、小森家のライフスタイルについて質問攻めにあったという。「その結果、私がアウトドア大好き人間だと分かったので、最初はどかんとカヌーを濡れたまま入れられるような収納庫を1階につくる設計をしてもらったんです。釣り道具も汚れたモノは玄関のところで水道できれいにしたらそのまま収納できる。でもそうすると、土地が旗竿状でL字になっているため玄関をつくるのも難しくなってその案は自然に消えましたね」。

現在の案に落ち着き、ボルダリングのできる壁をつくるのはご主人の発案だった。「トップライトを1カ所やめて高い壁ができることになったので、そこにクライミングウォールを付けたいって話をしたんです。すると、進藤さんがそれはいいですね、と。それでボルダリングを指導している方をネットで探してデザインとホールドの取り付けをお願いしました」。この壁をつくったのには、インテリアの意味合いもあったため、数字のホールドやメロンやキャベツやネギなどを入れて、カラフルでデザイン的にも面白いものにして下さい、と依頼したという。


ボルダリングではロープを使わず、自力で登って自力で降りてくる。ロープを使って確保する場合は、“クライミング”になるという。

ご主人にはいまだに登れないルートがある。「黄色いルートはホールドが小さいためどうしてもつかみきれず体が支えられないんですよ」。


空が見え、自然の風が吹き抜ける

小森邸の「アウトドア仕様」の部分は、5.2mの高さのあるボルダリング壁だけではない。南側の玄関上には大開口があり、2カ所のトップライトからも光がふんだんに注ぎ込む。さらに、北側には、ハイサイドライトもあって、2階のLDKはとにかく明るく開放的。このハイサイドライトは、住宅が建て込んだ場所ながら自分たちだけの空を満喫できる。

そして、玄関上の窓からハイサイドライトへとLDKのボルダリング壁の側を自然の風が抜ける。「煙突効果と言うんだそうです。熱い空気が中にたまっていてもすーっと自然に風が流れていく。だから家の中にいても、外にいるみたいな雰囲気になる。空が見える上に自然の風も入るから、外でキャンプしているような気持ちにもなりますね」。


正面が玄関。右側がバス・トイレスペース。手前の階段を下るとアウトドア用品などを収納する半地下のスペースがある。

玄関入って左手の廊下。右がバス・トイレスペース。突き当たって右に階段がある。2階の床の一部がガラスになっていてトップライトからの光がそのまま1階にも落ちてくる。


玄関より少し上がったレベルにあるバス・トイレのスペースも全面ガラス張りで開放的。この真下の半地下のスペースには、釣り竿やスキーの板などが収納されている。


半地下のスペース。収納ボックスの左4 列にはすべてアウトドア用品が詰まっている。

収納ボックスの並んだ脇の壁には、ご主人の釣り用品が掛けてある。釣りでは、基本的に「おいしくない魚は釣らない」そうだ。


「屋根のない開放的なところで何かするのが大好き」というご主人にとって、屋根はあっても十分な開放性を味わえるこのLDKは、もちろんこの家の中で最上のお気に入りスペースだ。仕事から帰ってくるのが楽しみじゃないですか?の問いには、「まさにその通りですね」との答えが返ってきた。「今までは帰りがいっしょになると2人でどこか途中で食べていこうかとかちょっと飲んでいこうよとあっちこっちに引っかかっていましたが、今は外ではほとんど飲まずに、家に帰ってから晩酌をするようになりましたね。それから、この家は建坪が11坪の狭小住宅なんですけど、そんなことをまったく感じない、快適なインドア生活を送っています。建築家のお陰ですね」。

最近は、自分たちで楽しむだけでなく、「家に人を呼びたくなる」のだそうだ。この家に移り住んでからやっと落ち着いてきたので、このところ、月一ぐらいのペースで友人を招いている。遊びに訪れた友人の多くがボルダリングにトライするが、ご主人と同様に、黄色いルートを踏破する人は、まだ1人も現れていないという。


小森邸(アウトドア・ハウス)
設計 進藤強/BE-FUN DESIGN + EANA
所在地 東京都
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 72㎡