Architecture
間口5.5mながら広く、明るい空間大きな吹き抜けと
リゾート気分の浴室のある家
「建築家の都留さんに大学で使用しているスタジオを見ていただきました。作品制作のための撮影にどれだけの距離が必要かもお伝えして、とにかくその空間の広さを確保できるというのを前提にしてほしいとお願いしました」
とにかく広く、明るく
妻のユイコさんがこだわったのはリビングで、広さとともに明るい空間を求めたという。
「とにかくまずアトリエがあって、その上に気持ち良く住めてみんなが集まるリビングがある。寝室とかはそんなにこだわりがなくて、あとは明るければいいですというのを最初の打ち合わせでお伝えしました」
敷地自体は広さがあるが、間口が5.5mとやや狭めの条件だった。設計では、吹き抜けのスケールを住宅としてはオーバー気味に大きくすることでその間口が厳しい部分をカバーし広さ感を出した。
ユイコさんは、設計途中で見た模型では吹き抜け空間の広さがなかなかつかめず少し大きいんじゃないかと思ったこともあったという。しかし、家が出来てこの空間を初めて体験した時に、このぐらいの大きさがないとだめだというのがよく分かったという。
「この吹き抜けをなくせば上の部屋が広くなるんですが、でもこれが小さくなったら狭苦しいだろうなと、今は思うようになりました」
広く明るい吹き抜けは、木の架構が特徴的だが、明るさと広さの他に、この木と白壁がもたらすやさしい空気感も特徴的だ。濃い色の木は避けて柱梁にはレッドウッドを使い、シナ合板には黄変しないように保護する塗料を塗っているという。
北側のリゾート空間
石田邸で大きな特徴となっている空間がもうひとつある。3階の北側にある浴室とそれに面したテラスだ。この空間の設計は建築家の「お風呂にこだわりたいですか?」という質問からスタートした。
「お風呂はとても好きなので、こだわりたいし、気持ちのいい空間がいいですというお話をしました。あとは洗いやすいようにとか、じめじめするのがいやなのでからっとした場所にしたいというのをお伝えしました」とユイコさん。
しかし現在のような空間になるとは2人ともまったく想像しておらず、できた空間に石田さんは驚愕したという。「暑いときには外に子ども用の小さいプールを出して子どもと遊んで、ほんとに気持ち良かったですし、雪の時もものすごくきれいで小さな楽園のような感じです」
お二人にこの家で何をするのがお気に入りか聞いてみると、答えは同じで、しかも意外なものだった。吹き抜けでもなくリビングでも浴室でもなく、キッチンに立って玄関のほうを見るのが好きだという。
「見下ろして玄関の緑が見えるこのエリアが好きで。わざわざ見に行って、今日もきれいだなって…」と石田さん。外からはまったく想像の付かない気持ちのいいい空間と楽しみを蔵した石田家。話をうかがうだけでちょっと贅沢な気持ちを味わった。
設計 都留理子建築設計スタジオ
所在地 東京都世田谷区
構造 RC造+木造
規模 3階
延床面積 122.45m2