間口5.5mながら広く、明るい空間大きな吹き抜けとリゾート気分の浴室のある家

間口5.5mながら広く、明るい空間大きな吹き抜けと
リゾート気分の浴室のある家

石田さんは現代アートの作家。絵が生成するプロセスを映像に撮ってつなげるドローイング・アニメーションという手法による作品などで国内外で注目されている。その石田さんが自邸をつくる際にまずこだわったのはアトリエだった。

「建築家の都留さんに大学で使用しているスタジオを見ていただきました。作品制作のための撮影にどれだけの距離が必要かもお伝えして、とにかくその空間の広さを確保できるというのを前提にしてほしいとお願いしました」


石田さんが制作する作品の関係から、アトリエは広さの確保が大前提だった。間口5.5mの敷地に幅4mの建物をつくった。

石田さんが制作する作品の関係から、アトリエは広さの確保が大前提だった。間口5.5mの敷地に幅4mの建物をつくった。

玄関には、石田さんが若い頃に描いた絵がかかる。左の絵は“世界の生成”がテーマ。

玄関には、石田さんが若い頃に描いた絵がかかる。左の絵は“世界の生成”がテーマ。

玄関ホールから、85cmほどレベルを下げてつくられたアトリエ方向を見る。

玄関ホールから、85cmほどレベルを下げてつくられたアトリエ方向を見る。

玄関から吹き抜けの始まる部分を見る。

玄関から吹き抜けの始まる部分を見る。


とにかく広く、明るく

妻のユイコさんがこだわったのはリビングで、広さとともに明るい空間を求めたという。

「とにかくまずアトリエがあって、その上に気持ち良く住めてみんなが集まるリビングがある。寝室とかはそんなにこだわりがなくて、あとは明るければいいですというのを最初の打ち合わせでお伝えしました」

敷地自体は広さがあるが、間口が5.5mとやや狭めの条件だった。設計では、吹き抜けのスケールを住宅としてはオーバー気味に大きくすることでその間口が厳しい部分をカバーし広さ感を出した。 


吹き抜けを見上げる。天窓からは月がものすごくきれいに見えるという。

吹き抜けを見上げる。天窓からは月がものすごくきれいに見えるという。

2階へ上がる途中に設けられた、石田さんのPC用のワークスペース。

2階へ上がる途中に設けられた、石田さんのPC用のワークスペース。


さらに、アトリエとリビングを閉じずにつなげてしまうというのが建築家のアイデアだった。アトリエの大きさ、広さ感が家全体に波及して感じられるようにしたのだという。

ユイコさんは、設計途中で見た模型では吹き抜け空間の広さがなかなかつかめず少し大きいんじゃないかと思ったこともあったという。しかし、家が出来てこの空間を初めて体験した時に、このぐらいの大きさがないとだめだというのがよく分かったという。

「この吹き抜けをなくせば上の部屋が広くなるんですが、でもこれが小さくなったら狭苦しいだろうなと、今は思うようになりました」


左側の柱のみ梁のような幅をもつ、少し珍しい木造架構が採用されている。

左側の柱のみ梁のような幅をもつ、少し珍しい木造架構が採用されている。

リビングで遊ぶナツノちゃん。奥にキッチンが見える。

リビングで遊ぶナツノちゃん。奥にキッチンが見える。

ダイニング側からリビングのほうを見る。リビングには比較的大きな開口が設けられている。

ダイニング側からリビングのほうを見る。リビングには比較的大きな開口が設けられている。

リビングからはダイニングと、ワークスペースを通してアトリエの一部も見える。

リビングからはダイニングと、ワークスペースを通してアトリエの一部も見える。


「とにかく広く感じられるのがとてもいい」と石田さん。ユイコさんも「この抜けがあるだけで 圧迫感がないし、どこにいても狭いと思ったことがない」という。

広く明るい吹き抜けは、木の架構が特徴的だが、明るさと広さの他に、この木と白壁がもたらすやさしい空気感も特徴的だ。濃い色の木は避けて柱梁にはレッドウッドを使い、シナ合板には黄変しないように保護する塗料を塗っているという。


螺旋階段の途中からダイニングの一家を見る。奥のスペースはいずれ、子ども部屋か夫妻の寝室になるという。その床下は収納スペースになっている。

螺旋階段の途中からダイニングの一家を見る。奥のスペースはいずれ、子ども部屋か夫妻の寝室になるという。その床下は収納スペースになっている。


北側のリゾート空間

石田邸で大きな特徴となっている空間がもうひとつある。3階の北側にある浴室とそれに面したテラスだ。この空間の設計は建築家の「お風呂にこだわりたいですか?」という質問からスタートした。

「お風呂はとても好きなので、こだわりたいし、気持ちのいい空間がいいですというお話をしました。あとは洗いやすいようにとか、じめじめするのがいやなのでからっとした場所にしたいというのをお伝えしました」とユイコさん。

しかし現在のような空間になるとは2人ともまったく想像しておらず、できた空間に石田さんは驚愕したという。「暑いときには外に子ども用の小さいプールを出して子どもと遊んで、ほんとに気持ち良かったですし、雪の時もものすごくきれいで小さな楽園のような感じです」


石田さんはこのバスタブに浸かって空を眺めるのが“極楽”という。テラスの壁が曲面になっているのは、高度斜線にかかるのと夫妻が船好きのため。吹き抜けの螺旋階段とも呼応し合う形。

石田さんはこのバスタブに浸かって空を眺めるのが“極楽”という。テラスの壁が曲面になっているのは、高度斜線にかかるのと夫妻が船好きのため。吹き抜けの螺旋階段とも呼応し合う形。


夏には娘のナツノちゃんの友達が来て何人かでプール遊びもするが、その時、親たちは子どもたちが遊ぶ光景を涼しい室内で炭酸を飲みながら眺めているのだという。それが「ほんとにリゾートみたいな状態で」とユイコさん。

お二人にこの家で何をするのがお気に入りか聞いてみると、答えは同じで、しかも意外なものだった。吹き抜けでもなくリビングでも浴室でもなく、キッチンに立って玄関のほうを見るのが好きだという。

「見下ろして玄関の緑が見えるこのエリアが好きで。わざわざ見に行って、今日もきれいだなって…」と石田さん。外からはまったく想像の付かない気持ちのいいい空間と楽しみを蔵した石田家。話をうかがうだけでちょっと贅沢な気持ちを味わった。


大きな吹き抜けに面したキッチン。

大きな吹き抜けに面したキッチン。
 

家の前には9cm角のピンコロ石を敷きその間に芝を植えた。

家の前には9cm角のピンコロ石を敷きその間に芝を植えた。

塀は内側を暗くしたくなかったので光を通す花ブロックに。

塀は内側を暗くしたくなかったので光を通す花ブロックに。

キッチンから庭の緑を見るのが石田夫妻のお気に入り。

キッチンから庭の緑を見るのが石田夫妻のお気に入り。

白い壁面はガルバリウム鋼板の波板仕上げ。

白い壁面はガルバリウム鋼板の波板仕上げ。


石田邸
設計 都留理子建築設計スタジオ
所在地 東京都世田谷区
構造 RC造+木造
規模 3階
延床面積 122.45 m2