Architecture
“毎日がスペシャル”な家すべての空間を居心地よく
楽しくしたかった
「実は僕は自分の家は建てないと思っていたんですよ、なんか気恥ずかしくて。でも、ある時何気なくスケッチした家が、これなら自分が住んでもいいかなと思ったんですね。それから敷地を探し始めたんです」
奥さんのまゆみさんともに自然が好きなため、緑の多い県境を中心に探したが、通常とは逆のプロセスのためなかなか思うような敷地が見つからなかったという。
決め手は、スケッチのイメージにぴったりと合って、しかも回りの緑の環境と視線の抜けが良かったこと。「ここまで高台というのは考えていなかったんですが、2人ともこの抜けとかの気持ち良さみたいなのは考えていたので」
毎日がスペシャル
メインのコンセプトはアウトドア好きでキャンプや釣りが趣味という納谷さんらしいものだ。「山や川で遊ぶのは気持ちがいいですが、日常もそういった非日常的な時間と同じように楽しい方がいいわけだし、毎日がスペシャルだと思ってるんですね。非日常のように日常がある、そういうふうにしたかったんです」
そうした考えを象徴するのが、屋根の上の芝生の部分で、テントを張れる広さを確保したという。そのほか、個々のスペースを設計する際には、“居心地がいい居場所をつくる”ことも大きなテーマになった。
リビングは、地盤よりも90cm低くしたため、吹抜けの高さがより強く感じられるが、同時にちょっと“こもった感じ”にしたかったという。「ソファに座ると完全に埋もれた感じで世間からまったく隠れることができて、立つと一気に開放感が出る。その両方をやりたかったんですね」
どの空間も気持ちよくしたかった
リビングに接した外のデッキ部分は庇を深くしたかったという。そうすることでリビングには夏の日差しもまったく入らず、同時にデッキの部分に気持ちのいい空間ができる。実際、この空間は夏でも気持ちよく、友達が訪ねてくるとリビングよりものこの場所で会話や食事を楽しむことが多いという。
「ローテーブルを出して直に座って。ここは天井をわざと2m10cmと低くしているので、デッキの上に座った方が心地いいんですよ。軒が2m55cmあるので、これくらい深いともう部屋という感じになるんですね」
まずはまゆみさんから。「わたしは家事がぜんぶ終わった後、ソファに横になるんです。そうすると飛行機とか雲しか見えないんですね。読書でもしたいと思うんですが、すごく気持ちが良くていつも知らない間に寝ちゃっているんです。この時間がずっと続けばいいのにってよく思うんですけれど」。さらに、夜、ソファにいて上の窓から月が見える時もちょっと幸せな気分になるとも。
アウトドア好きの納谷夫妻、周りの森から聞こえる鳥や虫たちの声に癒されるという。都心では考えられない非日常的な毎日を満喫しているようだが、当初考えた、屋上でのキャンプは多忙で時間が取れずまだしていないという。実行したらぜひその話を聞いてみたいと思う。
設計 納谷建築設計事務所
所在地 川崎市麻生区
構造 木造、一部RC造
規模 2階建て
延床面積 94.79m2