Architecture
鎌倉の海の見える場所でサーフィンを楽しみ
犬たちと暮らす明るい家
それと「狭い土地で家が密集しているのも嫌だったので、わりと広めの土地を探して」見つけ出したのは、藤沢と鎌倉をつなぐ江ノ電の駅から数分の場所で、サーフィンのできる浜が近くにある上に、緑を深く湛えた山の中腹に位置する傾斜地だった。
サーフィンと犬たちのためのスペース
今岡さんはウエブやスマホのアプリなどのインターフェイスのデザイナー。時間が比較的自由になるため、余裕がある時は自分の好きな時間帯に、歩いて5分の浜へと向かって波乗りを楽しむという。
左右2棟に分かれた左側の建物にある玄関から入ると、2m80cmほどあるというロングボードが壁に設けられたニッチに立てかけられている。
このスペースは、ワックスを塗ったりと、サーフボードの手入れができるようにつくられたもので、奥にあるバススペースでは海から濡れたまま帰ってきてもそのまま向かってシャワーを浴びることができる。
サーフボードの前にはソファが置かれているが、このスペースは第2のリビング的なイメージでつくったという。今岡さんの仕事場は右側の棟にあるが、このソファとボードの置かれたスペースと一体となっているために、広く、また適度なくつろぎ感のある場所になっている。
2階はウッデイで暖かみのある空間
1階は土間が大部分を占めていて少し冷たい印象もあるため、2階は対比的に木を使って少し暖かみの感じられるスペースにした。2階で木を多用したのは素材感がほしいという今岡さんの希望ともマッチしたものだったが、単に木を使うということではなく仕上げにもこだわった。
テレビの掛けられた壁面は古材を使う話で進めていたが、結果的にこのスギ板の方がいいのではないかということになったという。また「塗るとか塗らないとか話もあったんですが、でもやっぱり木目を生かした方がいいということでこのような仕上げに落ち着いた」という。
サッシは、2階リビング南側のフルハイトサッシ以外ははじめシルバーのものだったが白色にした。「壁と同化させてサッシということが分からないようにしたいと思い、白でお願いしました」
明るい家
昼間なのに暗いのは嫌だったので、とにかく光をうまく採り入れてほしいというのも希望だったという。「明るい家というコンセプトで何パターンか建築家の川辺さんのほうから出してもらったんですが、この案を見た時にピンときてこれにしてくださいとお願いしました」
今岡さんの気に入った案を元につくられたこの家の2階は、窓がフルハイトで開けられている。開口の正面には家が立っているが、左の棟が「いい感じで目隠しになっていて、向こうの家からこちらが見えないし、こちらからも向こうの家の気配とかが気にならないのでいいですね」と今岡さん。
明快さと心地よさ
今岡さんからはさらにもうひとつ、建築家へ大きなリクエストがあった。それは、こういうふうにつくったという意図がちゃんと建物に表れていること、コンセプトがちゃんと形になっているということ。つまり、デザインが言葉で説明できるということだった。
「仕事柄というのもあると思うんですよ。デザインで見た目が良くても使い勝手が悪かったりというのはよくあるじゃないですか」
たとえばということで上げてくれたのが左の棟の屋根の高さ。隣家に対する目隠しになっているのは偶然ではなく、そのために決められた高さなのだという。
お気に入りのひとつは、今ぐらいの季節であれば、晴れた日に2階リビングで暖房も付けずに過ごすこと。「すごく心地の良い暖かさになるので、昼寝じゃないですけど、ダラダラと過ごすのが気持ちいいですね」。言葉で”説明”できる明快さを望んだが、言葉では言い尽くせない気持ちの良さも同時に手に入れて、今岡さんはとても満足げに見えた。
設計 川辺直哉建築設計事務所
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 木造
規模 2階
延床面積 70.55m2