Architecture

シンプル&クール三角に象られた天井のもと
一体感をもって暮らす

シンプル&クールで素材感のある家  三角に象られた天井のも
西畑邸のリビング・ダイニング(LD)の天井は三角の形に象られている。「三角屋根が大好き」という奥さんは、「家を建てるきっかけ自体が、建築家の西村さんの三角屋根の自邸をTVで見たことでした」と話す。

実は、この家も屋根を三角にしたかったが、敷地が道から数メートル上にあるため屋根は妻側の部分しか見ることができない。それで、下の道からでもよく分かるようにLD部分の天井を三角にすることにしたという。


1階のLDKと階段を見る。家具やクッションなどを含め、素材感と色味のコンビネーションが素晴らしく、独特の空気感が漂う。
1階のLDKと階段を見る。家具やクッションなどを含め、素材感と色味のコンビネーションが素晴らしく、独特の空気感が漂う。

異素材を組み合わせる

このLDでは、玄関側の木の壁がそのまま天井まで続いている。三角形と木との組み合わせがよく効いた空間の落ち着き感は、木の質感とともに低い天井から生まれる親密な感じと大いに関係がありそうだ。

三角屋根からスタートしたものの、最初は「こんな家にしたい」というはっきりとしたイメージはなく、打ち合わせを進めていくうちに、雑誌なども参考にしながら「この部分はこうしたい」と決めて行ったという。

ただ、異素材を組み合わせたいということははじめから考えていたという。「素材を統一するよりもいろんな素材を組み合わせてもらいたい、とは伝えていました」


木、ステンレス、タイルのコンビネーションが素敵なキッチン。手前のカウンターは、パン作りの仕事をされている夫妻がパンをこねたり、またちょっとお酒を飲んだりするときにも使うという。
木、ステンレス、タイルのコンビネーションが素敵なキッチン。手前のカウンターは、パン作りの仕事をされている夫妻がパンをこねたり、またちょっとお酒を飲んだりするときにも使うという。
キッチンから外の景色を見る。夜、この窓を見るとキッチンと和室が明かりで浮き上がって映るが、西畑さんは、その不思議な感じがけっこう好きだという。
キッチンから外の景色を見る。夜、この窓を見るとキッチンと和室が明かりで浮き上がって映るが、西畑さんは、その不思議な感じがけっこう好きだという。

その最たる箇所がLDの奥にあるキッチンだ。木とステンレスと淡いブルー系のタイルとが素晴らしいコンビネーションでデザインされていて独特の空気感を醸している。タイルを使うことに関しては奥さんが希望を出して、建築家が提案したものが採用されたという。

このキッチンの、デザインはシンプルでクールだがどこか暖かみを感じさせるところが、北欧デザインのテイストを感じさせる。そう思って見回してみると、リビングに置かれたスツールはフィンランドの建築家、アルヴァー・アールトがデザインしたもので、フレームに入れて壁に立てかけられているポスターはそのアールトも家具デザインを手がけているフィンランドの家具メーカー、artekのものだ。


中2階の和室の壁に開けられた小窓からはキッチンが見える。
中2階の和室の壁に開けられた小窓からはキッチンが見える。
 
「ちょっとした踊り場があって、そこに腰かけたりとかしたい」との要望から実現した階段。
「ちょっとした踊り場があって、そこに腰かけたりとかしたい」との要望から実現した階段。
和室からLD方向を見下ろす。階段の手すりは和室からの見え方を考えて縦向きのデザインに。
和室からLD方向を見下ろす。階段の手すりは和室からの見え方を考えて縦向きのデザインに。
奥に見える奥さんの箪笥は4世代前から伝わるものという。この和室での色のコーディネーションも素敵だ。
奥に見える奥さんの箪笥は4世代前から伝わるものという。この和室での色のコーディネーションも素敵だ。


モダンテイストでまとめる

さらに、2階の子ども部屋にはファブリックパネルが2つ立てかけてあったが、これもクールな色合いと素材感のある組み合わせが北欧的な空気感を感じさせる。

しかし、そのあたりを確認すると、予想に反して、どれも北欧を特に意識して集めたものではないという答えが返ってきた。「北欧というよりも、ミッドセンチュリーじゃないですけど、ちょっとモダンなテイストが好きなんですね」と奥さん。

インテリアのデザインにも北欧デザインの空気感が感じられるが、建築家との打ち合わせでも北欧のデザインの方向でまとめようという話は出なかったという。

「好きなデザインなどを雑誌からコピーしてファイルしたものを建築家に渡しました。それで、だいたいの趣味は分かっていただいて、こういう感じが好きなんじゃないでしょうか、というようなかたちで提案してもらったんです」


子ども部屋のライトの暈も三角形。 
子ども部屋のライトの暈も三角形。
 
子ども部屋の緑の壁の奥はロフト。現在は家族で本を読むなどして使用している。角のアールのデザインは奥さんの希望。
子ども部屋の緑の壁の奥はロフト。現在は家族で本を読むなどして使用している。角のアールのデザインは奥さんの希望。
玄関ホールの窓際にも三角屋根の小さな置物。
玄関ホールの窓際にも三角屋根の小さな置物。
 
artekのミッドセンチュリーの家具のポスターのテイストがインテリアにしっくりとマッチしている。
artekのミッドセンチュリーの家具のポスターのテイストがインテリアにしっくりとマッチしている。
2階の寝室の壁はベランダのブルーに近い色がいいだろうということで濃いめのブルーの壁紙に。
2階の寝室の壁はベランダのブルーに近い色がいいだろうということで濃いめのブルーの壁紙に。
木製パネルに奥さんが張ったファブリックのデザインがシンプル&クールで北欧を感じさせる。
木製パネルに奥さんが張ったファブリックのデザインがシンプル&クールで北欧を感じさせる。
2階トイレ脇の壁に3つ並んだ三角屋根の家。 
2階トイレ脇の壁に3つ並んだ三角屋根の家。
 
玄関ホールの窓際にも三角屋根の小さな置物。
玄関ホールの窓際にも三角屋根の小さな置物。


西畑邸は、色が効果的に多用されているのも特徴的だ。デザインと同様に好みの色は建築家に伝えてあり、建築家とともに壁紙の色を決めて行ったという。

「各部屋に1色は入れるというのは元々話していて、いざ色を入れる段階になったら、サンプルを見ながら、子ども部屋はこの色にしましょう、寝室はちょっと落ち着いた色がいいんじゃないですか、という感じで決めて行きました」


ギャラリーのようにしたかったという玄関ホール。次のLD空間とのコントラストという意味でも効いている。
ギャラリーのようにしたかったという玄関ホール。次のLD空間とのコントラストという意味でも効いている。
2階水回り。右側にあるテラスは寝室にも面している。寝室からはテラスを通して街の方向へと視線が抜ける。
2階水回り。右側にあるテラスは寝室にも面している。寝室からはテラスを通して街の方向へと視線が抜ける。
玄関ホールからリビングを通して街のある方向を見る。
玄関ホールからリビングを通して街のある方向を見る。
 
玄関を入ってすぐの壁につくられたニッチ。三角天井の下に家の鍵などが置かれている。
玄関を入ってすぐの壁につくられたニッチ。三角天井の下に家の鍵などが置かれている。


「夜、坂を上って帰ってくるときに、明かりがついて家の中が見える感じがいいです」と西畑さん。暗い中にLDの部分がくっきり光で浮き上がって見えるという。

家づくりのきかっけとなった三角屋根は三角天井となって実現したが、これによって家族の一体感のようなものがより感じられるようになって良かったという西畑夫妻。帰宅時には、どこか温かい心持ちでこの三角天井を目指して坂を上るのだろうなと想像した。


LD部分の開口が外壁より後退しているため、一層、三角の形が強調されて見える。
LD部分の開口が外壁より後退しているため、一層、三角の形が強調されて見える。

西畑邸
設計 西村幸希建築設計
所在地 川崎市麻生区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 97.36m2