Architecture
床壁天井、すべてが白の家“家っぽくない”家で
家族生活を楽しむ
「白だったら、人がいてもモノが置いてあっても、周りがごちゃごちゃしていなければカッコよく収まるかなと思っていて」
佐藤邸では、壁と天井だけでなく床も白い。設計を手がけた建築家の秋山さんは、室内を白くしたいという希望があっても床はフローリングにする人が圧倒的に多いなか、床も白くするのだと佐藤さんにまず最初に言われたのがとても印象的だったという。
室内にパンチングメタルを使う
ただ、室内のほとんどを白色にすると反射の問題がある。建築家は白い家がいい、床も白くすると言われた時に、天気のいい日には床の反射でかなりまぶしくなるので、南側からの光をダイレクトにいれるのは危険だと思ったという。
それで、パンチングメタルとすりガラスを使って室内に入る光を調整していく方法を取ることにした。佐藤さんにはパンチングメタルのサンプルを見せながら、昼と夜とでの見え方の違いなどを説明していったという。
「まずパンチングメタルが家の中にあるという状況がまったく理解できなくて、秋山さんが持ってきてくれたサンプルの角度を変えたり光に当てたりすると、仰っている通り見え方がガラッと変わって。単にそこにあるものがそのまま見えるというのではなくて、光の加減や時間によって見え方が変わるし、その奥に見えるものの見え方も変わってきたりするのは、面白いなと思いましたね」
省けるものは省いて
つくりたい家の方向性ははっきりしていたけれども、建築家との打ち合わせで目を開かせられることがたくさんあったという佐藤さん。「天井は何もないほうがきれいなんですよと言われたのですが、今まで天井に何もない家は見たことがなかったし、灯りはどうするんだろうとか単純にわからなくて」
打ち合わせを重ねるなかで、天井に限らず省けるものはどんどん省いていったという。通常は壁の最下部に設けられる幅木も付けず、段差も極力つくらずにフラットにしていった。
「余計なでっぱりがなくフラットな面がたくさんあるのは気持ちがいいですね。取っ手を限りなく小さくするとか、そこまでするんだ!というようなお話が実際に形になっていくのがすごい面白くて」と佐藤さん。
家っぽくない家で暮らす
こうしてできた家は、佐藤さんの元々の希望でもあった「家っぽくない感じ」になったという。「家っぽい」というのは佐藤さん曰く、「モノがあふれていて生活感がにじみ出ているような感じ」で、これはどうしても好きになれないのだという。
「家っぽくない」というのは、白への志向性とも重なるがそれに加えて、モダンですっきりとしていること。
こうしたデザインは人の存在をどちらかというと異物として排除してしまうようにも思えるが、まったく逆のようだ。この家では、家族との生活、暮らしが舞台のようにして浮かび上がるような感じがするのだという。
いろんなものを消去していって空間から生活感を排除していったからこそ、生活している人の存在が以前よりも前面に出てくるようになった佐藤邸。「この空間だと家族の温かさがより際立つんです」という佐藤さんの言葉がとても印象に残った。
設計 秋山建築設計/秋山隆男
所在地 横浜市戸塚区
構造 木造
規模 2階建て
延床面積 201.37m2