Architecture
傾斜壁のある家傾いた壁と一体化した本棚と
眺望が大のお気に入り
傾いた壁
「これはもう最高だね」と奥さんと話したという佐藤さん。建築家から何回めかに提案された案を見た時のことだ。それは、西側の壁が外へと傾いた案だった。
「最初は壁が真っ直ぐで、ちょっとリビングが狭いというか圧迫感がある感じがしたんです。でも屋根の端の部分からそのまま壁を下ろして敷地ギリギリのところまで部屋を広げると建築費がずいぶん上がってしまう。そこまでしてスペースを確保するのもどうかとういうことで、3~4回模型をつくってもらった後にこの案が出てきたんです」
「要望をうかがっていると2階部分のスペースがどうしても大きくなって少し出っ張った感じになってしまう。それをワンボリュームでつくろうとした時に、壁を斜めにすればうまくいくということで提案させてもらったんですね」
登れる本棚
この案によって同時にデザインが大きく進展したものがあった。中2階に上がるとキッチンとダイニングがあるが、そのダイニング部分の床から立ち上がっている本棚がそれだ。本棚は夫妻からの要望の中でも大きな位置を占めていたが、壁を斜めにすることで地震の際にも棚から本が落ちず、かつ、2階の天井まで続く本棚でも棚板を登れるためハシゴいらず、ということで、壁を斜めにするというワンアイディアで複数の課題を解決してしまったのだ。
ともに本好きで、新しい家では大きな本棚をつくりたいと話をしていたという佐藤夫妻。しかし、具体的なイメージはなく、本をたくさん収納できるスペースがあればいい、という程度であったのが、斜めにした壁を部分的に本棚にする案を見て、一発で「これしかない」と2人で思ったという。
眺めのいい家
佐藤邸には斜めの壁と本棚のほかに、もうひとつ建築的に大きな特徴がある。2階北側に大きく開けられた開口だ。元々、この土地を購入したのが、駅からの距離が近い割には景色が良かったからと佐藤さんは言う。
「坂の上の敷地ということで敬遠される方もいますが、僕らはぜんぜん気にならなかった。むしろ家の前の敷地が一段下がっているので2階からの景色がすごくいいんですね。土地もほぼ正方形に近くて2階建てでも十分広さが確保できるということもあり気に入って購入することにしたんです」
この開口を通して見える夜景がまたいいという。「以前住んでいた賃貸マンションから夜見える街の灯りがすごく気持ち良かったんですが、ここもちょっとへこんだ盆地みたいになっている辺りの灯りが気持ち良くて、見ているととても落ち着くんです」(佐藤さん)
「2階のソファに座ってお酒を飲んだりしている時がいちばんですね。雨が降っていても夕焼けの時でもきれいだし、そういうのをちらちら感じながら家でゆっくりできるのはぜいたくだなと思いますね」
本が増えるとシリーズものがひとつの棚から微妙にはみ出したりすることがあるが、そうした時には見た感じがきれいで違和感のないように本を移動して入れ替えたりするのだという。「それをするのが好きみたいで、楽しそうにやっているのを見ていると、この本棚をつくって良かったなあと思いますね」(佐藤さん)
設計 藤井伸介建築設計室
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造(一部RC造)
規模 地下1階地上2階建て
延床面積 105.67m2