Architecture
立体的につくった家族の居場所 ワクワクして暮らす
7人2世帯の住宅
ワクワクする空間をつくる
2世帯住宅の建て替えを計画した尾崎さんご一家。L字形をした約15坪のコンパクトな敷地に3世代の7人が住むというものだった。
「ワクワクする空間をつくりたい」というのが建て替え時の尾崎さんの要望のひとつだった。そこで、空間の大小や明暗などで変化や多様性が感じられるという観点から建築家を選定したという。
「なおかつ、敷地面積の制約もあって条件的に難しい中で、居場所がたくさんある家を設計していただけるだろうということで岸本和彦さんにお願いすることにしました」
「谷のような場所や山のような場所があって見え隠れがある。そういういろんな要素を立体的に構成しながら詰め込みつつ、かつそれぞれの領域がオーバーラップするようなつくりにしています。そうしてできたいろんな居場所のどこにいるかによって、見えてくる風景ががらりと変わっていきます」(岸本さん)
いろんな居場所+立体構成
その「いろんな居場所」のひとつが、LDKよりも1層上にある畳の部屋へと昇る階段だ。この階段は単なる移動経路にとどまらず、どこにでも座ることができ、さらに階段に沿ってつくられた棚からテーブルを取り出せば、勉強や読書の場所にもなる。
空間を立体的に構成をしていく中ででき上がったこの階段は、住宅の一般的な階段よりも幅広にし、かつ、途中に畳の場所をつくることでゆっくりと落ち着ける居場所となった。さらに、住宅では珍しい長い斜めの視線の抜けも提供している。
個室をつくらない
尾崎さんは家づくりの中で、それまで家というものにもっていた考えを変えていかないといけないと思ったという。「固定概念のようなものとして、1人1部屋というのがあったんですが、そうした考えは岸本さんと設計のやり取りをしていく中で変えていかないといけないなと思ったんです」
尾崎さんは続けてこう話す。「つねに家族と空間を共有しながら使って行けばいいんじゃないかと。あと、長く使っていくことを考えると将来家族構成も変わっていく。ならば無理に個室をつくって使い道を限定してしまう必要もないんじゃないかなと」。実際に住んでみると、この「個室無し」のつくりが尾崎家にはとてもしっくりきたという。
広さと開放感
子ども3人のための畳部屋は、道路側に部屋の高さとほぼ同じ開口が壁面の左右いっぱいに開いている。これは尾崎さんが模型で見て、まずその大きさに驚き、また期待感からワクワクしたというものだ。
「上の間は、道路側は障子を開けると大きな窓で、反対側にも小さな窓があります。青空の日には、この両方で飛行機が飛んでいるのが見えます」と話すのは長女のSさん。この空間にいると宙に浮いているような感覚もあるという。
「わたしはいつもそこに座っているんですが」と言って尾崎さんが示したのは、1階へと降りる階段に近いダイニングテーブルの一角。「休日の午前中の晴れた日はそこでコーヒーを飲みながら青空を見上げたりするんですが、家にいながら空を見上げられるというのがいいですね」。空へと視線が抜ける開放感も尾崎邸の魅力のひとつとなっているのだ。
さらに、「前の家よりも道路から引っ込んだ分面積は小さくなっているんですが、感覚的にはとても広くなったような気がします。それが何より生きている感じがします」。このように語る奥さんは、当初の要望以上の家をもつことができ、とても満足しているように感じられた。
設計 acaa
所在地 東京都北区
構造 木造
規模 地上2階+ロフト
延床面積 83.51m2