Architecture
空に開かれたバルコニー開放感に満ちる
2階リビングの家
光と風を感じるリビング
田園都市線の駅に近い高台に建つA邸の竣工は16年前、今では大学生と高校生の娘さんが幼かった頃にさかのぼる。夫妻の家づくりをサポートしたのが、故郷・福岡に暮らすご主人のお父様だったという。「父が建築家だったので、家を建てることを考え始めた時から、父に設計してもらえたらと思っていました。私自身も小さな頃から建築に興味があり、学校が休みの時には父に現場に連れていってもらったりしていました」(ご主人)。
土地探しはやや難航したが、じっくり探すうちに眺望に恵まれた角地に巡り合う。お父様に現地を見てもらったところ『ここはいいんじゃないか』とお墨付きを得て、敷地を購入した。
設計にあたっては夫妻とお父様で相談し、高低差のある敷地を生かした2階リビングの間取りに決まったという。Aさんは「おかげでリビングには太陽の光がたっぷりと入りますし、風通しもいい。当初からバルコニーを設けていたのですが、5年前に奥行きを広く建て増したことで、より一層外とのつながりを感じられるようになりました」と話す。
こだわりの建材を各地から取り寄せる
ご主人が家づくりにあたって望んだのは、「木を感じる家にしたい」ということだった。このため自然素材にこだわり、各地から建材を取り寄せた。「数寄屋建築で知られる京都の工務店に勤務する友人から、無垢材と玄関に敷く陶板を取り寄せました。陶板は日本っぽい風合いですが、実は中国でつくられたものです。父や友人など、多くの人の力を借りることで家が出来上がったことに感謝しています」。
さらに、ミモザをはじめバラやかぼすなどの苗も、お父様をはじめ色々な人が分けてくれたものとのこと。当初は小さかった苗も16年で2階バルコニーに達するほどに成長し、四季折々にA邸を彩っている。「この家に暮らすようになって、妻も私もガーデニングの楽しさに目覚めました」。
夫妻のセンスが生み出す心地よさ
平日は仕事で忙しいご主人は、休日には家でゆっくり過ごすのが楽しみだという。そんなA邸のインテリアは、夫妻で少しつずつ集めた家具をベースに、布やカゴといった優しい風合いの雑貨が配され、居心地の良い雰囲気を作り出している。
中でも使い込まれたツールが並ぶキッチンは、料理好きな奥さまと食卓を囲む家族の楽しい会話が聞こえてきそうだ。取材当日は奥さまと二人の娘さんは外出中だったが、ふだんは家族がリビングダイニングで一緒に過ごす時間が長いという。
また、奥さまのご両親が福岡から遊びに来ることもあるそうで、A邸は家族の拠点としての役割も果たしている。
「時間が経つほどに、家を建てて良かったという気持ちが深まります」と話すご主人の言葉が、住み心地の良さを物語っていた。