Architecture
店舗と住宅一体の都心でも光と緑あふれる
温かい空間を
店舗兼住宅を考える
都心のオフィスビルが立ち並ぶ中、緑豊かなエントランスが目に優しい、サンドウィッチとハンバーガーの店「place in the sun」を営むYさん一家を訪ねた。1階の店からは、パテが焼かれるいい香りが漂う。この建物はご主人の実家の建て直しを機に店舗兼住宅にしたという。「1階が店で上が二世帯住宅のこの家を建てて8年目です。お店は向かいにあった長屋のようなところで始めたのですが、今年で16年目です」と話すご主人。Yさん一家はお子さん二人との4人家族。
設計は、親戚の住宅物件を手がけた建築家・佐々木善樹さんに相談した。「予算や銀行とのやり取りも含めて相談できたのがとても助かりました。1棟とはいえ、店の営業もその間止めていたので別の仕事をしながら店、実家、自宅と3軒分の打ち合わせをしていたのでかなりハードでした」とご主人。
温かみのある設計を
ここは防火地域のため、鉄骨造などでしか建てられない敷地。「設計の要望は、冷たい感じにならないようにしたかったんです。コンクリート打ちっぱなしも考えたのですが、もしそうするなら木製のサッシがよかったんです。でもそれは防火用の木製で特注になるので予算に合わなくて。それで結局白い塗装と木の床という組み合わせにしました」。
動線の大きな要望は「子供たちが帰ってきたときにリビングを通って私たちに顔を見せてから自分の部屋にいってほしかったので、玄関からリビング、階段スペースを扉などで仕切らないようにしてもらいました。あとは、子どもたちの友達も遊びに来るし、お店のスタッフも招いて忘年会をしたりしたかったので、ベンチタイプの収納をつくって座れる場所を確保して大きめのテーブルを購入しました」。
グリーンのある景色
暮らし始めてあっという間に経った8年。家族、親戚みんなで塗ったという思い出深い木の床もだいぶ色濃くなったという。「予算もなかったのですが、佐々木さんが自分たちの家には自分たちの手をかけたほうがいいと言ってくださったんです。みんなで筋肉痛になりながら塗ったのはいい思い出になりましたね。おっしゃってくださった通り、愛着が湧きました」。
リビングやキッチンに置いてあるグリーンもだいぶ育ってきている。10年以上育てているキッチンの木はカーテン代わりになるほど。「夏はもっとジャングルみたいになるんです。外にもぶどうの木があったりして。緑が生き生きしているので私たちもやる気が出るんです。カーテンをするのがいやだったのでグリーンを置いているということもあります」。
1階の店先の植栽も、店内から見れば外からの視線をゆるやかに遮ってくれる。そして、このまちなみをつくるひとつの景色に。これからも都会のオアシスとして人々を温かく迎え続けるだろう。